腫瘍病理ホームページ

謹賀新年

 

昨年はいろいろお世話になりありがとうございました。

本年もよろしくお願いいたします。

平成14 年元旦

 


私たちの長年の懸案でありますサイトカインシグナル伝達機構異常による自己免疫疾患発症機構の解明に向けて、今年は全力投球をしたいと思います。さらに、Gabファミリー分子やgp130を中心に、引き続きサイトカインシグナル伝達機構を追及します。また初期発生における体軸形成や原腸陥入における分子基盤の研究、特に細胞の運動、極性の制御機構の研究も本格的な展開を図ります。そして新しい研究テーマとして胸腺の器官形成の発生生物学的分子基盤の解明を開始したいと思います。これまでのサイトカインを中心にしたシグナル伝達機構の研究を、一方では自己免疫疾患の発症機構の分子基盤の解明に、一方では発生学や免疫学における細胞運動や極性の制御機構の分子基盤の確立、そしてこれらを総合的にした応用問題として、胸腺の器官形成の分子基盤の確立に迫りたいと考えています。教室の研究スタッフもこれに伴い大幅に変わります。1)石原助教授を中心とした自己免疫疾患、特にgp130点変異に伴うシグナル異常による慢性関節リウマチ様自己免疫性関節炎の発症機構の研究、2)村上君を中心としたT細胞のメモリー生成機構の研究、及びgp130シグナルやその異常による自己免疫疾患発症との関係解明、3)西田君を中心とするGabファミリーアダプター分子の免疫応答、細胞内シグナル伝達機構における役割の解明、4)山下君を中心とした原腸陥入における細胞運動、極性の制御機構、及び胸腺の器官形成の分子機構の研究、の4本柱を中心に研究を展開する覚悟です。

昨年度はgp130を介するシグナル伝達機構に関する研究は、画期的な展開を見せました。すなわち、gp130の1チロシン残基の1塩基変異によって誘導されたシグナル異常により、加齢とともに慢性関節リウマチ様の自己免疫性の関節炎が自然発症するという発見です。この発見は、サイトカインシグナル異常が自己免疫疾患の発症に結びつくことを世界で初めて証明した画期的なものです。さらに、サイトカインシグナル異常がどのような機構で自己免疫疾患を発症するかを明らかにする理想的なモデルシステムを提供するものです。一方Gabの研究により、Gab2がマスト細胞の分化に必須であることを見いだしました。この結果はGab2がアレルギー疾患の発症機構のキーを握る一つの分子であることを示しています。また原腸陥入における細胞運動や極性の制御にStat3が重要な役割を果たしていることを発見しました。

このように免疫、発生における細胞の運命決定機構をシグナル伝達機構の角度から観ることによって、生物学における一つの普遍的な原理原則の発見に迫りたいと思っています。さらに自己免疫疾患の発症機構の一端を明らかにしたいと考えています。

教室員一同一致協力して前進したいと思いますので今年もよろしくご指導、ご鞭撻のほどお願いいたします。

2002年が皆さまにとって良き年でありますことを心よりお祈り申し上げます。

2002年1月1日

平野俊夫

 

 

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