腫瘍病理ホームページ

謹賀新年

 

昨年はいろいろお世話になりありがとうございました。

今年は新しい世紀の第一歩にふさわしい飛躍の年にしたいと思います。

本年もよろしくお願いいたします。

平成13年元旦

 


今年は私たちの長年の懸案でありますサイトカインシグナル伝達機構異常と自己免疫疾患発症機構の関係を是非とも明らかにしたいと思います。引き続きサイトカインシグナル伝達機構を追及するとともに、サイトカインシグナル異常による自己免疫疾患の発症機構の解明に全力投球する覚悟です。また初期発生における体軸形成や原腸陥入における分子基盤の研究もシグナル伝達の観点から研究を発展させていきたいと思っています。免疫、発生における細胞内シグナル伝達機構の解明を目指すことにより、これらのシステムにおける細胞の運命決定機構の分子基盤を確立したいと思います。

昨年度はgp130を介するシグナル伝達機構に関する研究はある程度満足行く結果を得ました。すなわちgp130ノックインマウスを作製し、その解析から、gp130のシグナルの生体内における免疫応答の役割を明らかにすることが出来ました(Immunity, 12, 95-105, 2000。Gab1ノックアウトマススの作製およびその解析から、Gab1が心臓、胎盤、皮膚の発生に必須の役割を果たしていること、さらにGab1がgp130等のサイトカイン受容体やEGF, HGF, PDGF等の増殖因子受容体からERK MAP kinase活性化に至る経路に重要な役割を果たしていることを始めて明らかにすることが出来ました( Mol. Cell. Biol. 20, 3695-3704, 2000。さらにシグナル特異的変異gp130を発現するノックインマウスの解析を進め、現在リステリア感染における細胞内シグナル伝達機構、樹状細胞による抗原提供機構、自己免疫疾患の発症機序の解明などの研究へと発展しつつあります。また初期発生における体軸形成と原腸陥入の機構に関与する分子の研究も、我々が発見したダルマ遺伝子Mechanisms of Development, 91, 293-303, 2000, Developmental Biology 217, 138-152, 2000)や原腸陥入におけるサイトカインシグナル伝達を中心に更なる展開がしたいと思います。特にダルマ遺伝子やSTAT遺伝子の標的遺伝子の同定とそれらの遺伝子産物のシュペーマンオーガナイザー形成機構や原腸陥入における細胞運動の制御における役割を明らかにしたいと思います。また昨年発表した、発生初期における同調的かつ均一な卵割にp38MAPKの非対称的な活性化が不可欠であるという研究は ( J. Cell Biol. 150:1335-1347, 2000 )、p38MAPKの非対称性活性化の機構を解明することにより、最終的に現在正体不明の背側決定因子の同定に迫りたいと思います。

このように免疫、発生における細胞の運命決定機構をシグナル伝達機構の角度から観ることによって、生物学における一つの普遍的な原理原則の発見に迫りたいと思っています。

21世紀に更なる発展をするための第一歩になるように教室員一同一致協力して前進したいと思いますので今年もよろしくご指導、ご鞭撻のほどお願いいたします。

2001年が皆さまにとって良き年でありますことを心よりお祈り申し上げます。

2001年1月1日

平野俊夫

 

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