腫瘍病理ホームページ

謹賀新年

 

昨年はいろいろお世話になりありがとうございました。

本年もよろしくお願いいたします。

平成18 年元旦

 


あけましておめでとうございます。

 

2006年、あたらしい年を迎えて、みなさまそれぞれの思いを秘めて、あたらしい年に想いをはせておられること思います。

 

今年は1986年にインターロイキン6のクローニングに成功してちょうど20年、私にとっては記念すべき年になります。20年、一言では言い尽くせない歳月です。20年前にこの世に命を得た赤ん坊が、ことし成人を迎えるわけです。

20年の曲折をへて、いま再びIL-6は免疫学の中心的テーマに迫ろうとしていることは感無量です。シグナル異常が関節リュウマチ様自己免疫疾患を自然発症すること、IL-6が実は樹上細胞の成熟の制御に重要な役割を果たしていること、さらに、驚くことには活性化CD4+T細胞の抹消におけるクローナル除去の制御機構に重要な役割を果たしているらしいこと、さらに、IL-6が非造血系細胞を介してT細胞のホメオスタテック増殖を制御すること、この異常が自己免疫疾患の誘導に重要な役割を果たしているらしいこと、等など、驚くべき発見の連続です。さらに重要なことは、これらの知見は、単に試験管内での実験結果で判明したものではなく、すべて生体内における免疫応答の解析から明らかにされたという事実です。当然のことながら生体内での免疫応答の解析は時間もかかりますし、その証明には幾多の困難を伴います。20年の節目にこのような重要な発見が相次ぎ、昨年から今年にかけて論文として世に問われることになります。

さらに、IL-6を中心としたサイトカインシグナル研究プロジェクトにより、原腸陥入、創傷治癒、がん転移などに関与する、上皮ー間葉系変換 (EMT)の機構に、亜鉛トランスポーターが重要な役割を果たしていることが明らかになりました。この研究から、サイトカインシグナルと亜鉛シグナルがリンクすることが初めて明らかにされた訳です。亜鉛欠乏は免疫不全、成長障害、神経系の異常など、さまざまな障害を引き起こすことが知られています。現在、阪大と理研免疫アレルギー科学総合研究センターの我々の研究室で、亜鉛トランスポーターによる細胞内亜鉛濃度調節機構の解明、亜鉛による免疫応答、アレルギー反応、発生過程、がん転移の制御機構の解明など、亜鉛を中心とした、新しい生命科学の創設に向けて全力を挙げています。世界における亜鉛シグナル研究の幕開けをリードできるように、今年は阪大・理研の研究室が一丸となり邁進する覚悟です。これらの研究成果は、インターロイキン6受容体の点変異と関節リウマチ様自己免疫疾患の発症機構の研究にも寄与するものと考えています。

 

高浜虚子の句に<去年今年(こぞことし)貫く棒の如きもの>という有名な句があります。一夜明ければ確かに暦は新しい年を迎えます。しかし、一晩寝ただけで世の中が変わるはずもありません。現在の一秒一秒は、過去の一秒一秒の、そして明日の一秒一秒は、現在の一秒一秒の積み重ねの結果です。我々の人生や研究には、なにか一本貫いたものがあるはずです。教室の<物事の本質を見極める>という理念、<世界に羽ばたく>という志は、年が変わっても不変です。現役の皆さん、OBの皆さん、教室の理念と志を忘れずに、研究に、人生に、仕事に、驀進してください。

 

少年老い易く学成り難し

一寸の光陰軽んずべからず

未だ覚めず池塘春草の夢

階前の梧葉已に秋声

 

もういちど、----心の震え----を求めて、教室員一同、一致協力して、<物事の本質を見極める>という理念と、<世界に羽ばたく>という高い志をもって一歩一歩前進したいと思いますので今年もよろしくご指導、ご鞭撻のほどお願いいたします。 なお教室のホームページを開設いたしておりますので、お暇なときにご覧いただければ幸いです。

 

2006年が皆さまにとって良き年でありますことを心よりお祈り申し上げます。

 

2006年 元旦

 

平野俊夫

 

 

第2回平野論文賞2006募集

2005年1月1日から2006年3月31日までの間に掲載された優秀な論文1−2件に贈る。副賞として一件あたり10万円を贈る。

 

対象:阪大腫瘍病理/免疫発生、北大松田研、RCAI改正研、RCAI平野研、名古屋大伊藤研、大阪市大中嶋研、CDB日比研からの論文、その他独立した研究室を持たない腫瘍病理OBが関与している論文で、OBが第1著者か、corresponding authorである論文(ただし国内研究機関に限る)。ただし理研免疫アレルギー科学総合研究センターのExcellent Paper Awardに選ばれた論文は除く。

 

論文のレベル:J. Exp. Med., EMBO J, J. Cell Biol. Dev Cellなどの雑誌相当かそれ以上のレベルの論文を対象とする。該当する論文がない年度は授賞を見送る。

 

応募方法:2006年4月1日までに平野までメイルで論文の内容を報告するとともに、PDFファイルを送付。また内容を適格にあらわすPowerPointファイルの図を一枚送付する。2006年3月31日までに発行される雑誌に掲載されることが条件。

 

受賞者の発表:2006年4月中旬ごろ教室ホームページに発表。本年度の授賞式は未定(阪大でセミナーをしてもらうかもしれません)。

 


2006年1月1日

平野俊夫

 

 

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