将来展望

骨系統疾患には多くの疾患が含まれるが、個々の疾患単位としては稀であり、さらに同一疾患であっても重症度に大きく違いがあるため、自然歴も十分には把握されていないのが現状である。診断法の進歩や新規治療の導入に伴い骨系統疾患をとりまく診療環境が大きく変化しているところから、本研究では、最新の研究成果を盛り込んで骨系統疾患の診断基準・重症度分類・治療ガイドラインを疾患ごとに策定することを目的としており、診療に役立つことが期待される。さらに、臨床データの登録システムを構築するが、登録されたデータは、自然歴の明確化とともに治療効果の判定や有害事象の評価に用いることができる。加えて、骨系統疾患特異的 iPS 細胞作製のための大きな推進力となる。骨系統疾患における主たる病変部位である軟骨細胞や骨芽細胞、骨細胞はサンプリングが困難であるため研究が遅れていたが、iPS 細胞の分化誘導系は骨系統疾患の病態解析や治療法の開発に大きな力を発揮する。このように、本研究の目的はiPS 研究の臨床応用の推進や難治性疾患の克服をめざす行政の政策とも一致し、貢献できる。さらに、iPS 細胞の分化誘導系などを用いた薬剤スクリーニングにより既存薬の中から有効性の高い薬剤が選定されれば、 薬剤開発費を縮減できる。実際、すでにFGFR3 関連疾患にスタチンが有効であることを見いだしており、非臨床試験を開始している。骨系統疾患においては、これまで「致死型」として流産の対象とされていた患児や、人工呼吸管理の対象外と判定されて積極的な治療が行われずにいた患児が少なくない。原病に対する根本的な治療法を開発することは、すべての患児が治療を受ける権利を守る事につながる。また、呼吸器からの離脱率を向上させ、NICU の大きな問題の一つである長期病床使用例を減少させることにより、新生児医療の効率的な計画配分にも貢献する。