計測機器

わたしたちは、生理実験用の機器の多くを自作し、唯一無二の測定をしています。分子生物学や組織学の実験も活発です。

(A)イオン電極法→内耳特殊体液「内リンパ液」の解析                  

ガラス2連管を細く引いて電極を作ります。先端は1~3マイクロメートルです。一方の管の先端にK+を選択的に通す特殊な疎水性の物質を詰めます。もう一方の管には、通常の電解質溶液を入れます。前者でK+濃度、後者で電位を計測します。つまり、“その場”の濃度と電位が同時にリアルタイム測定できます。内耳に様々な薬物を灌流しながらイオン電極を遂行できるのは、調べた限りで、現在、世界でわたしたちのみです。

(B)コンピュターシミュレーション

わたしたちや他のグループの実験結果に基づき、蝸牛のK+循環を再現するコンピュータモデルを構築しました。ここでは、イオンを輸送するチャネルやトランスポーターの働きを数式で表し、それらをつなぐことでバーチャルな電気回路を作成しています。回路は、蝸牛の断面の細胞数やその形態情報を反映しています。この「Nin-Hibino-Kurachi(NHK)モデル」を用いると、健康な聴力状態のみならず、薬物や病気で難聴になっている場合の蝸牛の細胞内外のイオン・電位環境がシミュレーションできます。

(C)ナノ振動計測装置感覚上皮帯の「ナノ振動」の計測と解析

装置やプログラムは、全て自作です。左側のレーザー干渉計は、振動を20ピコメートルまで高精度に測定することができます(非生物を使った実験)。ただ、1点のみの情報取得に限ります。断層撮影もできません。 この装置の測定方法とは、一般的な市販の干渉計とは異なっており、特殊な動的パラメータが捉えられます。
 中央のOptical coherence tomograpy(OCT)は、一点のレーザー照射によって、z軸方向(深部方向)の断層撮影が可能です。このレーザーをx方向やy方向へスキャンすることによって3次元的な画像を取得します。現在は精密な振動計測を目指し、機器を改良しています。
 右側のen-face OCTは、xy方向に平面一括撮像しながら、振動を計測できます。z軸方向に断層も可能です。本学工学部の崔 森悦が中心になって開発しています。現在、より性能を上げる努力をしています。

(D)薬物モニターシステム薬物モニターシステムの開発と活用

わたしたちが構築した薬物モニターシステムは、慶應大学理工学部の栄長グループが創製する「針状ダイヤモンド電極センサー」(先端径40マイクロメートル)と古典的な「微小ガラス電極センサー」(先端径1マイクロメートル)からなります。ダイヤモンドセンサーで薬物の濃度の変化を、ガラス電極センサーで細胞や組織の電気活動を追尾します。これら2つのパラメーターを同時に捉えます。

(E)分子生物学的手法・組織学的手法

全て市販品です。(左から)PCR、Real-time PCR、ケミドック、クライオスタット、パッチクランプシステム(写真なし)、蛍光顕微鏡などです。他に細胞培養室もあります。