細菌ゲノム合成成功のニュースと幹細胞国際シンポジウム

 米国のベンター博士たちが細菌の全ゲノムの人工合成に成功したという記事が多くの新聞の一面に出ました。私も日経新聞や時事通信にコメントを求められたおかげで原著論文をしっかり読みました。      今回、合成されたのはゲノムだけで、細菌として機能したわけではありません。しかし、確実に複雑な生命体の再構成に向けた研究は進んでいます。iPS細胞や再生医学だけでなく、ゲノム科学、合成生物学についての社会的議論、倫理問題の抽出も、手を抜かずに進めておくことが重要でしょう。やはり日本でも「生命科学のELSI」を担う人材がもっと増えてほしいと思います。  1月25、26日には、東京のサピアタワーで開かれた幹細胞研究のシンポジウムに参加しました。      印象的だったのは、東京医科歯科大学が生命倫理センターを設置して、学内の倫理審査委員会のマネージメントを手伝ったり、専門職の育成に向けた海外との交流などの活動を進めていることでした。日本中の大学・研究機関で「倫理審査」が行われていますが、その質と効率性の確保は難しい課題で、大変参考になりました。さらに、ハーバード大学の幹細胞研究の監督のための委員会の活動についても学びました

脳科学シンポ、東海大講義、岡田先生お祝い

 1月13、14日の連休には京大の時計台で行われた脳科学の倫理についてのシンポジウムに参加しました。ヒトゲノム研究が研究費の5%をELSIに振り分けたように、脳科学でも十分な社会的倫理的側面の検討が行われることを期待したいです。      18日は東海大学医学部での講義とセミナー。昨年から客員准教授になっています。科学コミュニケーションの重要性やヒトゲノムデータの共有に関する課題などについて話してきました。  その帰りの19日夜、東京から直接京都木屋町に戻り、岡田節人先生の文化勲章受賞のお祝いの会に出てきました。岡田研関係の20名ほどの身内の会でした。皆が口々に述べていたのは、岡田先生が若い人を“encourage”するのがうまい、ということでした。人に会わせたり、海外の学会に連れて行ったり。改めて、それで皆が育ったのだと認識しました。      修士論文はいよいよ追い込みです。どうか皆が最後まで走り続けられますように。  (まもなく博士後期課程の編入試験の出願締め切りです。生命文化学に出願しようとする人は「必ず」事前に加藤までメール等で連絡をください)

最近の出来事

 あまりに何も書かない時間が過ぎてしまいましたので、無理をしないで2つほど。      1.5月19日から25日まで、モントリオールに行ってきました。ヒトゲノム国際機構(HUGO)の年会HGM2007と倫理委員会に出席するためでした。倫理委員会では新しいゲノム薬理学(Pharmacogenomics)に関する声明を仕上げ、まもなくリリースされるはずです。    HGM2007では最新のゲノム研究の情報を仕入れてきました。高速シークエンスやHuman Epigenome Project などが面白い話題でした。最初の2日間ほど英語がうまく出ずに苦労し、滞在期間の後半でなんとか回復してきたのはショックでした。もっと頻繁に海外に出ることを考えたいと思いました。      2.6月1日には、京大生物系のソフトボール大会でした。結果は2戦2敗、でも空き時間で行った練習試合では勝ちました。とにかくチームを作れたのはとてもうれしかった(2年前は他のチームに混ぜてもらいました)。もうひとつの収穫は研究室メンバーの隠れた才能を見せてもらったこと。日頃おとなしい松田君が実はとても強力な戦力であることや、八幡さんは立派にピッチャーができることなどです。僕自身は次の日に全身が痛んでダウン。日ごろの運動不足を反省しました。

2007年が始まりました 

 1月も第2週となり、研究室の活動が本格的にスタートしました。      「魅力ある大学院教育プログラム」の講義の準備、政府の補正予算がついて突然決まった(生命文化学の)研究室の引越しに向けての検討etc.で時間を取られ、ようやく新年の「ひとこと」を書いています。(引越しについては同じ工学部9号館の住人である柳田さんのブログにいろいろ書かれているようなので、どうぞそちらを見てください。実は人文研も本部構内に移転することが昨年の春から決定済み。いずれも学内の耐震工事を進めるためで、理屈としては良い話。でも、おかげで僕は1年に2回、引越しすることになりました。補正予算に感謝します!?)  昨年は本当に多くのことがあった年でした。  全体としては「実践活動」の年だったと言えます。ヒトゲノムマップの制作、科学館との連携という初めての試みの「プラネタリウムプロジェクト」、2年ぶりの本格的な「ゲノムひろば」と、息をつく間も無く一年が過ぎました。詳しくはそれぞれについて報告することになりますが、ヒトゲノムマップについては予想を上回る反響があり、「プラネタリムプロジェクト」と「ゲノムひろば」については、期待通りの数の方に来ていただき(「ゲノムひろば」は東京会場で980人、京都会場で1,154人、総計2,134人の方が来場)、とにかくほっとしています。なによりもこれらの活動を通して、科学研究者についても、それ以外の分野の人々についても、これまで以上に多くの方々と交流することができたのはうれしいことでした。      こうした2006年の活動を受けて、今年はどんな年になるでしょう。      すでに研究室のメンバーには昨年12月から表明していますが、私としては「調査・研究を進める年」にしたいと考えています。ある程度の実践的プロジェクトは当然のこととして進行するのですが、全体としては2006年の「ゲノムひろば」のまとめや、昨年参加したメンバーが始めた様々な調査研究(具体的にはいずれ紹介します)などを論文や報告書にするための活動に力を入れていきます。      社会学、社会心理学、メディア研究、といった人文社会系の専門分野との交流をさらに活発にすることも重要です(そうした分野の方で大学院やポスドク研究員に興味があるという方は是非連絡してください)。春からは社会心理学分野出身の方に研究員として参加してもらうことも予定しています。      学生たちにはもっとサイエンスの勉強をしよう、ということも言っています。昨年研究会に来ていただいた理研CDBの広報国際化室のシップさんは、なんと文科系出身ですが、広報の仕事をするに当たって、スタンダードな教科書を読めば3ヶ月程度で勉強できる、と言い切られました。京大内では常に最新の研究分野のセミナーが開催されているわけですから、教科書による勉強とセミナーへの参加を組み合わせれば、最新のサイエンスの動きがわかるようになるはずです。もちろん本当の先端研究については、同じような話を2、3度聞いてようやく理解できるということもあります。だからこそ、同じ大学のキャンパス内で行われているセミナーや講義に日常的に参加するのがよいのです。  昨年同様、プライベートについてひとこと。  一昨年の夏に生まれた息子(次男)は1歳半になりました。  昨年は年明け早々、いきなりRSウイルスという、たちの悪いウイルスによる風邪に罹り、40℃の熱を出したり、レントゲンを取ったりと、大変な正月でした。今年は姉(長女)と兄(長男)と一緒に、プラレールやミニカーなど、いろんな遊びをしながら家中を走り回っています(すぐにこけるので危なくてしょうがないのですが)。実は家内が最近、パートタイムで子供英語教室の先生を始めたので、昨年同様「父親業」も多忙になりそうです。でも実は子供の相手は大好きなので、ふうふう言いながら楽しむつもりです。(研究室の皆さん、いろいろ迷惑かけますが、どうかお許しを)  正月に浜大津の琵琶湖畔にある「なぎさ公園」から眺めた湖西の山々には、例年ほどの雪はありませんでした。1月、2月のうちには雪で覆われて美しい景色が見られる日もあるでしょう。滋賀と京都の四季の変化を楽しむ余裕だけは持って、一年を過ごしたいと思っています。  久しぶりの「ひとこと」で長くなりました。  研究室メンバーともども、どうぞ今年もよろしくお願いします。 (追記)  昨年の後半に大学院に関心があるという方やポスドク希望の方からいただいたメールのうち、お返事ができていないものがいくつかあります。メールを書いたのに待っても返事が来ない、と思われたら、是非、もう一度問い合わせのメールを送ってくださいますようお願いします。

「ゲノムひろば」の準備(+α)

 いつもながら、久しぶりのひとことです。      実は9月後半から体調を崩して休んでいました。はっきりとは書きませんが、要は過労とストレスが原因の病気です。「中年」といわれる年齢になると、以前のように仕事が山積みのときに「ただ頑張り続ける」ということでは駄目で、頑張りすぎると必ずつけが回ってくるということのようです。無理がきかないからこそ、もっと頭を使って賢く仕事を進めなくてはならないですね(今頃こんなことに気付いているとは情けない)。  ところで、研究室は今、「ゲノムひろば2006」の準備で大忙しです。      学生や研究員たちは、自分の研究テーマを進めつつ、「ゲノムひろば」のスタッフとしての仕事をこなさなくてはなりません。2つのことはお互いに関連しており、中には「ゲノムひろば」を通して研究を進めている人もいますが、それでも時間的には大変な負担です。けれども、「実践も研究も両方できる人に育ってほしい」と考える僕としては、この大変さから逆に多くのことを学んでほしいと願っているところです。      今回の「ゲノムひろば」では、一般の来場者だけでなく、科学コミュニケーターや大学・研究機関の広報関係者、さらには倫理的・社会的問題に取り組む研究者など、「科学研究と社会をつなぐ専門家」にたくさん来てもらうことを企画しています。さらには新しいプログラムとして、ゲノムをテーマにしたサイエンスカフェ「おしゃべりゲノム」を用意しました。僕にはもうない20代のエネルギーが支えてくれる新しい「ゲノムひろば」は、どんな風に展開するのか。是非、多くの方に見に来ていただきたいです。    

大学院入試の季節です

4月のひとことから3ヶ月以上経ちました。 遂に「加藤さん、そろそろKKのひとこと書いてくださいよ」と研究室のメンバーに催促され、筆を取っています。 この3ヶ月の出来事を少しだけ紹介すると、 4月 8人(修士課程4名、博士課程2名、ポスドク2名)の新人が研究をスタート。まだまだみんな試行錯誤ですが、少しずつテーマが見えてきている気がします。 4月11、18日 生命倫理学講義(生命科学研究科) 11日には加藤が、生命科学と社会の接点の重要性・ゲノム研究とELSI・社会とのコミュニケーションについて講義。18日には、位田隆一先生にヒトES細胞およびヒトクローン胚について、浅井篤先生に臨床医学の倫理について講義していただきました。新年度最初の講義だったこともあり、40人以上の学生が参加してくれたのはうれしいことでした。 5月16-21日 韓国ソウルで科学コミュニケーションの国際会議PCST。独立した科学コミュニケーターが科学を伝えるだけでなく、現場の科学者・技術者のための科学コミュニケーションのトレーニングに携わっている人が世界には多数いることがわかったのが収穫でした。(Post-conference workshop: Training Scientists to communicate with lay audiences)。 5月31日-6月3日(KKのみ)フィンランド・ヘルシンキでHGM2006(HUGOヒトゲノム国際機構の年会)。ゲノム研究と生活習慣等を組み合わせるゲノム疫学のオンパレード。ヒトゲノムの進化のセッションも面白かった。 6月13日、20日、27日  生命文化学特論A(科学コミュニケーション特論) 今年は林衛さんと大岩ゆりさんに来ていただいて、雑誌記事と新聞記事の執筆の演習を行いました。新聞記事執筆の際のゲストは、再生研の中辻憲夫教授。 井出さんのプラネタリウム番組の投影も、1回目(6月10日)、2回目(7月15日)と無事終わりました。2回目には、韓国から植物分子生物学の先生がわざわざ来られ、是非、韓国と日本で科学コミュニケーションの人材交流を進めたいと語って下さいました。一人の学生のアイデアで始まった活動が様々な方向に波及して行く様子が面白い。 8月3,4日は、大学院の修士課程の入試です。 4月の入試説明会を含めると、これまでに20名近くの方が研究室訪問に来られました。でも、そのなかで「私は○○がやりたいです」と自分のビジョンを語れる人は少ない。実際の受験者はそれほど多くないのではないかと見ています。 願書提出は今日と明日(18、19日)のはず。 もし研究室を訪問せずに願書を出した方がおられたら、是非、試験までに僕に連絡を取ってください。