なぜ、産婦人科?その魅力

  1. たくさんの症例経験に基づく実力養成: 阪大と関連病院は背景に500万人の人口がある
  2. 関連病院ファースト・ポリシー: まず関連病院で (一般診療)、次に大学病院 (先端医療と理論)
  3. たくさんの仲間: 2021年は18名が研修開始
  4. 豊富な勉強の機会: 毎朝のカンファ・毎月のクルズス (系統講義)・年2回のオープンクリニカルカンファ (症例発表) で、単なるガイドラインでは片付かない奥深さを学習
  5. 新しいことに挑戦・盛んな臨床研究: 阪大から約60報、関連病院から約40報の英文論文・専門医の論文などが発表されている
  6. 関連病院の配置: 大阪府下・阪神間に集中、優れた連携が可能

なぜ、産婦人科?その不安

産婦人科はいろいろ言われていますよね。日本産科婦人科学会(日産婦)の若手委員会(年長者抜きで議論する若手医師の会)が、若手の目から見た不安は実は違う、というスライドを作ってくれました。阪大の教室からも何名もの医師が委員として参加しています。若手委員会の活動をぜひ見てください。

https://www.jsog-tobira.jp/tobira/

なぜ、阪大産婦人科プログラム?その魅力

  1. たくさんの症例経験に基づく実力養成:阪大と関連病院は背景に500万人の人口がある
  2. 関連病院ファースト・ポリシー:まず関連病院で(一般診療)、次に大学病院(先端医療と理論)
  3. たくさんの仲間:平成30年開始者15名が選んだプログラム
  4. 豊富な勉強の機会:毎朝のカンファ・毎月のクルズス(系統講義)・年2回のオープンクリニカルカンファ(症例発表)で、単なるガイドラインでは片付かない奥深さを学習
  5. 新しいことに挑戦・盛んな臨床研究:阪大から55報、関連病院から39報の英文論文・専門医の論文などが発表されている。
  6. 関連病院の配置:大阪府下・阪神間に集中、優れた連携が可能

産婦人科ってどんな科?

産婦人科はヒトの受精卵から妊娠・出産までのダイナミックな変化を見守り、幸せでかつこの世の中で最も大切な「次世代を産み育てる」ことに深く関与し、女性の命を奪う婦人科がんと闘い、女性の日常生活の質を落とす婦人科疾患の予防・治療を行うとても幅広い診療分野です。慢性疾患と高齢化対策が主になった現代医療の中で、妊婦さんは若く、婦人科疾患や婦人科がんも若い年代に起こることが最も多く、また治癒率も高く、病院の中で小児科を除くと外来、入院患者の平均年齢は最も若い診療科です。急性期疾患が多く、手術できっちり治る疾患も多く、医療人として「命を救った!」「治療して治した!」と実感できる分野だと思います。また、分娩を無事終えて、元気な赤ちゃんとお母さんになった女性の幸せな顔をみると、心から「おめでとう!」と言いたくなります。今の日本人のほとんどが産まれて始めて対面するヒト(他人)は産婦人科医なのです。

思春期の女性には心身の大きな変化が訪れ、女性が閉経後40年近く生きる時代になり、女性の一生の健康を守るにはホルモンを含めた産婦人科の理解が不可欠です。そして、女性の一生の幸せを考えることを通じて男性の幸せも考えることができます。

思春期から妊娠・出産、成人、更年期から老年期まで女性の一生までを幅広くカバーする産婦人科は、とてもダイナミックでやりがいに満ちています。

外科系?内科系?

今後の進路について、外科系?内科系?と迷われることは多いと思います。産婦人科はもちろん帝王切開や婦人科がんの手術、内視鏡手術、ロボット手術など多くの手術を行う外科系の一員ですが、妊娠中の合併症管理や、思春期、更年期、老年期の様々な問題は内科系の内容が多く含まれます。妊娠や更年期で女性の体は大きく変化し、さまざまな病気が表に出てきます。産婦人科は「女性の健康のGate keeper(門番)」なのです。診断から手術、薬物療法まですべてを一つの診療科で完結し、外科系も内科系も実践できるのが産婦人科の魅力です。

女性が有利?

「女性医師による、女性のための女性外来」という看板を掲げる病院があります。何かうさん臭くありませんか?女性医師しか、女性の疾患を理解できないのであれば、心筋梗塞の経験者しか循環器疾患患者の悩みをわかることが出来ず、肝炎経験者しか肝炎患者の悩みを理解できないことになります。「心筋梗塞経験医師による循環器外来」って「へん」でしょう。医学は自分が経験したことがない患者の悩み・苦しみを言葉や五感を使った診察により感受し、理解し、科学的手法を用いて解決して行く実践科学です。産婦人科医になるに当たって、女性が有利、逆に男性が有利もあり得ず、一色懸命やる人が有利な診療科です。

女性医師は不利?男性医師は不利?

産婦人科はハードだから出産・育児をすると続けることができない、と思っていませんか?女性が多いしわ寄せで男性が困っていると思っていませんか?今、日本産科婦人科学会の40歳未満の会員の約6割が女性です。もし、この皆さんが出産を機に第一線の仕事を辞めてしまったら日本の産婦人科医療はたちまち崩壊します。日本の産婦人科の今までの特徴は医師3-4人の少人数で外来・分娩・婦人科手術・当直をすべてこなす病院が身近に沢山あり、妊婦や患者さんには便利である、ということでした。しかし、医師3人のところで1人が産休を取ったらその病院はやって行けません。医師3人で産科大量出血に対する管理や合併症管理をとても安全には出来ません。少数の医師が病院で「安全・安心で優しいお産」を提供する、というのは言葉のまやかしか、誰かに犠牲を強いないとできません。妊婦さんが犠牲になれば取り返しがつきません。私は産婦人科がきつい、と言われる諸悪の根源は日本の病院の産婦人科が小規模分散型でやってきた事だと思っています。医師が10人いるところで1人、20人いるところなら2-3人が産休・育休をとっても十分にやって行けます。別に残った男性医師がしわ寄せを食らうこともないのです。日本産科婦人科学会は基幹分娩施設を大型化する分娩施設重点化策を発表しました。阪大産婦人科では既に2009年から市立貝塚病院と泉佐野市民病院の統合運営を皮切りに分娩施設の大型化を図っています。産婦人科は女性医師も男性医師もしっかり働き、ちゃんと家庭生活も営むことができる医療体制を学会挙げて目標にしています。

大阪大学産婦人科研修プログラム

大阪大学における産婦人科専門医研修 (専攻医養成) コース
2017年から新しい専門医研修制度が始まりました。大阪大学では「大阪大学産婦人科研修プログラム」を公表し、皆さんをお待ちしています。

臨床研究をしたい・・・

若い皆さんに意見を聞くと、「基礎研究で実験には興味がないが臨床研究ならやってみたい」と言う方がいます。産婦人科を実際に専攻し、様々な臨床研究成果に触れてみるとすぐに無理なことがわかると思いますので、私はいつもにこにこ夢物語を聞かせてもらっています。立派な臨床研究を組み立てるには結論がでる何年か先を見通す洞察力、正しい仮説を立てるために膨大な情報を仕入れる論文読解力、多くの先生に協力を得るための人脈、など、多くの能力が必要です。これらの能力は一時期大学院で研究に集中してこそ身に付くものだと思います。よく言われるトランスレーショナルリサーチは基礎研究の成果をいかに臨床に応用するかが問われており、基礎研究を深く理解する必要があります。基礎研究の経験・知識は臨床研究を目指す方にこそ欠かせません。本来、研究に基礎も臨床もなく真理の探究が研究です。将来臨床研究をしたい、という方ほど阪大産婦人科の大学院で「本物」の研究に触れてほしいと思います。

司法・行政との関係

産婦人科は訴訟が多い、と言われています。しかし、現代社会ではどの診療科でも高いレベルの医療を行っておれば一定の割合でトラブルが発生し、患者さんの思い通りにならないで不満を持たれることがあります。正しい医療を「やれるだけのことはやりました」と言える環境の中で行ったらたとえ訴えられても何も恐れることはありません。実際、阪大病院で産科が被告になった裁判は最近15年間で「ゼロ」です。ただ、相手を知り、制度を知ることは重要です。阪大産婦人科は阪大の高等司法研究科と共同研究を行い、医療人と司法人のあまりに大きい認識の違いを埋める努力をしています。また、同窓会平地会は医療訴訟に非常に詳しい弁護士の先生と顧問契約を結んでいます。

医師の立場を守り、患者の皆さんによりよい医療を提供するためには行政との関係も重要です。2000年代初頭にあった、福島県立大野病院事件や奈良県大淀町立大淀病院事件をみると、非力な施設に「病院」と名乗らせた行政の責任は重大だと思っています。阪大産婦人科は大阪府や関連病院のある自治体とは様々な形で連絡を取り、泉州地区の2病院(市立貝塚病院、りんくう総合医療センター)の産婦人科共同運営で大きな成果を上げました。今後も皆さんがよりよい医療を安心して行える体制づくりをしていきます。

遠い世界と思いがちな司法と行政ですが、私は普段からこういう方々との信頼関係を結ぶことが患者さんのためにも、若い皆さんに安心して力をつけてもらうためにも、重要だと考えています。

たくさんの若い先生方の力が必要です

阪大産婦人科と関連病院はまだまだ人材が不足しています。2018年の新専攻医は420名余り、500万人の人口に対する責任を日本の人口に対する比で考えるとその1/25、16-7人に来ていただく必要があります。多くの先生方に阪大・関連病院でのトレーニングを受けていただき、その後、研究で成果を上げ専門医取得をして様々な場所、立場で活躍していただきたいと思います。見学などは随時受け付けていますのでどうぞ、学生・研修医・専門医を問わず、いつでも話を聞きにきて下さい。お待ちしています。

連絡先:医局(jimu@gyne.med.osaka-u.ac.jp)