産婦人科医になるにあたって大学院教育が必要かどうか、についてその国々で大きな姿勢の差があります。アメリカ、カナダなどのメディカルスクール形式を取っているところではおおむね進まない割合が高いようです。しかし、これらの国でもサブスペシャリティー専門医(周産期、腫瘍、生殖など)を取る時にはフェローというコースを取り、一定期間基礎研究に従事します。日本の場合は多くは高校から直接医学部に入るため、本当の意味でのサイエンスの素養・経験がほとんどありません。そこで、大学院生としてきっちりと研究の考え方の訓練を受ける必要があります。

基礎研究で身に付けた洞察力やサイエンスそのものへの理解はかならず将来の診療で役に立ちます。これからはアバスチンのような分子標的薬、NIPTやBRCAsのような遺伝子診断などがどんどん産婦人科領域でも導入されてきます。その時に研究をやり込んだ経験があれば、これらの新技術が単にいいところばかりの「夢の技術・治療」ではないことが直感的に理解出来るはずです。もう一歩進んで自分で新しい診断や治療のきっかけとなる発見に挑むことは大きな喜びです。本当の「モノ」になり実用化されるのはいい研究成果の100に一つかそれ以下です。でも、その100の成果を出す活気がないと一つのものは実用化できないと思っています。阪大産婦人科はトランスレーショナル研究に向かう活気と指導力を持っている組織だと思います。深みのある基礎研究を、臨床の立場から行っている阪大産婦人科大学院に、ぜひご参加ください。また、医師以外の医療職の皆さんにも大学院は広く開かれています。生殖医学分野では胚培養士などの他職種の方々が広く活躍しておられます。このような皆さんの産婦人科大学院への参加も多いに歓迎しています。