研究Research

実施している臨床研究

感染制御学講座では様々な研究を行っています。

洗口液によるSARS-CoV-2のウイルス量減少効果の検証

2022年6月よりアース製薬との共同研究講座を設置し、COVID-19陽性者がCPC(セチルピリジニウム塩化物水和物)とMA-T(Matching Transformation System)を含む洗口液で洗口することでSARS-CoV-2のウイルス量が減少するかどうかについて、2022年11月からランダム化比較試験を行い検証しています。

ナノポアを用いた新規病原体検出法の開発

産業科学研究所の谷口正輝先生が開発したナノポアは、一分子解析とAIを用いて分子同定を行う革新的な検出法です。我々は谷口先生との共同研究で、このナノポア技術を病原体検出法に応用し、ウイルスや細菌の新規検出法の開発に取り組んでいます。すでにSARS-CoV-2の新規検出法として報告をしており(Nat Commun. 2021;12(1):3726.)、細菌についても耐性菌をはじめとする様々な細菌の検出法を開発しています。

 

肺炎球菌の伝播様式の機序解明

肺炎は、現在でも世界の死因の上位を占めており、その中でも肺炎球菌性肺炎が最も多いことが知られています。しかし、これまでの精力的な研究にも関わらず実は未だに感染伝播の機序がはっきりと解明されていません。これは、ヒトからヒトへの感染伝播の各段階を順にシミュレートできる動物モデルがないことが主な理由です。感染伝播から保菌の成立、肺炎発症までの時間的経過を順に追跡可能な動物モデルの存在は、そのプロセスを詳細に分析するためのキーとなります。我々は肺炎球菌感染伝播をステップごとに評価可能なマウス感染伝播モデルを用いて、感染様式に必要なファクターの同定や、新規ワクチン候補の評価を行っています。

 

COVID-19 後遺症の実態調査

COVID-19に感染したあとも、だるさや嗅覚異常、脱毛、集中力の低下など様々な症状が遷延することが知られています。海外の報告では5〜8人に1人がこうしたCOVID-19後遺症を経験しているとされていますが、日本ではこれまでに大規模な報告はありません。我々はモバイルアプリケーションを活用して、COVID-19に感染した人の症状の遷延する状況について調査を行っています。

マダニ刺咬後の発熱疾患レジストリの構築

日本国内ではツツガムシ病、日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ダニ媒介 性脳炎、ライム病、Borrelia miyamotoi感染症などのマダニあるいはダニ類媒介性感染症が流行してます。SFTSウイルスが発見された以降、日本国内のマダニから10以上もの新規ウイルスが検出されていますが、これらのウイルスによるヒト感染事例は報告されていません。2021年にはYezo virusによる発熱疾患が北海道から報告されるなど、マダニが持つ新規ウイルスは潜在的な発熱疾患として存在しており、これまでも診断されずに見逃されている可能性があります。 本研究は、日本全国に潜在的に存在すると考えられるヒトでの報告例のないマダニ媒介性ウイルスによる感染症の疫学、臨床像を明らかにすることを目的としています。

本研究に関するご質問等がありましたら下記のリンク先の事務局までお問い合わせ下さい。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。
また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、事務局までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。

マダニ刺咬後の発熱疾患レジストリの構築

 

物理的に抗菌性を発現する「ナノスパイク」の医療への応用

これまでの消毒剤や抗菌薬は化学的な作用により殺菌効果・抗菌作用を発現していましたが、毒性、薬剤耐性菌を生み出す可能性、効果の持続性、抗菌スペクトルが狭いことなどの課題があります。「ナノスパイク」は、抗菌作用を持つナノレベルの突起物です。ナノスパイクは突起物の物理的特性によって抗菌性が発現することから、化学的な作用である消毒剤や抗菌薬のデメリットを克服することができ、構造さえ保てれば半永久的に利用できると言う大きなメリットを有しています。本研究の目的は、このナノスパイク技術を医療機器、医療材料、医療環境などに応用することです。

 

ウルトラファインバブルの洗浄による病院内感染症の減少効果の検証

直径0.1mmから0.001mm以下の超微細な気泡をファインバブル、また0.001mm未満の気泡をウルトラファインバブルと言います。私達はウルトラファインバブル/マイクロバブルが皮膚細菌叢や皮膚バリアに与える影響を検討するため、通常のシャワーによる洗浄とミラブルを用いたシャワーによる洗浄とで皮膚マイクロバイオームの変化、細菌量の減少、皮膚バリアの変化について検証しています。