ブレインバンク・バイオリソース部門

設立の趣意

疾患の解明や治療法の開発のためには、患者様の試料が必要です。とりわけ亡くなられた患者様の篤志による脳の献体は脳疾患の解明や治療法の開発に大きな影響をもってきました。バンク事業は、これら患者様からの貴重な試料を多くの研究者が有効に活用できるための仕組みです。1960年、米国に多発性硬化症ブレイン(脳)バンクを創設した故Tourelotte博士は、「ブレインバンクは疾患克服のための、患者、医師、研究者による市民運動」と位置づけており、生きている間に亡くなった後の脳の献体についての意思表示を行う生前献脳同意はその根幹をなします。
私、村山特任教授は、東京都健康長寿医療センタ-に、本邦初の老化・認知症拠点としての高齢者ブレインバンク(https://www2.tmig.or.jp/brainbk/)を創設し、また本学及び国立病院機構大阪刀根山医療センターと協力し日本ブレインバンクネットワーク大阪拠点を構築してきました。

米国には自閉スペクトラム症親の会がスポンサーとなり、自閉スペクトラム症死後脳リソースを研究者に供与するAutism Tissue Project(ATP)がありますが、日本神経病理学会の調査では、本邦では自閉スペクトラム症死後脳リソースは現在皆無です。他の脳疾患と異なり、自閉スペクトラム症は天寿が期待できますので、生前献脳同意を得ることは養育者の感情を考えると極めて難しいと言えます。その一方で、疾患には民族差があるため、本邦における自閉スペクトラム症の病態解明とその成果の社会還元のためには本邦でのリソース構築は必須であると考えられます。連合小児発達学研究科は国立精神・神経医療研究センター(NCNP)開発費の下、万が一のご不幸に際し、病態解明のための献体を申し出てくださったご遺族の篤志に応えるべく、自閉スペクトラム症ブレインバンク設立の準備を続けてきました。この度、大阪に発達障害・精神・神経疾患ブレインバンク(Brain Bank for Neurodevelopmental, Neurological and Psychiatric Disorders: BBNDNPD)を創設することを目指して、大阪大学連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センターに新部門として、ブレインバンク・バイオリソース部門を創設することにしました。

また、連合小児発達学研究科は、自閉症診断の国際基準でのスタンダードである自閉症診断観察評定(ADOS-2)や自閉症診断面接(ADI-R)の実施資格を持つ心理職が在籍し、その精密な診断の下にゲノム・培養細胞を160蓄積しています。これは本邦では唯一の自閉スペクトラム症関連バイオリソースです。新部門設立は、このような自閉スペクトラム症患者のゲノム・培養細胞を保管、データベース化し、共同研究による病因追求を促進することも目的としています。

今後のご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。


大阪大学大学院連合小児発達学研究科
附属子どものこころの分子統御機構研究センター
ブレインバンク・バイオリソース部門
特任教授(常勤) 村山 繁雄

活動報告

スタッフ

専任 特任教授(常勤) 村山 繁雄 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kokoro/perform_sm.html 兼任 教授 片山 泰一 http://www.dma.jim.osaka-u.ac.jp/view?u=7426 兼任 教授(神経内科) 望月 秀樹 兼任 准教授 毛利 育子 http://www.dma.jim.osaka-u.ac.jp/view?u=7674 兼任 准教授 橘 雅弥 http://www.dma.jim.osaka-u.ac.jp/view?u=10000719 兼任 講師 吉村 武 兼任 助教(神経内科) 別宮 豪一