腫瘍病理ホームページ

謹賀新年

開講10周年(1990.4.1-2000.4.1)

昨年はいろいろお世話になりありがとうございました。

本年もよろしくお願いいたします。

平成12年元旦

 


今年も引き続きインターロイキン6をモデルに、細胞の増殖、分化、死の細胞内シグナル伝達機構の研究をさらに発展させるとともに、シグナル伝達の異常と自己免疫疾患の関係の解明に向けて頑張る覚悟です。また3年前より開始しました初期発生における体軸形成の研究も今年はいよいよ正念場を迎えます。昨年度はgp130を介するシグナル伝達機構に関する研究はある程度満足行く結果を得ました。すなわちサイトカインシグナルにおけるGab1, Gab2 の関与の発見、Gab1ノックアウトマススの作製およびその解析から、Gab1が心臓、胎盤、皮膚の発生に必須の役割を果たしていること、さらにGab1がgp130等のサイトカイン受容体やEGF, HGF, PDGF等の増殖因子受容体からERK MAP kinase活性化に至る経路に重要な役割を果たしていることを始めて明らかにすることが出来ました。またSTAT3の標的遺伝子として、一昨年のc-mycの同定に引き続きPim1/2を同定するとともに、c-mycとpim-1がSTAT3のG1-S細胞周期移行や生存シグナルにおける役割を代償しうることを明らかにすることが出来ました。この結果は従来報告されていたc-mycとPimによる白血病発症の分子機構のいったんを明らかにしたものです。さらにシグナル特異的変異gp130を発現するノックインマウスの作製とその解析を行い、gp130を介するSHP2シグナルやSTAT3シグナルの生体内での役割を明らかにすることが出来ました。今年はさらにこれらの研究結果を発展させ、サイトカインシグナルの異常と自己免疫疾患の発症の関係を明らかにする予定です。具体的には、gp130ノックアウトマウスにおける免疫異常の機構の解明、Gab1ノックアウトマウスにおける免疫異常の解析、Gab2ノックアウトマウスの作製とその解析、STAT3プロモター変異マウスの免疫異常の解析、CD38とBST−1のダブルノックアウトマウスの作製とその解析などを介して免疫応答や、その異常におけるサイトカインシグナルの役割を明らかにする予定です。また神経初期発生や発生一般に関与する分子の研究も、一昨年我々が発見したダルマ遺伝子を中心に飛躍的な展開が予想されます。また前頭部形成に重要な遺伝子のクローニングやゼブラフィシュにおける神経系を中心とした突然変異体の作成とその解析や遺伝子クローニングも今年は何らかの結果が得られる予定です。またgp130の原腸陥入における役割を明らかにする予定です。この分野の研究は腫瘍病理教室の次の大きな研究課題になるはずです。

このように細胞の増殖、分化、死の分子機構をあらゆる角度から観ることによって、生物学における一つの普遍的な原理原則の発見に迫りたいと思っています。では今年もよろしくご指導、ご鞭撻のほどお願いいたします。

2000年が皆さまにとって良き年でありますことを心よりお祈り申し上げます。

2000年1月1日

平野俊夫

平成12年1月9日新年会(平野自宅) 

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