今年は腫瘍病理教室に私が着任して、新しく研究室を開講して10年目の大きな筋目の年を迎えることになります。2000年4月1日の開講10周年の記念すべき時に向かって、今年は教室員が一丸となってこの10年間の成果を大きくまとめる覚悟で日夜研究にまい進する覚悟です。昨年は私が大阪府立羽曳野病院で、1978年にインターロイキン6の研究を開始して以来20周年の節目を迎えました。今年も引き続きインターロイキン6をモデルに、細胞の増殖、分化、死の細胞内シグナル伝達機構の研究を精力的に行います。今までの培養細胞中心の研究に加えて、マウスやゼブラフィシュを使用した生体内での研究を積極的に推進する予定です。今年はシグナル特異的変異gp130を発現するノックインマウスの免疫系や神経系の解析結果が楽しみです。また昨年新しく同定したGab1やGab2の機能解析や、Gab1ノックアウトマウスの解析結果が大いに期待できます。またBST−1の研究も昨年末に一応の結論がでたBST−1ノックアウトマウスを使用した研究成果をいかしつつ、CD38とBST−1のダブルノックアウトマウスの解析や、その免疫学的、生物学的意義の解明、および慢性関節リュウマチの病態にいかに関与しているかなどの問題を中心に展開する予定です。また神経初期発生や発生一般に関与する分子の研究も、昨年我々が発見したダルマ遺伝子を中心に飛躍的な展開が予想されます。また前頭部形成に重要な遺伝子のクローニングやゼブラフィシュにおける神経系を中心とした突然変異体の作成とその解析や遺伝子クローニングを新たに開始します。この分野の研究は腫瘍病理教室の次の大きな研究課題になるはずです。今までのインターロイキン6を中心としたサイトカイン研究を踏まえつつ、教室が大きく飛躍するための中心的な研究課題にしたいと考えています。
このように細胞の増殖、分化、死の分子機構をあらゆる角度から観ることによって、生物学における一つの普遍的な原理原則の発見に迫りたいと思っています。では今年もよろしくご指導、ご鞭撻のほどお願いいたします。
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