統合生理学教室
大阪大学大学院医学系研究科 生命機能研究科 生命を支える電気信号:分子からシステムへ
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電位依存性プロトンチャネルの温度感受性に関する研究

論文

Nature Communications 2012 May 08

"The cytoplasmic coiled-coil mediates cooperative gating temperature sensitivity in the voltage-gated H+ channel Hv1"
Yuichiro Fujiwara, Tatsuki Kurokawa, Kohei Takeshita, Megumi Kobayashi, Yoshifumi Okochi, Atsushi Nakagawa, Yasushi Okamura
PDB ID: 3VMX

研究内容

水素イオン(H+)は酸・アルカリバランスの調節や生理活性物質の原料となるなど生体にとって重要な働きを担っています。我々の体は細菌を退治する際に、武器として活性酸素を作っています。この時に、細胞内のH+を細胞外へ輸送することにより細胞内外の電荷のバランスを調節して活性酸素産生を維持し、同時に活性酸素の原料となるH+を供給するのが、細胞膜に開いたH+の通り道である電位依存性H+チャネルです。これまで、この電位依存性H+チャネルは2量体となり機能する事は知られていましたが、「どのように2量体化するのか?」「なぜ2量体になるのか?」といったことはわかっていませんでした。

当研究室と大阪大学蛋白質研究所(中川敦史教授)の研究チームでは、電位依存性H+チャネルが2量体に会合する領域を同定し、その原子構造をSPring-8 大阪大学ビームライン(BL44XU)を使用して解析を行いました。決定された構造は2量体コイルドコイル構造を呈しており、併せて行ったタンパク質の温度特性の解析と電気生理学的機能解析から、このコイルドコイル領域の熱安定性がチャネル機能の温度特性を決めるものであることを明らかにしました。また、この細胞内コイルドコイル領域を介して2つのH+チャネルが互いに抑制をかけて機能している事を明らかにしました。細胞内コイルドコイルが膜貫通ドメインから一連のへリックスを形成し2量体間の機能の橋渡しをしているというモデルは、イオンチャネル会合が機能修飾しているという新しい機構です。今回の電位依存性H+チャネルの構造と機能の解析は、将来の免疫療法薬開発に発展する期待が持てます。

HvCoiledCoil

Figure legend

In the dimeric voltage-gated H+ channel, Hv1/VSOP, the gating of each subunit is coupled, but the molecular basis of dimer formation and intersubunit coupling is unclear. This study shows that channel assembly and cooperative gating are mediated by the cytoplasmic domain.

プレスリリース

・NHK
NHKニュース おはよう日本 (2012年5月9日)
NHK web
・産経新聞
朝刊2面(2012年5月9日)
・読売新聞
朝刊22面(2012年5月9日)
・時事通信
・日経産業新聞
7面(2012年5月9日)