統合生理学教室
大阪大学大学院医学系研究科 生命機能研究科 生命を支える電気信号:分子からシステムへ
TOP > 研究内容 > 電位依存性プロトンチャネルの結晶構造に関する研究

電位依存性プロトンチャネルの結晶構造に関する研究

論文

Nature Structural & Molecular Biology 2014 Mar 02

"X-ray crystal structure of voltage-gated proton channel"
Takeshita K, Sakata S, Yamashita E, Fujiwara Y, Kawanabe A, Kurokawa T, Okochi Y, Matsuda M, Narita H, Okamura Y*, Nakagawa A*
*equal to correspondence, PDB ID: 3WKV

研究内容

2006年に当研究室により発見された電位依存性水素イオンチャネル(膜電位を検出して水素イオンのみを通すタンパク質)は、内蔵されたセンサーが電気信号を感知すると開くようにできており、通常は閉じています。しかし、この水素イオンチャネルが、「必要な時以外はどうやって最も小さなイオンである水素イオンを漏らさないのか?」、「細胞の内と外の電位差の変化を感知するセンサーはどこにあるのか?」といったことはわかっていませんでした。

そこで当研究室では大阪大学蛋白質研究所(竹下浩平研究員、中川敦史教授)の研究チームと共同で、この水素イオンチャネルの原子構造を大型放射光施設SPring-8(兵庫県)にある大阪大学蛋白質研究所の専用ビームライン(BL44XU)を使用し解析を進め、亜鉛イオンが留め金となって和傘が閉じるように水素イオンの通り道を閉じていることを解明しました。さらにセンサーは和傘の軸にあたる部分に存在し、上下にスライドすることで水素イオンの通り道の開閉を制御するすることも分かりました。これらのことから水素イオンを通す一方で、必要時以外は絶対に漏らさない機構が存在することを明らかにしました。

脳や精巣の局所では亜鉛イオン濃度が高く、神経系細胞や精子の水素イオンチャネルは亜鉛イオンが留め金となって通路がふさがっており、神経活動の変化や、射精などによって細胞周囲の亜鉛濃度が変わると、留め金がはずれ局所のpHが変化し、精子の運動性などが引き起こされると考えられています。今回水素イオンチャネルの構造が解明されたことで、このような生命現象の新たな仕組みが明らかになると期待されます。

VSOP結晶構造

プレスリリース

・阪大プレスリリース