統合生理学教室
大阪大学大学院医学系研究科 生命機能研究科 生命を支える電気信号:分子からシステムへ
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膜電位

細胞はタンパク質が埋め込まれた脂質の二重膜で囲まれています。二重膜は,細胞内外を物理的に仕切る障壁であるとともに,電気的に仕切る絶縁体としてはたらきます。細胞外のイオン環境は絶えず変動しています。細胞は, 生存や増殖に適した環境を保つため,細胞外とは異なるイオン環境を細胞内で維持しています。膜電位は、細胞膜をもつすべての細胞に必然的に存在する物理化学的な現象です。生物は、この細胞内外のイオン組成の違いより生じる膜電位を電気信号として利用し、神経や筋をはじめ、様々な生理現象の局面で、重要な信号伝達として使っています。また、良く知られているようにミトコンドリアでのエネルギー産生に、プロトンイオン濃度勾配による膜電位生成は重要な働きを担っています。

もし細胞膜にイオンが流れる通路がなければ,細胞膜をはさむ細胞内外の電位差は存在しえないのですが,特定のイオンを流す経路が存在すると濃度勾配にしたがってイオンが通過します。イオンは電荷をもっているので,その移動により細胞の内外間に電荷の不均衡が生じて,イオンの動きを止めようとする電位勾配が生じます。これが膜電位である。電位勾配(=膜電位)と濃度勾配がバランスしたところでイオンの流れは一定になる(図)(流れが一定になったときの電位差を平衡電位と呼ぶ)。したがって,細胞内外でイオン濃度差があり,特定のイオンに対する透過性が存在するすべての細胞で,膜電位差が生じることになります。

神経細胞では,静止時は細胞外に少なく細胞内に多いK+に対する透過性が高いので,膜電位はK+の平衡電位に近い-60 mVほどです

膜電位