平成31年に大阪大学形成外科学教室二代教授に就任しました久保盾貴と申します。
教室の源流は、皮膚科学教室のなかに形成外科診療グループが作られた昭和55年に遡ります。
グループ長は当初、松本維明が務め、その後、細川亙に替わりました。
診療グループは平成11年に独立し、細川が初代教授に就任しました。
平成30年に細川が退任し、久保がその後任として教室を引き継いでおります。
形成外科というのは、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、傷あとなどを、
さまざまな手法を駆使して機能を回復させ、可能な限り正常に、より美しく修復する科です。
治療の対象となるのは、先天性では、血管腫・血管奇形、口唇裂、眼瞼下垂症、小耳症などの
体表の異常や、あざのような色調異常などです。
後天性では、外傷、熱傷、外傷や手術の後に残る傷あとや変形、リンパ浮腫などです。
大阪大学形成外科の特色ですが、がんを切除した後の傷あとや変形に積極的な治療を施しており、
特に乳がん切除後の乳房再建では、西日本トップクラスの実績を持っています。
シリコンを用いた人工物による再建も多く行っておりますが、より自然な仕上がりを
期待できる自家組織(皮膚や皮下脂肪)の移植術式にも力を入れております。
また皮膚の血管が異常に増えたり広がったりする血管腫・血管奇形には、
放射線科・外科系診療科と連携した治療を行うほか、がん切除後の四肢のむくみには
リンパ浮腫外来を設けて対応しています。
難しいとされるケロイド治療には、放射線治療科と連携して良好な成績を上げています。
当科が目標としているのは、一人一人の患者さんの症状に合わせた、より安全で効果の高い治療です。
形成外科が扱う疾患は生命に直接関わらないものが多いのですが、
体表の異常は精神的なストレスにつながります。
機能の回復に加え、外見も美しく修復することで患者さんのQOLに貢献したいと考えています。