大阪大学医学部形成外科

外来受診案内

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形成外科で扱う疾患について

乳房再建リンパ浮腫眼瞼下垂下肢静脈瘤頭頸部再建血管腫・血管奇形皮膚腫瘍難治性潰瘍先天異常ケロイド・肥厚性瘢痕
上記の疾患の他に、眼瞼内反症、眼瞼外反症、眼瞼腫瘍、眼瞼痙攣、甲状腺眼症などの眼瞼疾患や顔面骨骨折・軟部組織損傷(顔面皮膚や顔面神経、
知覚神経、涙道、唾液腺など)の顔面外傷・顔面外傷後の瘢痕、顔面神経麻痺の神経再建、四肢の再建、体幹の再建、熱傷、母斑、耳下腺腫瘍、
義眼床手術、腋臭症、腹壁瘢痕ヘルニア、毛巣洞、陥入爪、巻き爪...等の治療も行っております。

乳房再建

乳房再建とは、乳がんなどにより乳房切除術を必要とする患者さんの乳房を取り戻す治療です。
乳房再建には様々な方法がありますが、当院では患者さんの状況や希望に合わせて再建方法や時期を決めるように心がけています。

再建の時期について

乳房再建には乳がん手術と同時に再建を行う一次再建と、乳がん手術後しばらく経ってから再建を行う二次再建があります。
それぞれ利点と欠点がありますので、当院では乳がん手術前に患者さん、乳腺外科の先生とよく相談をした上で方針を決めております。

再建の方法について

乳房再建にはご自身の組織を用いる方法(自家組織再建)と、シリコン乳房インプラントを用いる方法(人工物再建)があります。
それぞれ利点と欠点があり、また患者さんの状況により向き不向きもあります。
術前によく相談をして、ご自身に最適な再建方法を選択いただきます。
主な特徴は以下の通りです。


◎自家組織再建
利点:柔らかい、動きがあり自然、暖かい、メンテナンスの必要性が少ない
欠点:他の部位に瘢痕が残る、移植組織壊死のリスクがある(下腹部組織を用いた場合)


◎人工物再建
利点:他の部位に瘢痕が残らない、手術時間が短い
欠点:自然さは自家組織再建に劣る、メンテナンスが必要(人工物破損や被膜拘縮による変形)、下垂した乳房の再建は難しい

自家組織再建について

当院では主に下腹部の脂肪組織を移植する方法(遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁)と、背中の筋肉と脂肪を移植する方法(広背筋皮弁)を用いております。
主な特徴は以下の通りです。

◎遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁
大きな乳房の再建、放射線照射後の再建および両側乳房の再建に適しています。
皮弁採取後の下腹部瘢痕は長いですが、ジーンズで隠れる位置です。
当院では、脂肪吸引を併用することで、下腹部形態を整える工夫を行なっております。

◎広背筋皮弁
移植できるボリュームが少ないことが本法の難点でしたが、当院ではお腹や太ももからの脂肪吸引と移植を併用することで、小さめ~中等度サイズの乳房再建に用いております。
腹部に瘢痕を残したくない方、既に腹部皮弁を使用済の方に適しています。
皮弁採取部は、下着ラインに沿った11から15センチ程の瘢痕となります。
日常生活における術後機能障害はほとんどありません。

人工物再建について

2019年7月から保険診療において、しずく型(アナトミカル型)のシリコン乳房インプラントは使用できなくなっています。
一方で、丸型(ラウンド型)のシリコン乳房インプラントの使用は可能です。
このことにより、下垂のある乳房の再建が以前より困難となりましたが、多くの患者さんでは再建は可能と考えております。
当院では人工物再建においても、お腹や太ももからの脂肪吸引と移植を併用することで、術後成績の向上を目指しております。

乳輪乳頭再建について

乳輪乳頭の切除が必要であった患者さんでも、それらの再建が可能です。
乳頭再建には胸の皮膚を立ち上げる方法や、反対側の乳頭の一部を移植する方法があります。
乳輪再建にはアートメークを行う方法や、大腿内側基部から植皮を行う方法があります。

リンパ浮腫

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは、乳がん、子宮がんや前立腺がんなどでわきや骨盤内の手術を行った後や放射線治療を行った後に、
リンパの流れが悪くなって主に上肢や下肢に「むくみ」が出る疾患です。
まれに、手術をしていないのにもかかわらずリンパ管の異常で四肢に「むくみ」が出る、特発性リンパ浮腫もあります。


浮腫によって四肢の周径差が出ることや、だるさや時には痛みを伴うこともあります。
また、放置しておくと、皮膚障害から皮下脂肪に炎症が起きる「蜂窩織炎」を繰り返すこともあります。
一度リンパ浮腫が発症してしまうと、根治することが難しいため、いかに悪化させずに浮腫を軽減し、維持させるかが重要となります。

リンパ浮腫診断のための検査

浮腫には様々な原因が考えられます。リンパ浮腫と診断するために、以下の検査を行って診断することになります。
◎リンパシンチグラフィー
◎ICG(インドシアニングリーン)を使用した蛍光リンパ管造影

リンパ浮腫の治療

当施設では、身体状態や検査結果を踏まえて、以下の治療を行なっています。
◎複合的療法(圧迫するための弾性着衣選定やリンパドレナージなどのセルフケア指導)
◎手術療法(リンパ管細静脈吻合術や脂肪吸引など)

弾性着衣選定やセルフケア指導に関して専門の看護師が、「リンパ浮腫看護外来」で行います。
リンパ管細静脈吻合術は、通常1.0mmにも満たないリンパ管と静脈を吻合することで、滞っているリンパ液を体循環に戻すようにする方法です(写真)。
この手術によって、だるさなどの症状軽減や蜂窩織炎の発症を減らし、複合的療法の軽減が期待されます。

リンパ管細静脈吻合を行ったところ(A:リンパ管、B:静脈)

リンパ管細静脈吻合後、ICGにて静脈へのリンパ還流を確認

眼瞼下垂

眼瞼下垂症とは上瞼(うえまぶた)が上がりにくく、瞳孔に上瞼の縁または皮膚がかぶさっている状態のことであり、
先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂があります。
手術は局所麻酔で行う場合と全身麻酔で行う場合があります。
術直後から2週間程度は瞼が腫れますが、その後徐々に改善します。

先天性眼瞼下垂症

先天性眼瞼下垂は生まれつき、片側または両側の上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)という瞼を上げる筋肉の機能が低下または消失している状態です。
重症度に応じて適切な手術方法と時期を検討します。
手術方法には上眼瞼挙筋前転術と筋膜移植による吊り上げ術があります。


◎上眼瞼挙筋前転術
上眼瞼挙筋の機能が残っている場合に行う手術です。
上瞼を切開し、上眼瞼挙筋を剥がして牽引し、瞼の縁にある瞼板(けんばん)という組織に固定することで、瞼を上げやすくする手術です。


◎筋膜移植による吊り上げ術
上眼瞼挙筋の機能が消失、または高度に低下している場合に行う手術です。
眉毛の動きとともに瞼を上げられるように、ご自身の筋膜を眉毛から上瞼の皮下に移植します。
太もも外側の切開から、長さ4-5cm程度の筋膜を採取します。

後天性眼瞼下垂症

多くは加齢に伴う上瞼の皮膚のたるみや、上眼瞼挙筋の緩みで起こります。
長年のハードコンタクトレンズ装用による上眼瞼挙筋の障害も原因となることがあります。
そのほか、筋肉の変性疾患、神経麻痺を伴う疾患で合併することがあります。
術前に原因を精査し、手術方法を検討します。手術には余剰となった皮膚を切除する方法と、前述の上眼瞼挙筋前転術があります。

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤とは

足の静脈が太くなり、こぶのように浮き出て目立つようになった状態を下肢静脈瘤といいます。
下肢静脈瘤は誰でもがなり得る疾患で、かなり多くの人に見られます。その症状としては足のむくみ・だるさ・重さ、こむら返りなどが起こります。
重症な場合は皮膚炎や潰瘍(かいよう)を引き起こすこともあります。これらの症状は、適切な治療を受けることによって改善することができます。
当科では下肢静脈瘤でお困りの方の治療を行っています。気になる症状がありましたら外来にご相談にいらしてください。

下肢静脈瘤はなぜ生じるのか

下肢静脈瘤は静脈の「弁」が壊れて閉鎖不全を起こすことによって生じます。血管には動脈と静脈の2種類があります。
動脈は、心臓から血液を送り出す血管です。静脈は、動脈によって体のすみずみに送られた血液を心臓に戻す血管です。
下肢の静脈では血液を足から心臓へ送る、つまり血液を下から上へ「重力に逆らって送る」働きがあります。


この重力に逆らった血液の流れをスムーズにするため、静脈に「弁」という仕組みがついています。
静脈弁は、下肢の血液が心臓に向かって流れるときだけ開くようになっており、血液の逆流を防いでいます。
静脈弁が壊れると血液が重力に負けて逆流します。そして血液がうっ滞し、静脈がこぶのように膨らんで下肢静脈瘤が起こります。

下肢静脈瘤になりやすいのはどんな人か

静脈弁が壊れやすくなる要因として以下のことが言われています。

◎性別:女性に多く見られます。
◎加齢:年齢に伴って頻度が増加します。
◎職業:立ち仕事が長い職業(調理師・美容師・販売員など)では弁が壊れやすくなります。
◎遺伝:親が下肢静脈瘤の場合、その子も静脈瘤になりやすいといわれています。
◎妊娠・出産:妊娠で腹圧が上がると静脈圧が高くなり、弁の機能を障害しやすくなります。

下肢静脈瘤の症状

下肢静脈瘤に特徴的な症状として、足のむくみ・だるさ・重さ・ほてりなどがあります。こむら返りも起こりやすくなります。
また静脈瘤によって足の皮膚の炎症が起こりやすくなり、皮膚の痒み・湿疹(うっ滞性皮膚炎)、皮膚色の変化(色素沈着)、
皮膚の潰瘍(うっ滞性潰瘍)などを引き起こします。
静脈内に血栓が形成され、赤く腫れて痛むこともあります(血栓性静脈炎)。

下肢静脈瘤の検査

下肢静脈瘤では、逆流の原因である弁不全が、静脈のどの部位で起こっているのかを把握することが重要です。
エコー検査にて下肢の静脈を精査し、弁不全を診断します。エコー検査は苦痛を伴わない簡便な検査です。

下肢静脈瘤の治療

当科の特徴として、静脈瘤に対する血管内焼灼術(ラジオ波焼灼術)を行っています。
またそれ以外にも、主な治療として以下を行っています。
それぞれの治療法は、エコー検査に基づく静脈の状態・症状に応じて選択されますので、外来でご相談ください。


◎血管内焼灼術(ラジオ波焼灼術)
細いカテーテルを静脈の中に挿入して、高周波(ラジオ波)のエネルギーによる熱で静脈の内側から焼灼を行い、逆流を起こしている静脈を閉塞させます。
基本的には皮膚の切開を行わず、局所麻酔で可能な方法であり、体への負担の少ない治療法です(ただし瘤が目立つ場合は、ご希望に応じて皮膚を切開し瘤を切除しています)。


◎手術療法
ストリッピング術:逆流を起こしている静脈にワイヤーを通して、静脈を引き抜きます。
高位結紮術:逆流を起こしている静脈の根元を結紮して、部分的に抜去します。


◎硬化療法
静脈瘤内に硬化剤と呼ばれる薬剤(一般的にはポリドカスクレロールという薬剤を使用します)を注入し、血管を固める治療法です。
傷を残さない簡便な手術です。主に、クモの巣状静脈瘤や、穿通枝の逆流による静脈瘤など、小さな静脈瘤に使用されます。


◎保存的治療
静脈瘤用の弾性ストッキングを着用します。
弾性ストッキングは圧力が高く、下肢を段階的に圧迫します。圧迫により表在静脈の拡張がおさえられ、
血液の逆流が減少し、血液のうっ滞を改善します(圧迫療法)。
また、生活習慣の改善も重要です(長時間の立位を避ける、就寝時に下肢を高くする、など)。


頭頸部再建

頭頸部がんとは

頭頸部がんとは、口や舌・のど・耳などの顔面から首にできるがんです。
顔面から首にかけては呼吸したり声を出したり、ものを噛んだり、飲みこんだりなどの人が生きていくために大切な機能が集中しています。

頭頸部再建について

頭頸部がんの手術では腫瘍の大きさにより、組織を大きく切除する場合があります。
腫瘍の切除により、食事が不自由になったり、発声や呼吸に影響が出たり、顔面の大きな変形を引き起こすので、そこを修復する必要があります。
腫瘍の切除のあとに生じた欠損を修復するのに、体の他の部分から皮膚や筋肉、脂肪、神経、骨などの組織を移植するのが、形成外科の役割です。

頭頸部再建の方法

移植の方法としては、離れた場所から組織を移動してくる遊離組織移植術と近くの場所から移動してくる有茎組織移植術という方法があります。
移植する組織は内部に血液が流れている必要があるため、遊離組織移植術では移植する組織の血管を頭頸部の血管とつなぎ合わせます。
手術用の顕微鏡を用いて数ミリ程度の細さの血管を髪の毛よりも細い糸で縫い合わせるマイクロサージャリーの技術を用いて行います。


遊離組織移植術は、技術的には確立された方法ですが、5%程度の頻度で血管が詰まることがあり、再手術が必要な場合があります。
そのため、当科では手術中にできるだけ複数の血管をつなぎ合わせることで手術成績を良くする努力を行っています。
頭頸部に吻合に適した血管がない場合や血管吻合自体が難しい場合であっても、
有茎組織移植(一部つながったまま移植)を選択することで、組織を修復しています。

血管腫・血管奇形

血管腫と血管奇形は厳密には違う疾患ですが、最近まで区別されていなかったので血管腫・血管奇形とまとめて呼ばれています。
「血管腫」は腫瘍の一種ですが、腫瘍といってもほとんどは良性腫瘍です。乳児血管腫(=いちご状血管腫)が代表的です。
できる場所や大きさによってはQOLが損なわれるので、そういった病状に合わせて治療を行います。
一方、「血管奇形」は腫瘍ではなく、胎児期の血管形成の異常と捉えられています。
血管奇形の種類は多く、皮膚の色が変わるもの、皮膚がボコボコするもの、痛みを伴うもの、皮膚に潰瘍ができるもの、
出血するものなど様々な症状を起こすので、症状に合わせて検査や治療を行います。


血管腫・血管奇形は患者さんが少ない上に新しい治療方法が近年開発されてきているため、専門的でない病院では手に負えないことがあります。
そのため当院には大阪府内だけでなく近畿圏外から紹介を頂くことも多く、全国的に有数な血管腫・血管奇形の治療施設になっています。
当院では形成外科、放射線科、小児科、小児外科、整形外科、耳鼻咽喉科などが連携して血管腫・血管奇形の診療に当たっています。


血管腫・血管奇形は治療が難しいことも少なくないので、上手な付き合い方を見つけることも大事だと考えています。
医療費助成制度や患者会もありますので、担当医にご相談ください。下記もご参考ください。

<関連学会>
日本血管腫血管奇形学会(http://plaza.umin.ac.jp/~jssva/index.html)


<医療費助成制度>
難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp)
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp)


<患者会>
血管腫・血管奇形の患者会(https://www.pava-net.com)
血管奇形ネットワーク(http://kekkankikeinw.web.fc2.com)
混合型脈管奇形の会(http://www.myakkankikei.com)


ご紹介いただく先生方へ
当科で扱っている血管腫・血管奇形疾患:
・全ての血管腫
・全ての血管奇形(リンパ管腫などの脈管奇形を含む)
・血管腫・血管奇形と疑われる診断不明疾患

皮膚腫瘍

形成外科では、皮膚軟部腫瘍の治療を行っています。


主な良性皮膚腫瘍
粉瘤、石灰化上皮腫、汗管腫、表皮嚢腫、皮様嚢腫、稗粒腫(ひりゅうしゅ)、軟線維腫、色素性母斑、脂腺母斑、表皮母斑、ケラトアカントーマ、脂漏性角化症、毛細血管拡張性肉芽腫、グロムス腫瘍、黄色腫、脂肪腫など


主な悪性皮膚腫瘍
基底細胞がんや有棘細胞がん、乳房外パジェット病、ボーエン病、脂腺がん、汗管がん、毛包がん、隆起性皮膚線維肉腫など


腫瘍の性質や大きさなどにより、治療方法を選択しますが、手術治療の場合は、手術の傷跡(瘢痕)が残ってしまいます。
顔面や首、手など見える部位や、目や口、耳など傷跡により変形をきたしやすい部位など、整容面機能面を考慮して、手術を行っています。
具体的には、愛護的な手術操作、しわに沿った目立たない瘢痕、変形をきたしにくい切除方法の工夫などによって美しい目立たない傷跡を目指します。


悪性腫瘍を疑う場合は、皮膚科、整形外科など他科とも連携し、適切な診断と検査の上で、外科的治療を担当します。
悪性腫瘍の場合は、悪い部分をしっかり切除するために、多くは皮膚切除を必要とし、皮膚欠損が生じてしまいますが、
局所皮弁やマイクロサージャリーなど形成外科的技術を駆使して、機能的整容的損失の少ない再建を目指しています。

難治性潰瘍

難治性潰瘍とは

皮膚にできた傷は正常であれば治りますが、傷がなかなか治らず、深部に達したものを「潰瘍(かいよう)」といいます。
傷がなかなか治らないのには必ず原因があります。当科では潰瘍の原因を精査して治療を行っています。傷でお困りの方はご相談ください。

難治性潰瘍の主な原因

潰瘍が形成される原因として様々なものがあります。糖尿病では血管障害(動脈硬化)・神経障害から潰瘍が形成されます。
さらに糖尿病による免疫低下などにより難治となります。
閉塞性動脈硬化症・バージャー病などの疾患では、血流が低下することで潰瘍が形成されます。
また、下肢静脈瘤などによる静脈血のうっ滞により、血液循環が障害されて潰瘍が形成される場合もあります(うっ滞性潰瘍)。
膠原病の症状のひとつとしても潰瘍が形成されることが知られています。
膠原病ではさらにステロイドや免疫抑制剤などにより免疫力が低下し、傷が治りにくくなります。
そのほかにはがんの治療などで過去に放射線照射を受け、長い年月を経たのちに、潰瘍を形成することがあり、放射線潰瘍と呼ばれます。
放射線照射で受けた皮膚のダメージにより、治癒が困難となります。

難治性潰瘍の治療

潰瘍が形成されている原因を診断した上で治療にあたることが重要です。また治癒を妨げている因子(感染、低栄養など)があればそれらを改善します。
潰瘍そのものの治療のみでは、治癒が困難なことも多く、原疾患(糖尿病・閉塞性動脈硬化症・膠原病・下肢静脈瘤など)の治療を状態に応じて行っていきます。必要に応じて他科とも連携し治療にあたります。

◎保存的治療
・外用療法(軟膏による治療):潰瘍の状態に応じて軟膏の種類を選択します。
・局所陰圧閉鎖療法:潰瘍に陰圧をかけて、潰瘍からの浸出液を吸引し、肉芽の形成を促すことで、治癒を促進します。
当科では積極的に局所陰圧閉鎖療法を行っています。最近では陰圧治療と潰瘍の洗浄が同時に行える自動洗浄機能付き陰圧閉鎖療法を導入しています。

◎手術療法
潰瘍が保存的治療だけで治らない場合には、手術療法を検討します。
・外科的デブリードマン:壊死組織を除去することをデブリードマンといいます。
・植皮術:潰瘍以外の部位から皮膚を移植して治癒を図ります。
・皮弁形成術:潰瘍によっては 骨や腱が露出している場合があり、そのようなときには皮弁(血流のよい皮膚・皮下組織や深部組織)を移植することが必要となります。

先天異常

形成外科では、先天異常の中でもいわゆる体表の奇形を扱い、形成外科的手術技術を用いてこれを治しています。以下にその代表例を紹介します。

手足の先天奇形

手足の指の数は5本というのは遺伝子で決められていますが、胎児期のなんらかの理由で指が6本になったり、指がくっついたりします。
その他にも、他の指よりも短くなったりするなど様々です。遺伝することはほとんどありません。指が多い場合には、余った指を取る手術をします。
指がくっついている場合には指を切り離して皮膚の足りないところに皮膚移植をします。1歳前後で手術をすることが多いです。

色素性母斑

一般的な「ほくろ」とは違い、生まれつき大きな黒いアザができることがあります。
レーザー治療がほとんど聞かないので、手術で切除するのが一般的です。

先天性耳瘻管(耳瘻孔)

生まれつき空いている耳の前の小さな穴のことです。中に細菌が入って化膿することがあります。
化膿すると繰り返すことが多いので、手術で穴を切除します。

副耳

生まれつき耳の前にできる小さな出っ張りを副耳といいます。
目立つ場合には取ってしまうことが多いです。1歳前後で手術をすることが多いです。

埋没耳

生まれつき耳の上半分が頭にくっついている状態です。
見た目の問題だけでなく、メガネやマスクをかけるのに不都合なので手術をして耳の上半分を頭から離します。
就学前に手術をすることが多いです。

ご紹介いただく先生方へ
当科で扱っている先天異常
・手足の先天奇形(多指症、合指症、合趾症、第4中足骨短縮症)
・色素性母斑(ほくろ)、脂腺母斑
・臍ヘルニア、臍突出症
・先天性耳瘻管(耳瘻孔)、副耳、折れ耳、埋没耳
・乳児血管腫(いちご状血管腫)、先天性血管腫、毛細血管奇形(単純性血管腫)
・先天性眼瞼下垂症


※近年当科で実際に扱った先天異常から抜粋しています。

ケロイド・肥厚性瘢痕

ケロイド・肥厚性瘢痕とは

一度生じてしまった傷は落ち着くまでに、6ヶ月程度かかります(成熟瘢痕化すると言います)。
しかし、時間経過とともに傷が赤く盛り上がり、場合によってはそれが拡大することや、かゆみや痛みを伴う症状が出現することもあります(図1)。
これを、ケロイド・肥厚性瘢痕といいます。原因は未だ解明されていませんが、体質的な要素も考えられています。
まれに皮膚腫瘍との鑑別が困難なことがあるため、生検(部分切除による診断)を行うこともあります。

ケロイド・肥厚性瘢痕の治療

当院では、以下の方法で治療を行なっています。
◎トラニラスト(抗アレルギー薬)や漢方薬の内服
◎ステロイドテープの貼付
◎ステロイドの局所注射
◎切除と術後放射線治療の組み合わせ

特に「切除と術後放射線治療の組み合わせ」では放射線治療科と協力して治療に当たっており、治療成績は比較的良好です(図2)。

(図1)
胸部での手術後に、ケロイドが生じた症例。
一部の瘢痕では隆起や発赤があり、
症状として掻痒感と疼痛を自覚している。

(図2)
ケロイドと術後瘢痕を一塊にして切除・縫縮術を行い、
術後放射線治療(20Gy)を併用した。
術後1年で再発なく経過している。

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