「生命倫理」
「――こいつらは、所詮その道の熟達者に過ぎん。晋作は、ひとり冷やかであった。その道の熟達者、いまの言葉で言えば専門家であろう。学芸や技術の専門家というのは、それぞれ専攻する部門において、常人を越える知識と見解を持つ。その専門的知識や見解は、文化の進展という面では珍重すべきであろうが、多面性を持つ異文化に直面すると、その専門とする一部門に囚われて、大局観を欠く。」 これは池宮彰一郎氏の『高杉晋作』の一節である。私はこの一節を読んだ時に、この記述は、生命倫理についても当てはまるのではないかと感じた。というのも、生命倫理を学ぶには、法学、自然科学、歴史学、政治学、社会学、経済学、哲学、倫理学、心理学、宗教学など多くの学問の助けを借りなければならないからである。要するに、生命倫理に関する問題を考えるためには、単に自分が専門とする分野の知識だけでは足りず、多様な素養や広い知識が必要となるのである。 もっとも私自身は、多様な素養や広い知識などと呼べるようなものは現在持ち合わせてはいないが、多様な素養や広い知識を有する状態に少しでも近づけるように日々学問を積み重ねていきたいものである。 (元越 勇人)
「高校化学に生命化学!!」
今回は残念ながらケーキの話ではないです。期待していた人はごめんなさい。 あまり知られていないのですが、一昨年から始まった新課程における「化学2」という科目において「生命と物質」という章が加わりました。中身をのぞいてみると、DNA, ATPといった分子が構造式で示され、その役割についてもきっちりと書かれています。まさに「生命科学」そのものという感じで、充実の内容です。しかし、教育現場は混乱しているようで、生物はわからないから授業では取り扱わないと明言してしまう先生もいるぐらいです。生物と化学の乖離が生み出した混乱なのでしょう。 打開策として「生命科学」という科目が新設され、両科目の融合が図られることを切に望みます。 (加納 圭)
「ちょびっとサイエンス・コミュニケーション」
加藤研はケーキばっかり食べているのか、と誤解されても困るのですが、実は9月にもバースデー・ケーキをいただきました。お祝い対象者は複数だったのですが、ケーキの上のメッセージ・チョコレートに、代表として私の名前を載せていただくという栄誉にあずかりました。 写真をご覧ください。なんと、左端にはDNAの二重らせん、右端には細胞があしらわれています。こんなチョコ板は、今まで見たことがありません。わが研究室の「ものづくり姫」井出さんが、ケーキ屋さんにかけあって描いてもらったとのこと。パティシエ相手に、井出さんが熱心に説明している様子が浮かんできます。 「サイエンス・コミュニケーション!」と大仰に構えなくても、サイエンスの話をするチャンスは、日常にごろごろ転がっています。私は免許の更新に行って、鮫洲試験場のおじさんと「遺伝子検査」について話し込んでしまったことがあります。家族や友人のなにげない質問も貴重ですね。私はほとんどの場合すぐには答えられないので、自分で調べるきっかけになります。 ケーキ屋さんで、街のどこかで、ちょびっとサイエンスの話をする ―そんなところから始まるものも、あると思うんです。 (加藤牧菜)
「復活」
キリストのことではありません。 「ひとこと日誌」の順番に再加入しました。「気が向いたときに」というお言葉に胡座をかき続け、このまま気が向かないかもと思っておりました。 いかん、いかん。 閑話休題。 昨日サプライズがありました。 なんと! 研究室のメンバーがわたしのお誕生日をお祝いしてくださいました。写 真を見るとわかりますが、みなさまからショート・メッセージをいただき、身の丈以上のものから「はぁ?」というものまであり、とても楽しませていただきました(ケーキももちろんおいしかったです)。 年は取るものですね……、たぶん。 今回はリハビリをかねておりますので、とても短いですがこの辺で失礼します。 ( 山本芳栄)
「伝わる、伝える」
隠居したら、のんびり山歩きでもしたい。そうおっしゃっていたおじ様が、今年、定年を迎えた。そして迎えた新しい日々、彼は新天地で天職を見つける。 お昼ごはんをご一緒していたときのこと、「今、こんなことをしているんだ」と話してくださったテーマは広義のコミュニケーション。あら、同じじゃないですか。勿論、方向性やら視点やら、加藤研究室とはかなり違っているのだけれど。 大抵のおじ様はお忙しい。その忙しさの中で私のために使ってくださった時間達が、確実に、今の私を作っている。文化が伝わる、考えも伝わる、形を変えて、いろいろなところに、誰かの考えが染み込んでいく。いつか「面白いね」と言っていただける話が出来るように、日々、面白いことを追求して走り回らなきゃ、ね。おじ様の新しい職場、科学技術振興機構の新しい建物の前で、ふと、そんな感慨にふける。 おじ様の山歩きはどこへ?・・・まだまだ、先の話になりそうですね。 (東島仁)
継続は力なり
大学院に進学して以来、ずっとランニングを続けてきたのですが、気がつけば大学院進学前に比べて、体重は10kg落ち、体脂肪は5%減り、筋肉率は3%増えてました。別にダイエットを目的にランニングをしていた訳ではないのですが、このように目に見える結果が出ると嬉しくなりますね。「継続は力なり」という言葉がありますが、まさにこの言葉の通りだと思います。 研究にしても勉強にしてもスポーツにしても1日1日では目に見えるような結果は出ませんが、長期的な目で見ると、思った以上に目で見える結果が出るものなんだなぁ…と感じさせられました。焦らず、しかし着実に、自分の研究や勉強をこなしていこうと改めて思う今日この頃です。 (元越 勇人)
『Don’t worry. Be happy!』
宇宙飛行士野口聡一さん、出航前のひとこと。 ‘宇宙飛行士’と聞くと先ずは他人事のように‘少年の夢と希望’と連想するが、振り返れば自身にとってもたいへんな‘夢と希望’。 サンダーバードも宇宙戦艦ヤマトも見たことはないが、宇宙に行けるのだ!宇宙で実験が出来るのだ!というその現実にドキドキする。 国際宇宙ステーションには、哺乳類から植物、培養細胞まで幅広い生物種を用いた実験が行える「Centrifuge」という名の生命科学実験施設があり、現在、日本の実験棟「きぼう」も開発中だ。 宇宙で細胞を観る。学部時代、電子顕微鏡で1μmの‘超ミクロ宇宙’を観た後、天文学系研究室の望遠鏡で10万光年の‘宇宙,銀河’を観た。このスケール感は非常に心地良く、今思うと贅沢な楽しみであった。 宇宙というキーワードから語られる‘夢と希望’は尽きない。今回はここまでに。 最後に、ディスカバリー号コリンズ船長のこんな言葉を…『Know your job. Do your job. and Communicate!』 (井出 絵実子)


