先進融合医学共同研究講座
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漢方研究について 3

漢方処方英語略号作成の経緯

ISO/TC249を中心に伝統医学の国際標準化が議論されている状況だが、 日本漢方の持つ国際的な優位性の一つとして、品質が一定化された漢方エキス剤が挙げられる。現在、大建中湯や抑肝散などの漢方エキス剤のエビデンスの蓄積が進んでいる状況だが、エビデンスを論文化していくときに問題となるのが、漢方製剤の英語表記である。 対象として、2011年版の「改訂 一般用漢方処方の手引き」に掲載されている漢方エキス剤144処方の略号の試案が作成され、 厚生労働省の研究班における研究発表会にて、試案が発表されたところ、反響が大きかったことから、引き続き、2012年8月「一般用漢方製剤承認基準」における、現時点でのOTCも含めた298処方までを対象として試案が作成された。

承認までの経過

平成26年3月5日、日本東洋医学会の用語委員会での承認 平成26年5月11日、日本東洋医学会理事会での承認
平成26年8月31日、和漢医薬学会、東洋医学会の合同英文誌作成の編集委員会で承認
平成26年10月15日 一般用漢方処方の英語略号表記の試案に対しての意見募集
平成26年12月7日 日本東洋医学会理事会において 一般用漢方処方の英語略号表記最終案承認
平成29年4月28日 和漢医薬学会、東洋医学会の合同英文誌である Traditional Kampo Medicineへ投稿 “Abbreviation of kampo formulations and basic terminology in kampo medicine “
平成29年7月21日 同雑誌において受理

略号作成にあたって検討された内容とその概要

略号作成にあたっては、初めにPubMedで検索される漢方論文における漢方処方の表記状況を検討した。大建中湯、桂枝茯苓丸、六君子湯などを例に検討をおこなったが、表記方法がそれぞれ異なり、検索される論文数は一致しない状況であり、略号作成の必要性が確認されました。略号作成の方法としては、生薬の植物名の学名をもとに略号を作るという案もありましたが、漢方の持つ構造が理解しにくいという意見や、代表となる生薬をどう選定するのかという意見も出て、採用とはならなかった。最終的に、現在発表されているローマ字表記法を基に、原則として3文字となるように作成する案が採用された。ただし、桂枝湯加減法などの場合は、骨格となる桂枝湯の略号KSTに、桂枝加竜骨牡蠣湯であればKSTRBと加減した生薬を追記するような表記とし、漢方処方の構造が理解しやすい表記となるように工夫をした。大建中湯のようにDKTとして認知されているエキス剤であれば、その略号を優先した。同一の略号となる場合は、論文発表の状況を考慮し略号を選定した。以上の方法論に従い、一般用漢方処方298処方の英語略号を制定した。

略号使用状況の検討

代表的な漢方エキス剤である大建中湯、六君子、半夏瀉心湯、桂枝茯苓丸など代表的な漢方処方の略号、それぞれの表記で検索される論文数を検討した。以下の表で示すように、検索される論文数は一致しない状況であり、略号作成の必要性が、改めて確認された。 (検索論文数は2014年1月6日現在)

大建中湯
keywords ヒットした論文数
daikenchuto 75
dai-kenchu-to 65
TJ-100 7
TU-100 16
DKT 118
DKT daikenchuto 32
六君子湯
keywords ヒットした論文数
rikkunshito 60
rikkunshi to 60
RKT 41
rikkunshito RKT 6
TJ-43 59
rikkunshi to TJ-43 55
Liu-Jun-Zi-Tang
(中国語表記)
53
半夏瀉心湯
keywords ヒットした論文数
hangeshashinto 4
hange shashinto 17
hange shashin to 23
hange-shashin-to 22
HST 1102
HST hange shashin to 2
TJ-14 19
TJ-14 hange shashin to 13
桂枝茯苓丸
keywords ヒットした論文数
keishibukuryogan 59
keishi bukuryo gan 71
keishi-bukuryo-gan 23
TJ-25 22
TJ-25 keishibukuryogan 1102
KBG 19
keishi bukuryo gan KBG 13