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研究成果概要

計画研究01

組織幹細胞の維持と分化の制御機構
研究代表者: 鈴木 淳史
研究成果概要

再生医療や次世代癌治療の確立を目指す上で、各臓器・組織に含まれる「幹細胞」の性状を理解し、その破綻のメカニズムを解明することは必要不可欠といえます。我々は、内胚葉に由来する複雑な実質臓器のひとつ、肝臓の幹細胞を分離し、それらの分化や増殖を制御する分子機構を明らかにしてきました(Suzuki et al., Hepatology, 2000 & 2008; Suzuki et al., J Cell Biol, 2002; Suzuki et al., Development, 2003 & 2008; Onoyama et al., J Clin Invest, 2011)。また、肝幹細胞に特定の遺伝子変異が生じると「癌幹細胞」として悪性腫瘍を形成することや、肝幹細胞が関与しない肝再生において、分裂を停止した肝細胞が再び増殖を開始する分子機構も発見し、肝臓に対する再生療法や肝硬変・肝癌の原因究明と治療法の開発につながる研究成果を発表しました(Suzuki et al., Hepatology, 2008; Sekiya and Suzuki, PNAS, 2011)。さらに、肝細胞への分化決定がたった2種類の転写因子によって支配的に制御されていることを発見し、線維芽細胞にこれら2種類の転写因子を導入することで、線維芽細胞を直接肝細胞の性質をもった細胞(iHep細胞)へと変化させることに成功しました(Sekiya and Suzuki, Nature, 2011; Miura and Suzuki, Front Cell Dev Biol, 2014; Miura and Suzuki, Inflamm Renen, 2014)。一方で、生体内における細胞の分化転換と肝臓病との関係にも着目し、これまで胆管上皮細胞に由来すると考えられていた肝内胆管癌や慢性肝炎時の細胆管反応が、実際はNotchシグナルを介した肝細胞の分化転換から生じることを明らかにしました(Sekiya and Suzuki, J Clin Invest, 2012; Sekiya and Suzuki, Am J Pathol, 2014)。また、最近の研究では、高解像度デジタル三次元再構築法と形態計測学的手法を用いた時空間的かつ定量的な解析により、肝発生における肝内胆管の立体的な形態形成機序を解明することにも成功しました(Takashima et al., Hepatology, 2015)。