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計画研究07

上皮管腔組織の破綻と上皮間葉転換
研究代表者: 佐邊 壽孝
研究分担者: 小根山 千歳

研究概要

癌の浸潤転移は、癌細胞が十分に悪性化してから起るものと考えられて来ましたが、最近、発癌の初期段階からも頻々とおこる事が乳癌において実証されています。このような発癌初期段階からの播種は初期治療後の予後経過を考える上で重要です。ヒト乳癌の約8割が乳腺の内腔上皮に起因します。乳腺は乳汁産生外分泌器官であり、内腔上皮細胞層に加え、筋上皮細胞層、基底膜層から成る典型的な上皮管腔構造を示します。

一般に癌化した上皮細胞が浸潤転移するためには、少なくとも一過性に、隣接する細胞や基質との接着を変化させ、「運動性」を獲得する必要があります。同時に、通常は浮遊状態の生存を禁忌している「anoikis:足場欠損による細胞死」を回避する必要があります。このような過程は、発生期をはじめ、乳腺管腔構造の再構築や損傷治癒過程等にみられる「上皮間葉転換(EMT)」に大きく類似したものであり、また、乳腺癌化細胞にEMTが起る事は上皮管腔組織の局所的な破綻を伴います。私達は一貫して、EMTを引き起し細胞に運動性を賦与するシグナル因子と経路に関する研究を行って来ました。癌はゲノム変異に起因する疾患です。本研究では、乳癌を主な対象とし、管腔構造の内腔上皮におけるEMT様過程進行に根幹的なシグナル伝達因子群と経路を明確にし、同時に、ゲノムのどのような変化がそのようなシグナル経路の創出に関わるのかを明らかにすることを目的としています。その事により、癌の浸潤や転移、特に、発癌初期段階からの播種の分子機構を明らかにし、今後の癌研究、並びに、癌の予防や治療に貢献する知見の提示を目指しています。