患者さんへ

診療案内

For patients

診療案内

当診療科では、放射性医薬品を用いた核医学診療を行っています。核医学診断では、放射性薬剤を投与した後の体内分布をSPECT(スペクト)やPET(ペット)という装置を用いて、撮影します。また核医学治療では、アルファ線やベータ線と呼ばれる飛程の短い放射線を用いて、治療を行います。

一般核医学検査(シンチ・SPECT/CT)

脳血流SPECT(「スペクト」以下同じ)

脳血流を画像にする検査です。脳のどの部位の血流が下がっているかを評価します。
脳血流量と一定の相関がある放射性医薬品(123I-IMPや99mTc-ECD)を静脈注射してすぐに撮影が1時間続きます。この間の安静を保つことが重要です。種々の脳血流パターンを呈する認知症(アルツハイマー型認知症など)の診断に役立てられています。

脳血流SPECT

脳ドパミントランスポーターSPECT

脳の黒質線条体ドパミン神経終末に多く存在しているドパミントランスポーターの発現量を画像にする検査です。ドパミントランスポーターに親和性の高い放射性医薬品(123I-ioflupane)を午前中に静脈注射します。この3~4時間後に撮影を約30分間かけて行います。
パーキンソン病やレビー小体型認知症などで集積低下することが特徴的です。

脳ドパミントランスポーターSPECT
左:正常 右:パーキンソン病

脳ベンゾジアゼピン受容体SPECT

脳内の中枢性ベンゾジアゼピン受容体の発現量を画像にする検査です。
同受容体に親和性の高い放射性医薬品(123I-iomazenil)を静脈注射します。この3時間後に撮影を約30分間かけて行います(大半は午後撮影しています)。
てんかん焦点の部位で集積低下することが特徴的です。

脳ベンゾジアゼピン受容体SPECT

心臓交感神経シンチ

心臓の交感神経の機能と分布を画像にする検査です。
交感神経終末のクロム親和性細胞に取り込まれる性質の放射性医薬品(123I-MIBG)を午前中に静脈投与します。この15分後・4時間後にそれぞれ約10-40分間かけて撮影を行います(大半は午後になります)。
パーキンソン病やレビー小体型認知症、心不全などで、集積低下・洗い出し亢進が特徴的です。

心臓交感神経シンチ

心筋血流シンチ

心筋細胞の中に存在するミトコンドリアの機能と分布を画像にする検査です。
放射性医薬品(99mTc-MIBIや99mTc-tetrofosmin)を静脈注射します。この30分-1時間後に撮影を30分間かけて行います。午後から撮影を行う場合もあります。
運動負荷(自転車エルゴメーターによる)または薬剤負荷(ATPを静脈注射する)を同日に行う場合には、負荷時の投与ならびに撮影を午前に、安静時の投与ならびに撮影を午後に行います。
狭心症に伴って冠動脈が狭窄している領域の心筋で、負荷時にのみ集積低下すると特徴的です。

心筋血流シンチ

心筋脂肪酸代謝シンチ

心筋の脂肪酸を使用したエネルギー代謝とその分布を画像にする検査です。
放射性医薬品(123I-BMIPP)を静脈します。この20分後・3時間20分後にそれぞれ撮影を30分間かけて行います。当日検査終了まで絶食が必要です。
心筋脂肪酸代謝障害部位の集積低下することが特徴的です。

心筋脂肪酸代謝シンチ

心プールシンチ

心臓内の血液を画像にして、左右の心機能を評価する検査です。
放射性医薬品(99mTc-HSA-D)を静脈注射します。この直後に10分間かけて撮影を行います。心電図と同期して撮影を行なっています。

心プールシンチ

心臓ピロリン酸シンチ

高度に障害もしくは壊死した心筋の分布を画像にする検査です。
ハイドロキシアパタイトに結合する放射性医薬品(99mTc-PYP)を静脈注射します。この3時間後に30分の収集を行います。
虚血や梗塞、アミロイドーシスなどでの評価に有用です。

正常
正常
アミロイドーシス疑い
アミロイドーシス疑い

骨シンチ

骨の代謝を画像にする検査です。
ハイドロキシアパタイトに類似した放射性医薬品(99mTc-HMDPや99mTc-MDP)を午前中に静脈投与します。午後から撮影を30分間~1時間かけて行います。
悪性腫瘍の骨転移部位の集積上昇が特徴的で、その他にも骨代謝性疾患で行うことがあります。

骨シンチ

ガリウムシンチ

体内の炎症や腫瘍の分布を画像にする検査です。
炎症部位や腫瘍に集積する性質のある放射性医薬品(67Ga-citrate)を静脈注射します。この3日後に撮影を30分間~1時間かけて行います。
サルコイドーシスなどの炎症性疾患の局在診断や活動性評価、悪性腫瘍の診断のために行うことがあります。

ガリウムシンチ

肺血流シンチ

肺血流分布を画像にする検査です。
肺毛細血管に一過性に分布する放射性医薬品(99mTc-MAA)を静脈注射します。この直後から撮影を20分間かけて行います。
右左短絡(シャント)が疑われた方では、全身の撮影を行う場合もあります。

肺血流シンチ

肺換気シンチ

肺内の換気の分布を画像にする検査です。
加湿した空気とともに放射性医薬品(81mKrガス)を吸入しつつ、撮影を30分間かけて行います。
換気機能の低下している部位の集積低下が特徴的です。

肺換気シンチ

甲状腺シンチ

甲状腺がヨウ素を血液中から取り込んで、甲状腺ホルモンを合成する性質を利用して、甲状腺の機能と分布を画像にする検査です。
放射性医薬品(Na-123Iカプセル)を経口摂取していただきます。この約6時間後に撮影を30分間かけて行います。甲状腺摂取率を測定して、機能評価します。
甲状腺機能亢進・低下症の診断、異所性甲状腺や甲状腺癌転移の検出などに利用されています。

甲状腺シンチ

副甲状腺シンチ

副甲状腺機能亢進症の局在分布を画像にする検査です。
副甲状腺のうち、腫大した副甲状腺のミトコンドリアの豊富な好酸性細胞に集積するような放射性医薬品(99mTc-MIBI)を静脈注射します。この5分後・2時間後にそれぞれ撮影を30分間かけて行います。
副甲状腺腺腫の部位で、集積上昇・遷延が特徴的です。

副甲状腺シンチ

ソマトスタチン受容体シンチ

文字通り、ソマトスタチン受容体の分布を画像にする検査です。
ソマトスタチンに類似した放射性医薬品(111In-pentetreotide)を午前中に静脈注射します。この当日午後と翌日にそれぞれ撮影を1時間かけて行います。
ソマトスタチン受容体を発現している神経内分泌腫瘍の原発部位・転移部位で集積上昇することが特徴的です。

ソマトスタチン受容体シンチ

副腎皮質シンチ

副腎疾患部位の局在を画像にする検査です。
副腎に取り込まれる放射性医薬品(131I-adosterol)を静脈注射します。この9日後に撮影を約1時間かけて行います。原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫などで、病変側の集積上昇・正常側の集積低下するような場合に特徴的です。

副腎皮質シンチ

副腎髄質シンチ

交感神経終末のクロム親和性細胞の機能と分布を画像にする検査です。
副腎髄質のクロム親和性細胞に取り込まれる性質の放射性医薬品(123I-MIBG)を静脈注射します。この翌日撮影を1時間かけて行います。
褐色細胞腫や神経芽細胞腫、傍神経節腫で集積上昇することが特徴的です。

副腎髄質シンチ

リンパ管シンチ

リンパの流れを画像にする検査です。
放射性医薬品(99mTc-HSA-D)を手指または足趾の間に皮下注射します。この直後・20分後・1時間後・2時間後までそれぞれ撮影を10分間かけて行います。
リンパ浮腫の状態では、集積の描出が遅くなったり、描出がなくなったりすることが特徴的です。

リンパ管シンチ

出血シンチ・蛋白漏出シンチ

出血や蛋白漏出する病態を画像にする検査です。
放射性医薬品(99mTc-HSA-D)を静脈注射します。この直後・2時間後・6時間後・24時間後にそれぞれ撮影を30分間~1時間かけて行います。状況により省略する場合があります。
消化管の出血やアルブミンの異常漏出している部位で集積上昇することが特徴的です。

出血シンチ・蛋白漏出シンチ

唾液腺シンチ

唾液腺の機能を画像にする検査です。
唾液腺に集積する放射性医薬品(99mTc-HSA-D)を静脈注射します。この直後から撮影を30分間かけて行います。撮影途中、梅干しやレモンなどで唾液の分泌を促すこともあります。
シェーグレン症候群など唾液分泌障害の評価に利用されています。

唾液腺シンチ
唾液腺シンチ

メッケルシンチ

異所性胃粘膜の分布を画像にする検査です。
胃粘膜細胞に取り込まれて分泌される放射性医薬品(99mTc-pertechnetate)を静脈注射します。この直後から撮影を1時間かけて行います。
異所性胃粘膜を内在するメッケル憩室で集積上昇することが特徴的です。

メッケルシンチ
メッケルシンチ

肝・胆道シンチ

肝機能、胆道通過性など、胆汁排泄の機能を画像にする検査です。
速やかに肝臓に取り込まれて胆汁に排泄される放射性医薬品(99mTc-PMT)を静脈注射します。この直後から1時間かけて撮影を行います。撮影は翌日まで追加することがあります。
胆道閉鎖症などの胆汁うっ滞に関する診断、術後の胆汁の流れを確認する場合があります。

肝・胆道シンチ

肝シンチ

肝・胆道シンチ

肝細胞表面に存在するアシアロ糖蛋白受容体に結合する放射性医薬品(99mTc-GSA)を静脈注射します。この直後から撮影を30分間かけて行います。
肝機能と相関するように集積することが特徴的です。

肝・胆道シンチ

腎静態シンチ

腎臓の形態(腎実質が保たれている領域)を画像にする検査です。
腎実質に高率に集積する放射性医薬品(99mTc-DMSA)を静脈注射します。この2時間後に撮影を30分間かけて行います。
腎実質の瘢痕が描出されます。

正常
正常
異常(正常集積が欠けている)
異常(正常集積が欠けている)

腎動態シンチ

腎機能を画像にして評価する検査です。
腎尿細管に高率に取り込まれて尿中排泄される放射性医薬品(99mTc-MAG3)を静脈注射します。この直後から約20分間かけて撮影を行います。
分腎機能や尿路の通過状態の評価などに利用されています。

腎動態シンチ
腎動態シンチ

PET検査

18F-FDG PET (腫瘍)

がんのブドウ糖代謝をみる検査です。
原発巣、転移巣が描出されます。がんの種類や大きさによっては描出されないこともあります。
検査前4時間は絶食をお願いしています。

18F-FDG PET (腫瘍)

18F-FDG PET (脳)

てんかんの焦点を明らかにする検査です。
発作がない時に検査を行います。
検査前4時間は絶食をお願いしています。

18F-FDG PET (脳)

18F-FDG PET (心筋)

虚血性心疾患で心筋の元気さを見る場合や、心サルコイドーシスで病気の広がりをみる場合に行います。
検査前の前処置が目的により異なるのでお問い合わせください。

18F-FDG PET (心筋)

18F-FDG PET (大血管)

大血管炎において病変の部位や活動性を見る検査です。
検査前4時間は絶食をお願いしています。

18F-FDG PET (大血管)

1313N-アンモニア PET

心筋の血流をみる検査です。血流の絶対値がわかります。

O15-PET 脳循環代謝検査

脳血流や脳酸素代謝を調べる検査です。頸動脈や脳動脈の狭窄症、もやもや病などに対して行われます。
手首の動脈に細い管を挿入した後、頭を固定した状態でマスクからガスを吸いながら撮影を行います。所要時間は2時間程度です。

O15-PET 脳循環代謝検査

核医学治療

ゾーフィゴ治療:前立腺癌骨転移の治療

ゾーフィゴには、アルファ線と呼ばれる放射線を出す「ラジウム-223」(Ra-223)という物質が含まれています。
このラジウム-223には、骨の成分であるカルシウムと同じように骨に集まりやすい性質があり、注射で体内に送られると、代謝が活発になっているがんの骨転移巣に多く運ばれます。そして、そこから放出されるアルファ線が、骨に転移したがん細胞の増殖を抑えます。
こうした作用によって、骨転移した去勢抵抗性前立腺がんに対して治療効果が期待できます。 ゾーフィゴは注射で投与します。副作用の有無を確認しながら、4週間おきに合計6回の投与を行います。
主科からの紹介制となっておりますので、治療適応については、泌尿器科に御相談下さい。

ゾーフィゴ治療:前立腺癌骨転移の治療

(出典:バイエル薬品株式会社 ゾーフィゴについて)
https://www.xofigo.jp/ja/patients/about_xofigo

ゼヴァリン治療:悪性リンパ腫の治療

ゼヴァリンには、ベータ線と呼ばれる放射線を出す「イットリウム-90」(Y-90)という放射性同位元素が含まれています。
このゼヴァリンは、 CD20陽性の再発または難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫に対して行う放射性アイソトープ標識抗体治療薬です。
化学療法やリツキサンが有効でなかった患者さんの約80%の方に効果が発現し、約60%の患者さんで治癒が期待できます。
治療適応については、血液・腫瘍内科に御相談下さい。


(出典:RI標識抗体療法を受けられる患者さんとご家族向けサイト)
http://yin.jp/patient/disease/about_ri.html