患者さんへ

診療案内

For patients

診療実績

1.スタッフ

特任教授1名、講師1名、助教1名、特任助教2名、医員5名、薬剤師1名、特任研究員1名(特任および兼任含む)
(2019年4月1日より科長事務取扱(兼)講師 加藤 弘樹)

2.診療内容

当科では、放射性薬剤を用いた核医学診療を行っている。核医学診断は、体内に放射性薬剤を投与し、その体内動態を経時的に体外計測し、病態を評価する手法である。CTやMRIを用いた画像診断では形態情報が中心であるのに対して、核医学診断では定量的な血流画像、がん細胞の代謝画像、脳の受容体分布画像などが得られる。現在、撮像装置として、SPECT/CT(Single Photon Emission Tomography/CT)並びにPET/CT(Positron Emission Tomography/CT)といったCTとの一体型装置が主要なモダリティとなっている。
一方、PET製剤を合成する標識合成室は、医薬品等の製造品質管理基準(Good Manufacturing Practice, GMP)に準処した合成環境が整備されており、医薬品開発に関連したPETマイクロドーズ臨床試験が可能となっている。またGMP基準下で合成されたPET製剤を用いて、First-in-Human PETマイクロドーズ臨床試験が実施されている。

(1) PETによる悪性腫瘍診断

多くの悪性腫瘍ではブドウ糖の代謝が亢進している。
ブドウ糖疑似体18F fluoro-deoxy-glucose(FDG)を投与し、PETで異常集積部位を画像化し、悪性腫瘍の存在や病期診断、治療効果を評価することができる。現在では、早期胃がんを除く、すべての悪性腫瘍を対象として保険適応でFDG-PET検査を行っている。多くの診療科からの検査依頼があり、年間2,100件以上の検査を施行している。最新の高分解能装置を含むPET-CT装置2台でFDG-PET検査を行い、転移・再発診断における主役を担っている。
一方で、FDGは生理的集積や炎症への集積がみられるため、さらに腫瘍特異性の高いPETプローブの開発が求められている。本院では、倫理委員会の承認を受け、放射性アミノ酸PETプローブによる悪性腫瘍診断を臨床研究として行っている。

(2) 中枢神経疾患の核医学診療

SPECTによる脳血流・脳機能検査、PETによる脳循環酸素代謝・糖代謝検査を行っている。
SPECTによる脳血流検査は、1) 臨床的に認知症が疑われる場合の脳機能障害の評価、2) 慢性閉塞性脳血管障害における脳循環障害の重症度の評価、3) 難治性てんかんのてんかん焦点の同定などを目的に行われる。
神経変性疾患、精神科領域疾患の局所脳機能障害を画像化するために、画像統計解析法による補助診断も行っている。本院の撮像装置に特化した正常データベースも構築され、精度の高い診断が可能である。
15OガスPET を用いた脳循環酸素代謝測定では、定量的な脳血流量や脳酸素消費量、脳酸素摂取率など、血行再建術の検討症例に対してより詳細な評価が保険診療下で可能である。
現在、線条体ドパミントランスポーター(dopamine transporter, DAT)を可視化するDAT-SPECTが、パーキンソン症候群並びにレビー小体型認知症の診断目的に、保険診療の実施が可能となっており、本院でも検査件数は増加傾向である。主に精神科領域、神経内科領域の疾患を対象に施行している。

(3) 循環器疾患の核医学診療

心筋血流検査(安静時及び運動負荷時)、心筋代謝検査(脂肪酸、ブドウ糖)、心筋交感神経系検査が行われる。FDG-PET検査では、虚血性心疾患による心不全患者における心筋組織のバイアビリティ診断に加えて、心サルコイドーシスにおける炎症部位の診断目的にも実施されている。また、パーキンソン病やレビー小体型認知症の鑑別診断に対して、123I-MIBGシンチグラム検査が保険適応となっており、神経内科・脳卒中科や神経科・精神科を中心に神経変性疾患の病態把握に利用されている。
また高安病などの大血管炎に対しても、保険診療でFDG-PET検査が実施されており、炎症の活動性を把握する上で有用性の高い検査となっている。
さらに心筋血流を高精度に定量的に測定できるアンモニアPET検査も実施されている。

(4) その他の画像診断検査

骨転移の検索のための全身骨シンチグラム、分腎機能検査としてのレノグラム、深部静脈血栓と肺塞栓の検索のための肺血流シンチグラム、過機能副甲状腺腺腫の検索など内分泌疾患の画像診断を行っている。また、SPECT/CT装置による融合画像診断により、一般核医学検査診断の精度が向上している。
また神経内分泌腫瘍を対象とした診断用放射性医薬品オクトレオスキャンを用いることで、ソマトスタチン受容体の発現評価が可能である。今後、治療用放射性医薬品「ルテチウムドータオクトレオテート(177Lu)」を用いた治療への応用が期待されている。

(5) 核医学治療

CD20陽性の再発低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫症例に対する90Y標識抗体療法、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌に対する塩化ラジウム(223Ra)治療が実施できる体制となっている。また塩化ラジウム(223Ra)治療を行う患者さんに事前説明や治療後の経過観察を行う核医学治療外来(火・木曜の午後)が開設されている。

3.診療体制

(1) 検査スケジュール

1) PET

保険適用検査である18F-FDGによる悪性腫瘍診断は、月曜日から金曜日まで毎日、15Oガスを用いた脳循環代謝測定は水曜日に行っている。検査は全てオープン予約で受け付けている。緊急検査にも応じている。また他院からの紹介検査についても対応可能となっている。

2) SPECT・シンチ

基本的に予約検査として実施しており、月曜日から金曜日まで振り分けて、検査を行っている。また必要に応じて、SPECT/CT検査の追加撮影を行っている。

2) 核医学治療

診療科からの依頼を受けて、治療用放射性医薬品の投与ならびに外来での経過観察を行っている。

4.主な診療実績(平成30年4月~平成31年3月)

(1) PET

18F-FDG悪性腫瘍診断 外来 2110件
入院 144件
合計 2254件
18F-FDGてんかん診断 67件
18F-FDG心筋・大血管 21件
13N-アンモニア 15件
15Oガス脳循環代謝診断 41件

(2) SPECT及びγカメラ

99mTc標識製剤(骨シンチ、心筋シンチ、腎シンチ、肺血流シンチ、胃排泄シンチ) 1634件
123I標識製剤(脳血流シンチ、ドパミントランスポーターシンチ、副腎シンチ) 907件
131I標識製剤(甲状腺シンチ、副腎シンチ) 75件
111In標識製剤(脳槽シンチ、胃排泄シンチ、ソマトスタチン受容体シンチ) 26件
68Ga標識製剤(腫瘍シンチ、炎症シンチ) 183件
81mKr標識製剤(肺換気シンチ) 42件

(3) 核医学治療

90Y標識抗CD20抗体療法 2件
塩化ラジウム(223Ra)治療 51件

5.その他

(1) 臨床研究

  • F-18 FBPA PET によるホウ素中性子捕捉放射線治療(BNCT)の適応評価
  • 健常成人志願者を対象とした123I-Iomazenil SPECT検査の部分容積効果補正用ノーマルデータベースの作成
  • FDG-PET/CTの不明熱診断への応用―ガリウムSPECTとの比較研究
  • 神経障害性疼痛におけるTSPO-PET診断の有用性および関連血液バイオマーカーの検証
  • 塩化ラジウム(Ra-223)の体内分布評価におけるコンプトンカメラの有用性の検証
  • 多発性硬化症等神経炎症性疾患における11Cacetate PETの病態評価の研究

(2) 先進医療

  • 11C標識メチオニンを用いたポジトロン断層撮影による再発の診断(適応:放射線治療後の頭頚部腫瘍若しくは転移性脳腫瘍)が現在進行中。
  • 11C標識メチオニンを用いたポジトロン断層撮影による診断(適応:初発の神経膠腫が疑われるもの)が現在進行中。
  • 「FDG-PET/CTの不明熱診断への応用」が2019年3月にて終了。

(3) 治験

医師主導治験:
心不全治療に関するNH3PET検査が進行中。
企業治験:
アミロイドPETを用いた医薬品評価に関する4つの治験、前立腺癌を対象とした新規SPECT製剤の治験1件、新規PET製剤を用いたマイクロドーズ試験1件を実施。

(4) 諸学会の認定施設、専門医数

日本核医学会専門医教育病院 日本核医学会専門医 7名
日本医学放射線学会診断専門医 8名
日本内科学会認定内科医 1名
PET核医学認定医 7名
アジア核医学会専門医 3名
第一種放射線取扱主任者 8名