以下の図は、左から右にかけてスポーツ外傷・障害を引き起こすリスク因子のつながりを示しています。
以下で紹介する研究2〜5を包括する概念です。小笠原グループでは、このリスク構造モデルに則りスポーツのケガの研究を進めています。
特に、数値化が難しい心理・認知領域(左側)と、数理的に表現しやすいバイオメカニクス領域とを連結して理解することで、心理的、認知的、バイオメカニクス的に実効性のあるスポーツ外傷・障害の予防法の確立を目指しています。
運動方程式に基づく人体の数理モデルの理論解析と、モーションキャプチャシステムで計測した動作データを併用し、スポーツ外傷・障害につながる運動学的、動力学的機序(動作の特徴)や、どんな動作が安全なのかを調べています。
「かかとを使った急ブレーキは前十字靭帯損傷の危険動作である」という知見もこれらの研究から明らかになりました。
アスリートのダイナミックな姿勢安定を評価するテストとして片脚ドロップ着地テスト(Single-legged drop landing test)に長年取り組んできました。着地時に床反力センサで計測される着地衝撃や姿勢動揺データ(床反力や足圧中心の時間信号)を深層学習等で解析し、将来の膝前十字靭帯損傷リスクの予測、危険姿勢の同定、足関節捻挫からの回復程度の評価等に活用する研究をしています。
ヒトは、どのような価値に基づき運動の意思決定をしているのか?
時にヒトは、身体の安全を犠牲にしてまで何らかの報酬を求めてリスクを犯すのか?
このような心と体が関わる謎について、プリミティブな腕到達課題や、全身を使った粗大運動での心理物理実験を用いて調べています。上記のリスク構造モデルの心理・認知領域とバイオメカニクス領域の接続点となるポイントとして精力的に取り組んでいます。
どのような心理的特徴がスポーツ外傷・障害と関わるのかを、スポーツ心理学のセオリーに基づき探索しています。大規模ウェブサーベイや半構造化インタビューといった調査手法、定量・質的データを統合して解析するMixed Methods Approachを駆使して研究しています。日本人アスリート特有の欧米データとは異なる心理的特徴も観察されており、今後は、文化背景を考慮したスポーツ外傷予測・予防が重要となると予想しています。