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新・内科専門医制度の概要(2018年1月23日版)

本記事は、専門医機構や学会から公開されている情報に基づいてまとめています(2018年1月23日)。最新情報はそれぞれのホームページなどで確認してください。2018年4月より、新たな専門医の制度が開始となります。これまでは学会ごとに基準を設けて認定していた専門医を、日本専門医機構が第三者機関としてレベルの標準化をはかり、国民に向けてわかりやすい指標にするというのが基本的な方針となります。

1.2018年度専攻医の登録スケジュール

新専門医制度の一期生は、主に2016年4月から臨床研修を開始している学年になります。専門医を目指す専攻医のプログラム登録スケジュールは内科学会(http://www.naika.or.jp/nintei/shinseido2018-2/schedule/)や専門医機構のホームページ(http://www.japan-senmon-i.jp/program/application_flow.html)に公開されていますが(図1)、2017年10月10日から11月15日までが一次登録期間で12月15日に採否結果通知、さらに12月16日から2018年1月15日までが二次登録期間で2月15日に採否結果通知となっています。次の学年(二期生)では、プログラム登録スケジュールはもう4か月ほど前倒しになるといわれています。

一次、二次登録を合わせた結果として、内科領域は全国で2,658名の先生が専攻医として登録されたとのことです。この人数については、これまでの単年の内科学会入会者数、卒後4,5年目での認定内科医受験者数、全国の研修医1学年のおおよそ3分の1という観点から、ほぼ例年通りという解釈があります。

2.研修医の先生に向けてのメッセージ

今後、専門医特に内科専門医を目指す研修医の先生に向けては、図2に示す内容を強調しておきたいと思います。学会や機構からの公式な情報はweb上で公開されることがほとんどですので、こまめに確認していただくのが良いと思います。内科学会のホームページでは、研修医の先生からよく寄せられる質問とその回答も公開しています。専門研修プログラムも全てweb上で公開されていますので、教育体制や症例数を参考にしてプログラムを選択するのが良いと思います。Japanese Medical Emergency Care Course (JMECC:ジェイメック)とは内科学会の救命蘇生講習で、内科専門医取得のためには必ず受講が必要です。これを確実に受講できる体制ができているかどうかも、プログラム選びの重要なポイントになると思います。また希望する専門研修プログラムがある場合には、登録期間より前でも積極的に連絡をとることをおすすめします。地域によっては、大学の医局との相談も有効でしょう。

3.医師としてのキャリアパスの例

内科に限らず、医師としてのキャリアパスには状況に応じて様々なものが考えられますが、あくまで一例を図3に示します。国家試験合格後の最初の2年は臨床研修、その後専門研修に進む形となろうかと思います。サブスペシャルティ領域学会専門医については、基本領域研修と連動させることにより、卒後7年目に取得するパターンや卒後8年目に取得するパターンが想定されますので、矢印を二股にして表しています。

いわゆるメジャーと呼ばれる、内科と外科の専門医制度は二段階制になっています。1階部分、2階部分という言い方もあります。イメージとしては図4に示すように、基本領域学会専門医を取得後にサブスペシャルティ領域学会専門医を取得するという形になります。内科系では、多くの場合、サブスペシャルティ領域の研修の一部を基本領域の専門医研修時期にも行います(後述)。

4.基本領域専門医とサブスペシャルティ専門医

内科領域に関しては、基本領域として内科の専門研修を行い、その後にサブスペシャルティ研修を行うコースが基本となりますが、プログラムによっては、こちらの図5に示すように、サブスペシャルティ重点コースや混合コースを用意しているプログラムもあります。

5.専門医制度整備指針

新しい専門医制度については、全ての領域において、専門医機構が制定した整備指針に準拠する形でプログラムが形成されています。整備指針は、いわば専門医制度の「憲法」のようなものです。この整備指針はwebで確認することができますが、基本理念とポイントをそれぞれ図6、図7に示します。この中では、基本領域学会専門医の研修はプログラムを組んだ研修施設群で行う、すなわち複数の施設で研修を行わなければならないという点、都市部(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)では定員を別途定めるという点、妊娠・出産・育児等(介護も想定されます)で研修が困難な場合には、6か月までであれば研修期間の延長なく中断が可能である点が重要と思います。

6.新・内科専門医制度のポイント

ここからは内科専門医について詳細に述べます。新・内科専門医制度のポイントは図8に示すとおりです。内科専門研修は「基幹施設」と「連携施設」の両方で行う必要がありますが、基幹施設での研修期間は1年以上が望ましいとされています。プログラム体制のイメージを図9に示します。

そして、内科専門研修を修了する条件を図10に示します。内科全般にわたる160症例以上、目標は200症例を経験し、指導医の評価・承認を受ける必要があります。内科全般というのは図11に示す70疾患群の領域のうち、56疾患群以上を経験することを意味します。ただしこれらの領域の診療を卒後3年目から1つずつ経験していくことは難しい場合も予想されますので、経験症例をさかのぼって登録する、すなわち遡及登録制度もあります。図12に示す条件をみたす場合には、初期臨床研修中の症例でも取り込むことが可能です。その他、内科専門研修の修了条件としては、病歴要約の承認(オンラインで他の施設の指導医に匿名で査読を受ける形になります)、病理解剖とCPC、JMECC、教育・学術活動、講習会の受講、360度評価が定められています。

これらの経験症例や専攻医の評価を登録するシステムが、J-OSLER(図13)です。専門研修の進捗状況の管理にも有用なシステムです。J-OSLERに登録された研修実績は研修を中断した際、あるいは変更の際にもプログラム責任者の了解が得られればそのまま利用できます。

7.JMECCについて

また、内科専門研修プログラムの中で、重要なポイントがJMECCと考えられます(図14)。JMECCとは、シミュレーターを使用して、急変兆候のある患者、あるいは急変後の患者に対しての標準化された初期対応を学ぶ、約9時間のコースです。JMECCでは、資格を持ったインストラクター、ディレクターに指導を受けないといけません。JMECCの開催実績、開催予定、受講者を公募しているかどうかなど、これもwebで確認することをおすすめします。

8.現行制度と新制度の相違・移行

最後に、現在卒後3年目以上、2015年4月までに医師免許証を取得されている先生はどうなるか、ということを図15に示します。現行の認定内科医試験、総合内科専門医試験は2020年までは確実に実施されますが、2021年以降に実施されるかはまだ発表がなされていません。既に総合内科専門医を取得している先生は、全員、新・内科専門医に移行されます。認定内科医という資格がなくなるわけではありませんが、認定内科医から新・内科専門医へ移行される予定はありませんので、現状で条件を満たしており新・内科専門医への移行を希望する場合には、早めに総合内科専門医を取得しておくことをおすすめします。

(文責:老年・総合内科学 赤坂 憲)

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