感染症免疫検査部門 <感染免疫検査室>

感染免疫検査室とは?

人間の体には、もともと体内には存在しない異物(細菌、ウイルス、毒物など)が侵入してくると、それらの異物から体を守るために抗体という物質を作る働きがあります。抗体は侵入物の一部(抗原)と結びつくことができ、その結びつきは選択的で、「鍵と錠」の関係にたとえられています。この現象を抗原抗体反応(免疫反応)と呼び、これらの現象を利用した検査が免疫学的検査です。
感染免疫検査室では、主に血液(血清・血漿)を試料として、免疫学的測定法を用いて検査を行っています。これらの検査は、主に患者さんの感染症の診断や治療効果の判定を目的に行われていますが、この他にも臓器移植患者や臓器提供者のスクリーニング、手術前のスクリーニングにも実施されます。
また、感染制御部や輸血部,事務部などの他部署との連携業務として、輸血前後の感染症の確認、アウトブレイク(感染症集団発生)対策や体液曝露事例(針刺し切創事故時)における感受性者の選別、感染症検診やワクチン接種後の抗体獲得確認など多岐にわたります。

測定項目

感染症関連項目

A型肝炎ウイルス(HAV)関連検査:HAV-IgM型抗体
B型肝炎ウイルス(HBV)関連検査:HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗体、HBc抗体、HBc-IgM型抗体、HBV-DNA
C型肝炎ウイルス(HCV)関連検査:HCV抗体、HCVコア抗原、HCV-RNA
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連検査:HIVスクリーニング、HIV-Ⅰ抗体WB(確認検査)、HIV-Ⅱ抗体WB(確認検査)、HIV-ⅠRNA
成人T細胞白血病ウイルス(HTLV)関連検査:HTLV抗体、HTLV-Ⅰ抗体WB(確認検査)
梅毒関連検査:梅毒RPR(定性)、梅毒RPR(定量)、梅毒TP抗体(定性)、梅毒TP抗体(定量)
トキソプラズマ関連検査:トキソプラズマIgM型抗体、トキソプラズマIgG型抗体
マイコプラズマ関連検査:マイコプラズマ抗体
風疹関連検査:風疹IgM型抗体、風疹IgG型抗体

自己免疫関連項目

抗核抗体定性、抗核抗体価定量、抗核抗体染色パターン

その他の項目

KL-6、可溶性IL-2受容体、プロカルシトニン

アウトブレイク対策関連感染症検査(流行性ウイルス感染症検査)

麻疹IgG型抗体、風疹IgG型抗体、ムンプスIgG型抗体、水痘IgG型抗体

体液曝露関連感染症検査(定性、判定値のみ)

HBs抗原、HBs抗体、HCV抗体、HIVスクリーニング、HTLV抗体、梅毒RPR抗体、尿中hCG

代表的な検査項目の説明

B型肝炎ウイルス(HBV)関連検査

HBs抗原検査:陽性はHBVの現在の感染を意味します。また、測定値(数値)はその数値が高いほど血中のHBVが多く存在する傾向にあります。
HBs抗体検査:陽性はHBs抗体の保有を意味します。また、測定値(数値)はその数値が高いほど多くのHBs抗体を保有し、HBV感染防御能が高いと考えられています。この検査はワクチン接種効果の判定にも用いられます。
HBe抗原検査:陽性はHBVの増殖が活発であることを意味します。
HBe抗体検査:陽性はHBVの増殖が低下したことを意味します。
HBc抗体検査:陽性はHBVの現在あるいは過去の感染を意味します。
HBc-IgM型抗体検査:陽性はHBVの初感染か急性増悪を意味します。
HBV-DNA検査:測定値の上昇はHBVの増殖が活発であることを、下降は増殖が低下しているか臨床的治癒を意味します。

C型肝炎ウイルス(HCV)関連検査

HCV抗体検査:陽性はHCVの現在あるいは過去の感染を意味します。また、測定値(数値)は、血中ウイルスの存在の有無をある程度予測することはできても確認することはできません。
HCVコア抗原検査:測定値の上昇はHCVの増殖が活発であることを、下降は増殖が低下していることを意味します。
HCV-RNA検査:測定値の上昇はHCVの増殖が活発であることを、下降は増殖が低下していることを意味します。なお、HCVコア抗原検査より高感度です。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連検査

HIVスクリーニング検査:陽性はHIVの現在の感染の可能性を意味しますが、この検査結果のみで「HIV陽性」と診断することは出来ません。陰性は現在の感染を否定することができますが、感染が強く疑われる場合は、採血時期を遅らせて再検査をする必要があります。
HIV-Ⅰ抗体WB(確認検査)、HIV-Ⅱ抗体WB(確認検査):陽性はHIV抗体陽性(HIV感染者)を意味します。保留はRNA検査を実施するか、1ヶ月程度の期間をあけて再検査をする必要があります。
HIV-ⅠRNA検査:陽性はHIV感染を意味します。陰性は非感染と考えられますが、ウイルス量が極めて少ない症例も存在するので、必ずHIV抗体検査結果とあわせて総合的に判断する必要があります。

梅毒関連検査

梅毒RPR検査:陽性は現在あるいは過去の感染を意味します。また、抗体価(定量検査)の上昇はTPの活動性、低下はTPの非活動性を意味します。この検査は、感染後の陽性化は早いのですが、偽陽性が多いため、診断の際にはTP抗体検査も実施し総合的な判断が必要です。
梅毒TP(Treponema pallidum)抗体検査:陽性は現在あるいは過去の感染を意味します。抗体価(定量検査)の上昇はTPの活動性、低下はTPの非活動性を意味します。この検査は、偽陽性は少ないのですが、感染後の陽性化は遅いため、診断の際には梅毒脂質抗体検査も実施し総合的な判断が必要です。

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