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Clinical Journal Club 3. Propensity Score

   Randomized Controlled Trial (RCT)では、介入群と非介入群の背景因子が全く同じなので、介入の影響を評価する事が可能です。一方、観察研究では介入群と非介入群の背景因子が異なるため、介入の影響を評価する事が困難です。観察研究における介入群と非介入群の背景因子のバランスを調整するためにpropensity scoreを使用する事で、観察研究においてもRCTと同様に、介入の影響を評価する事が可能になると考えられています。

   まずは、Propensity scoreを用いた研究の金字塔ともいえるSUPPORT研究(JAMA 276: 889-897, 1996)をじっくり読み込みましょう。本研究のresearch questionは、「ICU入室患者にSwan-Gnazカテーテル(Right Heart Catheriztion: RHC)を行った方が生命予後は良いのか?」です。

   Propensity scoreを用いて介入群と非介入群の背景因子を調整するためには、通常は多重ロジスティック回帰モデルを用いて、年齢、性別、人種等の背景因子からそれぞれの患者個人が介入される確率(0.0〜1.0)を計算します。この確率こそが、propensity scoreです。

   Propensity scoreを使用するにあたって重要な事は、介入群と非介入群のpropensity scoreに適度な重なりがなければ適切なモデルを作成する事ができないという事です。Propensity scoreの重なりが少なければ、介入群と非介入群の背景因子を調整する事が困難となります。

   Propensity scoreの具体的な使い方としては、(1)matching、(2)regression adjustment/stratification、(3)weightingに大別されますが、(3)はあまり一般的はありません。

   Propensity scoreを使用するにあたり、注意すべき代表的なポイントは下記の通りです。

(1)アウトカム達成症例数/独立変数≧8の場合、propensity scoreによる補正はバイアスを生じる可能性が高くなります。

(2)複数の治療介入(自由度≧2)の評価が不可能ではありませんが、その妥当性は未だ検証されておらず、一般的ではありません。

(3)観測された変数に関してのみ、介入群と非介入群の背景因子のバランスを調整する事が可能です。

(4)Case-control研究では使用できません。

   観察研究ならpropensity scoreが使用できるというものではありません。その利点と限界をよく理解し、その適応の是非を十分に検討した上で、適切に使いましょう。