Clinical Journal Club 8. Meta-analysis (メタアナリシス) 1
Reviewの分類
Reviewには、大きく3つの段階があります。(1) Narrative Review、(2) Systematic Review、(3) Meta-analysis (メタアナリシス)です。
Meta-analysis (メタアナリシス)の位置付け
(1) Narrative Reviewは、「偉い先生の御意見」です。文献検索方法も不十分で、 「都合の悪い」エビデンスは無視されているかも(Biasが入っているかも?)しれません。(2) Systematic Reviewは、文献検索方法の記載が有り(例: Medline + Cochrane + EMBASE + ,,,)、「都合の悪い」エビデンスも評価しています。(3) Meta-analysis (メタアナリシス)は、統計的手法を用いて、データを量的に統合するものです。
Narrative review、Systematic review、Meta-analysis (メタアナリシス)の違い
Reviewの種類 | 主観的 客観的 |
文献検索ソフト 再現性 |
質的 量的 | 統計的手法 |
Narrative | 主観的 (偉い先生の意見) |
無し | 質的 (Qualitative) |
無し |
Systematic | 客観的 | 有り | 無し or 有り |
|
Meta-analysis メタアナリシス |
量的 (Quantitative) |
必ず有り |
Systematic reviewとMeta-analysis (メタアナリシス)は下記のように定義されています。したがって、Meta-analysis (メタアナリシス)は、systematic reviewの一部です。
Systematic review: A review of a clearly formulated question that uses systematic and explicit methods to identify, select and critically appraise relevant research. Statistical methods (meta-analysis) may or may not be used.
Meta-analysis: The use of statistical techniques in a systematic review to integrate the results of included studies.
http://www.cochrane.org/cochrane/glossary.htm#PS
Meta-analysis (メタアナリシス)の歴史
医学領域でのMeta-analysis (メタアナリシス)は、1904年の戦時中、腸チフスに対するワクチンの効果を検討したのに端を発します(残念ながら、腸チフスワクチンは無効でした)。その頃から、データを統合することの必要性・方法論が検討され始めるようになり、1976年にMeta-analysis (メタアナリシス)という言葉が初めて提唱されました。1992年には、Cumulative meta-analysis(累積メタアナリシス)という手法も提唱され、同年、コクラン共同計画がスタートしました。
Meta-analysis (メタアナリシス)の歴史
1904 | Karl Pearson | 初めてのメタ (腸チフスに対するワクチンの効果を検討) |
1931 | Tippet | The Methods of Statisticsに記載 |
1932 | Fisher | Statitical Methods for Research Workersに記載 |
1955 | Beecher | 痛みに対するPlaceboの効果を評価 (35.2%有効) |
1976 | Glass (心理学者) | Meta-analysis (メタアナリシス)という名称を提案 |
1985 | Richard Peto | β-blockerの二次予防効果 |
1992 | Joseph Lau | Cumulative meta-analysisを提唱 |
1992 | Cochrane | コクラン共同研究発足 |
丹後俊郎 医学統計学シリーズ2 メタ・アナリシス入門 朝倉書店 2002年
Forrest plotとCumulative meta-analysis
Meta-analysis (メタアナリシス)の例として、急性心筋梗塞後の患者を対象にStreptokinase(血栓溶解療法)の有効性を評価した、Lauらの報告を示します。
Lau J, et al. NEJM 327; 248-254, 1992
左図は、各々の研究結果を年代順に記載し、最後に「Combined odds ratio (統合オッズ比)」を計算するForrest Plot(木のように見えることから、このように呼ばれます)です。それに対して右図は、順次Combined Odds ratio(複合オッズ比)を計算していく方法で、Cumulative meta-analysis(累積メタアナリシス)と呼ばれます。Cumulative meta-analysisを行う利点は、いつ頃からその治療法の有効性が確立してきたかが、分かる事です。1980年代にも、Streptokinase(血栓溶解療法)の有効性を検討するRCTが多数行われましたが、実際には1970年代には既に、有効であろうことが分かっていたのです。今になって思うと、1980年代の多数のRCTは、この治療法の有効性の確認、Odds ratioの確認以上の意味は無かったことが分かりますね。莫大なお金をかけてRCTを行う前に、Cumulative meta-analysisを行っていれば、いくつかは省略出来たのかも知れません。
Meta-analysis (メタアナリシス)の長所
Sample sizeが小さく、単一の研究では有意差を検出できない場合でも、複数束ねることで、有意差を検出できることがあります。
例えば、Cochran共同研究のロゴマークは、新生児RDS (respiratory distress syndrome) の呼吸不全死亡に対するステロイド投与の予防効果を示しています(左に行くほど、ステロイドの予防効果を示します)。単一の研究ではPower不足で証明し切れなかった有効性が、統合されることで証明された素晴らしい研究です。
Meta-analysis (メタアナリシス)の短所
解析対象とするStudyの選択が難しく、また同じデザインの試験でも、対象患者が異なれば(年齢などが異なれば)、Meta-analysis (メタアナリシス)の結果が異なる場合もあります(Selection Bias)。Meta-analysis (メタアナリシス)では、Publication Bias(出版バイアス又は、公表バイアスと呼ばれます)にも注意が必要です。
効果が期待される薬剤に有利な傾向が得られた場合には、有意差が無くとも報告されますが、逆に、若干不利な傾向が見られた場合(特にサンプルサイズが小さいと)、本当にNegative Studyなのか分からず、公表されないことが往々にして起こります(「引き出しに仕舞ったままの状態」にされるので、Publication Biasは別名「File-drawer problem」とも呼ばれます)。
"Negative Studyは公表されにくい"為、出版されたStudy結果のみを統合すると、"治療有効"と評価されてしまうことが起こり得るのです。このような過ちを犯さない為には、Funnel Plot(ふぁねる ぷろっと)をCheckしましょう。
Funnelとは、"じょうご"とか"汽船の煙突"という意味です。横軸にEffect size、縦軸にSample sizeをとり、Studyをプロットすると、(Publication Biasが無ければ、)赤線のように、三角の山状(じょうご様)になることから名付けられました。Funnel plotの対称性を検定(詳細は成書参照)することで、Publication Biasの有無が判断されます(この時の有意水準は、集められるStudy数がせいぜい10〜20個に限られる為、P < 0.05ではなく、P < 0.1と緩めに設定されます)。大雑把には、見た目と一致しますので、綺麗な二等辺三角形をしていれば、Publication Biasは無さそうだと判断してOKです。
他にもFunnel Plotの非対称性を生じる理由はさまざま有り、Meta-analysis (メタアナリシス)を評価する際には、注意しましょう。
- Selection bias
- Publication bias
- Location biases
- English language bias
- Citation bias
- Multiple publication bias
- True heterogeneity
- Size of effect differs according to study size
- Intensity of intervention
- Differences in underlying risk
- Date irregularities
- Inadequate analysis
- Fraud
- Artifactual
- Choice of effect measure
- Chance
Egger, M. et al. BMJ 1997;315:629-634