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山下俊英: 神経炎症と神経・免疫クロストーク—神経炎症と神経再生をつなぐ分子—、感染・炎症・免疫、羊土社 44: , 2015
多発性硬化症 (multiple sclerosis : MS)は, 中枢神経系の炎症性脱髄疾患である. 病変は大脳・視神経・脊髄などに広範囲に分布し, 多彩な神経症状を呈する. 発症当初から慢性進行性の経過を辿る一次進行型MSと再発・寛解を繰り返す再発寛解型MSがある. 再発寛解型MSであっても, 年月を経て, 徐々に神経機能障害からの回復が困難な二次進行型MSへと移行していく. MSの再発は炎症により誘導されるが, 二次進行型MSにみられるような神経症状の増悪は, 神経回路の不可逆的な変性のためであると考えられている1). 現在MSに対して使われている薬剤は, MSの再発や炎症を抑制することを目的としている. これらの薬剤は神経変性を抑制する効果も部分的に期待できるが, ひとたび二次進行型MSへ移行すると, 治療は困難となるのが現状である. このことは, 神経変性が炎症で誘導されるだけではなくて, 炎症とは無関係のメカニズムで進行するという一面もあることを示唆している. したがってMSの治療としては, @炎症の制御, そしてA変性した神経細胞とその軸索, さらに髄鞘(ミエリン)の再生を目指すという2つの柱が重要となる. しかしながら後者の効果をもつ薬剤は, いまだ上市されていない. 本総説では, 「ミエリン関連阻害因子」あるいは「軸索再生阻害因子」と呼ばれる分子群について紹介する. これらは, 特に後者のメカニズム, そして一部の因子は両者のメカニズムに関わり, MSに対する分子標的として魅力的な機能を備えている......

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