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高血圧・老化研究室 Section of Hypertension & Aging Research

老年循環器グループ

1. ACE2-Angiotensin 1-7系活性化が各種病態形成に及ぼす影響の検討

レニン-アンジオテンシン系は生体における血圧維持に関わる重要なシステムであるが、反面、高血圧やそれに伴う合併症を促進することで知られ、現在、高血圧治療における最も重要なターゲットになっている。レニンーアンジオテンシン(RA)系はアンジオテンシンII(AII)が細胞表面にある受容体のAT1に結合することにより活性化されるが、近年RA系の活性化を抑制するACE2-アンジオテンシン1-7(A1-7)-mas軸が注目されている。生体内にAIIより一つペプチドが少ないA1-7が存在しAIIに拮抗する作用を有することは1990年代から報告されていたが、その産生メカニズムやA1-7の受容体は同定されていなかった。2000年にAIIをA1-7に分解する酵素としてACE2が同定され、2003年に癌原遺伝子と考えられていたmasがA1-7の受容体であると報告されて以降、ACE2-A1-7-mas軸はRA系の抑制系として注目され多くの検討が行われてきた。

我々はACE2欠損マウスが開発された当初から同マウスを用いて検討を行ってきた。
これまでにACE2欠損マウスが自然経過では心収縮力の低下を認めず、圧負荷時にのみ著明な心不全をきたすことを見出した(Yamamoto K et al. Hypertension. Apr 2006;47(4):718-726)。

またレニン-アンジオテンシン系が形成機序に大きく関わる糖尿病性腎症におけるACE2の機能にも着目し、ACE2欠損マウスに糖尿病を誘導したところ腎症の悪化が加速されることを見出した(Hypertens Res. 2010 Apr;33(4):298-307.)。

最近ではACE2の欠損がマウスのインスリン感受性を増悪させ、高カロリー食下での耐糖能異常を悪化させることを見出した(Diabetes. 2013 Jan;62(1):223-33.)。

同研究において、我々は骨格筋の転写因子であるMyocyte enhancer factor(MEF)2 発現がA1-7により制御されておりACE2欠損がMEF2発現を著明に減少させることを示した。MEF2は骨格筋分化に重要な役割を果たすことから我々はACE2やA1-7が骨格筋機能に影響を与えることを想起し検討を開始している。
これまでにACE2欠損マウスが野生型マウスよりも加齢による筋力の低下が著しいことを見出した。

我々はACE2やA1-7が従来の概念であるAIIへの拮抗作用だけでなく、新しいメカニズムに基づいた骨格筋機能改善作用を有する事を想定している。今後の研究によりその全貌を明らかにし、臨床応用につなげることを目標にしている。

2. 老化促進物質によるAT1活性化のメカニズムと病態生理学的意義の解明

加齢や生活習慣病は血液の中を循環する様々な代謝物質を変性させ老化を促進する物質が産生される(=老化促進物質)。

血管を循環する老化促進物質は血管壁に存在するパターン認識受容体に結合し細胞傷害を引き起こすが、その過程には老化促進物質が細胞傷害性のシグナル伝達を活性化させる経路と受容体により老化促進物質が細胞内に取り込まれる経路の二通りがあるものと考えられる。

しかし、このような老化促進物質の受容体がシグナルを伝達したり、細胞内移行を引き起こしたりする機序は完全には解明されていない。
一方、アンジオテンシンII(AII)1型受容体(AT1)は血管壁に存在し、循環するAIIと結合し細胞傷害を引き起こすものと考えられている(進展刺激によっても活性化されることが報告されている)。

我々はこれまでに研究室で得られた結果から、老化促進物質受容体がシグナル伝達や細胞内移行による細胞傷害を引き起こす過程にAT1活性化が関与するという仮説を立て検討を行っている。

(詳細に関しては後日更新予定)

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