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高血圧・老化研究室 Section of Hypertension & Aging Research

高血圧 / 睡眠呼吸障害グループ

難治性高血圧の検査・治療を行う上で、睡眠呼吸障害が近年注目されています。睡眠呼吸障害の中でも中心的な役割を示す閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、全高血圧患者の30%、薬剤抵抗性高血圧患者の80%に認め(図1)、心筋梗塞や脳卒中などの心血管事故と強い相関関係を認めます。日中の眠気などの自覚症状も強く、近年は交通事故や仕事の能率低下などの社会的な関心事ともなっています。また、成人では加齢とともに増加することも知られています。

図1.循環器疾患における睡眠呼吸障害合併頻度

睡眠からの覚醒による交感神経活性の亢進や、低酸素・高二酸化炭素状態とそこからの急激な回復の繰り返し、酸化ストレスや炎症、胸腔内圧の低下による物理的な刺激などが循環器系に影響を及ぼすと考えられています(図2)。

図2.睡眠呼吸障害の病態生理

睡眠呼吸障害の有病率が加齢とともに増加することが知られていますが、その身体機能や精神機能への影響に関する検討は十分ではありません。以前は抑うつなどへの影響はあっても、認知機能への影響は無いか軽微であると考えられていましたが、近年、それを覆す研究が続けて報告されています。また高齢者では横隔膜や上気道開大筋の筋力低下などにより睡眠呼吸障害が悪化すると考えられていますが、睡眠呼吸障害の筋力への影響はほとんど検討されておらず、介入の必要性や効果を考える上で知見が必要とされています。

また、睡眠呼吸障害に対する代表的な治療として持続陽圧呼吸(CPAP)療法が挙げられますが、患者全員に適用できる治療ではなく、不快感などから継続率が低いという課題があります。高齢者であればさらにハードルが高くなることから、効果的な導入方法や代替え治療が必要と考えられます。

当グループで行っていることを以下に示します。

①コホート研究

睡眠呼吸障害患者の臨床データを継時的に集積し、睡眠呼吸障害が筋力などの身体機能や認知機能などの精神機能に与える影響を、横断的・縦断的に評価する。前向きコホートを行い、血液サンプルや各種エコー、血圧変動データを蓄積している。この知見により、新たな介入方法を探索していく。

②降圧薬の効果検討

睡眠呼吸障害患者への降圧薬による影響を検討する。睡眠呼吸障害患者に特異的に効果があるとコンセンサスが得られている降圧薬は現在のところないが、自律神経系への効果の検討などをもとに新たな知見を得る。

③自動情報送信システム

自動情報送信システムを用いてCPAPのコンプライアンスを改善できるかを評価する。近年、急激に普及してきた血圧やCPAPの自動情報送信システムを用いて継続率の向上が見込めるかを検討する。

④臨床

ポリソムノグラフィーと簡易睡眠モニターを用いて検査・診断を行っています。必要のある患者に対しては入院中か外来でCPAPの導入を行います。週2回、睡眠呼吸障害の専門外来を行っています。睡眠呼吸障害以外の睡眠障害、概日リズム睡眠障害、睡眠関連運動障害、レム睡眠行動異常症やシヌクレイノパチーに関しても、精神科を中心とする睡眠医療センターと合同カンファレンスを行い、治療に取り組んでいます。

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