大阪大学医学部附属病院の生殖医療センター(産婦人科)では、医師、培養士、看護師、臨床心理士、遺伝カウンセラー、事務員などの多職種のスタッフが連携し不妊治療に関する包括的な医療を提供しています。

一般の不妊症・不育症治療や高度生殖補助医療(ART)から、医学的適応による妊孕性温存や着床前診断(PGT-A/SR検査)、生殖外科まで、患者様一人ひとりに適した不妊治療を行なっています。また、乏精子症や無精子症などの男性因子による不妊症が見つかった場合は生殖医療センター(泌尿器科)へご紹介し、連携して治療を行うことも可能です。女性の年齢や卵巣機能、また、妊娠可能かどうかの状態を考慮し、より適切で安全な治療を進め検討します。

当センターで提供している生殖医療技術や検査

  • 一般不妊検査(ホルモン検査、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査、精液検査など)
  • 一般不妊治療(タイミング法、人工授精)
  • 不育症検査(採血検査など)
  • 体外受精・胚移植(IVF-ET) 顕微授精(piezo-ICSI)、タイムラプス培養、膜構造を用いた生理学的精子選択術
  • 慢性子宮内膜炎検査、ERA(子宮内膜着床能)検査、子宮内細菌叢(フローラ)検査
  • 未受精卵(卵子)・卵巣組織凍結保存(妊孕性温存療法):当院は妊孕性温存療法実施医療機関(検体保存機関)認定施設であり、日本がん・生殖医療登録システム(JOFR: Japan Oncofertility Registry)による登録事業に参加しています。
  • 着床前胚異数性診断(PGT-A/SR検査):当院は先進医療B PGT-A検査実施施設として承認されています(2023年4月〜:症例数上限に達し次第、先進医療Bは終了予定となっています)。
  • 流産検体を用いた遺伝子検査 (次世代シーケンサーを用いた流産絨毛・胎児組織染色体検査(POC-NGS)) 先進医療A

生殖医療はそれ自体で完結するものではなく、無事に妊娠された場合は出産されるまでの周産期管理、また、併存疾患をおもちの方の場合は、不妊治療と併存疾患の治療のバランスをとりながら最適な治療を実施する必要があります。当センターでは、様々な疾患を持たれている方にも、総合病院の特性を活かし、他科との集学的治療を行いながら不妊治療や妊孕性温存療法を実施します。併存疾患や高齢など妊娠中のリスクをおもちの方は、妊娠を希望されつつも妊娠後のこともご不安に感じられると思いますが、当院では生殖医療と周産期医療を専門とした医師が、妊娠後の患者さんの経過をイメージしながら不妊治療を実施します。妊娠された場合は、ご希望があれば継続して当院の産科で妊婦健診を実施していただいております。

また、手術治療を含めた外科的治療を要する可能性のある不妊症の原因疾患(子宮形態異常、子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮内膜症、子宮内膜癒着、子宮頚管狭窄など)に対しても、外科的治療の必要性を十分に検討の上、必要があれば当院婦人科と連携して、生殖医療と婦人科を専門とする医師が同時に治療を進めています。がんの治療や他の疾患による早期の卵巣機能不全(早発閉経)が予想される患者様には、医学的適応による妊孕性温存療法に関してカウンセリングを行い、ご希望があれば原疾患の診療科と連携し、治療を実施することも可能です。

以上のような、高度な治療を提供することが大学病院における生殖医療センターの使命の一つであると考えております。加えて、現在の医療では診断・治療できない疾患に対しても、基礎研究や、基礎研究から得られた知見を実臨床に展開するための臨床研究も積極的に実施しています。研究参加にご協力いただく際には外来担当医師よりご説明させていただいております。

診療実績

2022年度 診療実績・成績

妊娠成績ART妊娠率(胚移植数あたり): 42.9%
当院治療により妊娠卒業された方の主な合併症
悪性腫瘍乳癌治療後、子宮体癌MPA治療後
白血病治療後、脳腫瘍術後
子宮頸癌(Radical Tracherectomy後)
卵巣腫瘍(境界悪性腫瘍術後など)
血液疾患特発性血小板減少症(ITP)
抗リン脂質抗体症候群、ATⅢ欠損症
本態性血小板血症
自己免疫性疾患SLE、シェーグレン症候群
関節リウマチ、皮膚筋炎
内分泌代謝疾患糖尿病、糖原病Ⅰ型、甲状腺疾患
原発性アルドステロン症
婦人科疾患双角子宮、帝王切開術後瘢痕症候群
不育症 (ProteinS低下)、子宮内膜症、巨大子宮筋腫
男性因子無精子症、精索静脈瘤など
AMHと採卵時 平均回収卵子数
AMH(ng/mL)回収卵子数(個)
-0.51.5
0.5-15.8
1-210.7
2-311.3
3-418.8

2022年度 承認された先進医療

  • 次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査(2022/12~)
  • 着床前胚異数性検査(2023/4~)

2022年度 妊孕性温存治療に関する相談・治療

| 性別の内訳
| 原疾患の内訳
代表的な原疾患
血液腫瘍白血病、ホジキンリンパ腫
乳腺腫瘍乳がん
骨軟部腫瘍骨肉腫、Ewing肉腫
脳腫瘍髄芽腫 神経芽種 胚細胞性腫瘍
泌尿器腫瘍セミノーマ、胚細胞性腫瘍
消化器腫瘍:直腸癌、大腸癌
卵巣腫瘍境界悪性/悪性 卵巣腫瘍
子宮体癌MPA治療
自己免疫性疾患全身性エリテマトーデス(SLE)
皮膚筋炎 など
妊孕性温存療法の実施者の割合
妊孕性温存療法 実施/待機中72.5%
カウンセリングのみ27.5%

※妊孕性温存療法:「受精卵凍結」「未受精卵凍結」「卵巣凍結」「精子凍結」

医学的適応症例に対する卵巣凍結 (2022年) : 4症例

年齢:10-30歳 原疾患:Tリンパ芽球性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、髄芽腫
卵巣凍結時に 卵子回収 / IVM を実施 (IVMにより成熟した卵 : 37.9%)

尚、料金や治療方針に関するお問い合わせは電話ではお受けしかねます。予めご了承ください。

外来の詳細

外来日毎週月・金曜日、09:00~10:00 / 13:00~15:00、火・水・木曜日、09:00~10:00
担当医月曜日: 三宅達也、岡田愛子
火曜日: 伴田美佳、瀧内剛
水曜日: 三宅達也、岡田愛子
木曜日: 伴田美佳、三宅達也
金曜日: 瀧内剛、伴田美佳、河野まひる

※産科婦人科外来で対応いたします。できるだけ患者包括サポートセンターを通じての予約をお願いします。

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