血液検査部門 <止血検査室>

止血検査室とは?

止血とは、酸素や養分といった人体に必要なものを体のすみずみまで運ぶ血液をなるべく失わないようにする仕組みです。血管が傷ついて血管外に血液が流れ出すと、血液中の血小板や凝固因子が働いて血栓というフタのようなものを作り、出血を防ぎます。血栓を作る働きを凝固と言いますが、この機能が働きすぎると作られた血栓で血管がふさがれて血液がうまく流れなくなってしまうため、ある程度凝固が進むと止血機構を抑制したり、作られた血栓を溶かしたりする線溶という機能が働くようになります。
止血機構は、凝固と線溶という全く方向性の異なった2つの機能がうまくバランスをとって働くことで成り立っています。どちらかにバランスが傾いてしまうと出血がなかなか止まらなくなったり、血栓が詰まったりと不都合が生じます。止血検査室では採血された血液の凝固機能や線溶機能を測定し、患者さんの止血機構のバランスの様子を検査しています。

止血のメカニズム

血管内に不必要な血栓が作られないように、通常血管壁の内皮細胞は血栓が作られにくい方向(抗血栓性)に働いて凝固機能を制御しています。しかし、血管が損傷を受けると血管壁の細胞は血栓が作られやすい方向(向血栓性)に変わるため、抗血栓性の制御が解けて凝固が始まります。まず血管の損傷部位に血小板が集まり、血球の流出が止まります(一次止血)。続いて凝固因子という血液中を循環している十数種類のタンパク質が順序よく働いてフィブリンという網のようなものが作られます。このフィブリンが赤血球を絡め込んでしっかりとした血栓をつくることで液体成分の流出も止まります(二次止血)。血管修復に伴い、余分になった血栓を溶かして元通り血液が滞りなく流れるように働くのが線溶機能です。

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測定項目

止血通常検査

PT、APTT、フィブリノーゲン、Dダイマー、FDP、ヘパプラスチンテスト、FMテスト、TAT、
アンチトロンビンⅢ、プラスミノーゲン、アンチプラスミン、プロテインC、抗カルジオリピン-β2GPI抗体、
血中トロンボモジュリン、ループスアンチコアグラント

止血特殊検査

血小板機能検査(凝集能,粘着率)、全血凝固時間、血餅収縮能、凝固因子活性(第Ⅱ, Ⅴ, Ⅶ, Ⅷ, Ⅸ, Ⅹ,
Ⅺ, Ⅻ, ⅩⅢ因子)、第Ⅷ因子インヒビター、第Ⅸ因子インヒビター

代表的な検査項目の説明

PT(プロトロンビン時間)

血液の凝固には凝固因子と言われる主に肝由来のタンパク質が順序よく働いてフィブリンをつくることが不可欠ですので、たった一つの凝固因子の欠損や活性の低下が原因で、凝固機能はうまく働かなくなります。
凝固因子は外因系、内因系、共通系に分類されますが、外因系は反応が速く内因系はゆっくりしています。
PTはこのうちの外因系と共通系の凝固機能の異常を検出する検査です。
ワーファリンなどの経口抗凝固剤投与のコントロールや肝機能(反応に必要な凝固因子の大多数が肝由来であるため肝機能を反映)の重要な指標として最もよく測定される項目です。

APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)

APTTは内因系と共通系の凝固機能の異常を検出する検査です。
血友病や阻害物質の存在により、凝固に要する時間が延長します。

フィブリノーゲン

フィブリノーゲンは血小板凝集による一次止血にも、フィブリン網形成による二次止血にも利用される重要な成分であり、その減少は重篤な出血傾向をきたすことになります。 また、炎症や悪性腫瘍で増加する急性相反応物質でもあります。

Dダイマー、FDP(フィブリン/フィブリノーゲン分解産物)

フィブリンが線溶によって分解されるとDダイマーやFDPと呼ばれる分解産物が生じます。
これらを検出することで、凝固機能が亢進してフィブリンがつくられたことや線溶が起こったこと、それらの程度が分かります。

凝固因子活性、インヒビター

凝固因子の異常は出血を引き起こす可能性があります。
当検査室では凝固因子の活性や、凝固因子を阻害するインヒビターの活性を測定しています。

測定機器

当検査室では5機種、計7台の自動分析装置を使用して検査を実施しています。

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