臨床化学検査部門 <免疫化学検査室>

免疫化学検査室とは?

免疫化学検査室では、主に血中薬物濃度測定や血清蛋白の検査を行っており、そのほかに糖尿病や慢性関節リウマチに関する検査なども行っています。
血中薬物濃度測定はすべての薬剤に対して行うものではなく、血中治療域濃度と中毒域濃度が近接している薬剤、過剰投与による副作用が重篤である薬剤、投与量に対して血中濃度のバラツキが大きい薬剤などが対象となります。血中薬物濃度測定により、個々の患者さんの薬剤の効果および副作用を的確に把握し、適正な薬物療法を可能とします。
ヒト血清中には100種類以上の蛋白質が存在しています。これらの蛋白質は、膠質浸透圧の維持や微量物質の運搬、生体防御など多くの役割を担っています。血清蛋白の検査を行うことで、患者さんの健康・栄養状態や特定の成分が増減する疾患を把握することができます。

測定項目

血中薬物濃度測定

免疫抑制薬:タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス
抗生物質:バンコマイシン、テイコプラニン、トブラマイシン
抗てんかん薬:フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、バルプロ酸
強心薬:ジゴキシン
気管支拡張薬:テオフィリン
抗躁薬:リチウム
核酸合成阻害薬:メトトレキサート

血清蛋白の検査

血清蛋白分画、トランスフェリン、セルロプラスミン、プレアルブミン、レチノール結合蛋白、シスタチンC、補体成分(C3,C4)、ハプトグロビン、免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM)、血清アミロイド蛋白、β2マイクログロブリン、エラスターゼ1

その他の検査項目

糖尿病関連: HbA1c、静脈血ケトン体分画
慢性関節リウマチ関連:リウマチ因子、マトリックスメタロプロティナーゼ-3、血清補体価
その他:動脈血ケトン体分画比、血清銅、血清亜鉛、ICG負荷試験

代表的な検査項目の説明

免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス)

当院は心・心肺・肺・肝・膵・腎の全ての脳死臓器移植の保険施設として認定され、臓器移植が保険診療適応、又は、先進医療として認可されています。それに伴い、臓器移植後の拒絶反応の予防と治療のために免疫抑制療法が多数施行されています。免疫抑制剤は、その投与量の調節が難しく、薬剤の影響を受けて免疫能が過剰に亢進あるいは減弱すると、拒絶あるいは感染症を発症するリスクが高まります。免疫抑制剤であるタクロリムス、シクロスポリン、エベロリムスを院内で測定することにより、臓器移植を施行された患者さんのリスクをいち早く予測し、投薬の量やタイミングを最適化することが可能となりました。

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血清蛋白分画

血清蛋白分画とは蛋白の構成比から様々な病態の把握を行う基本的な検査です。
血清蛋白は単一の成分であるアルブミンとそれ以外のグロブリンと総称される蛋白からなり、蛋白の持つ負の荷電の強さの違いを利用して電気的に血清蛋白を大きく5つの分画に分けることができます。
入院時のスクリーニング検査として、また各種疾患の状況把握、とりわけ多発性骨髄腫におけるM蛋白の有無や本態性M蛋白血症の予後観察として利用されています。

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グリコヘモグロビン(HbA1c)

グリコヘモグロビン(HbA1c)とは、血色素であるヘモグロビンに、ブドウ糖(グルコース)が結合したものをいいます。血糖値が高い場合、HbA1cも次第に増えてきます。血糖値は1日のなかで時間と共に変化し、食事の内容や量、運動やストレスなど、さまざまな要因で変動するのに対し、HbA1cは濃度が安定しています。ヘモグロビンの寿命は約4ヶ月であるため、HbA1cの値を調べれば、過去1~2ヶ月の血糖の平均的な状態を知ることができます。
血糖値が高い場合、それが一過性のものかどうかを確認する為、また既に糖尿病を治療している人の血糖コントロールの様子を知る為にHbA1c測定が実施されています。糖尿病を放置すると、眼・腎臓・神経などに合併症を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化症も進行します。

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