臨床化学検査部門 <生化学検査室>

生化学検査室とは?

生化学検査室では患者様から採取した血液、尿、髄液、胸水、腹水などの体液に含まれる様々な成分を測定しています。検査内容はスクリーニング検査と疾患特異的な検査に大別されます。スクリーニング検査とは、いわゆるふるい分け検査のことで体のどこかに異常がないかどうかを見極める第1段階の検査です。最も多くの患者さんが受けられる検査ですので1日に1000検体以上の検査依頼があります。結果に異常値がでた場合は、病気を疑って次の段階の検査を行いますが、基準値から逸脱したからといって病気というわけではありませんので医師にご相談ください。下記に測定対象項目と検査内容を簡単にご紹介します。

測定項目

電解質および無機物質:ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、UIBC、TIBC
窒素化合物:尿素窒素、尿酸、クレアチニン、アンモニア
肝胆道関連:AST、ALT、γ-GTP、ALP、LD、LAP、ChE、ビリルビン分画、総胆汁酸、BTR、BCAA、TYR
脂質代謝関連:総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、リン脂質、Lp(a)、Apo蛋白
栄養関連:総蛋白、アルブミン
膵機能関連:アミラーゼ分画、リパーゼ
その他酵素:ALD
糖代謝系:グルコース、乳酸、ピルビン酸、グリコアルブミン、1.5-AG
血液ガス関連:pH、PCO2、PO2、O2 sat、HCO3、BE
炎症性マーカー:C反応性蛋白(CRP)、SAA
心筋マーカー:CK-MB、心筋トロポニンI、CK
遺伝子:サイトケラチン19mRNA定量、major BCR-ABL1(IS)定量

代表的な検査項目の説明

臓器機能検査(肝、腎、膵など)

肝機能検査にはAST・ALTなどがありこれらは細胞でつくられる酵素で、ASTは肝臓や筋肉に多く、またALTは肝臓に多く含まれおり、両者は障害を受けると血液中に漏れ出すことで上昇します。次に、腎機能検査には尿素窒素(UN)やクレアチニン(Cre)などがあります。これらは腎臓でろ過されて排泄されるため、腎臓が障害を受けると排泄できないため血液中で上昇します。UNは高蛋白食の食事や消化管出血でも上昇し、また、Creは食事の影響は受けませんが、筋肉で作られる為、痩せると低下します。また、膵機能検査にはアミラーゼ(AMY)、リパーゼ(Lip)などがあります。AMYは消化を助ける酵素で膵臓や唾液腺で作られます。また、Lipは脂肪の分解を助ける酵素であり膵臓で作られます。これらは膵臓が障害を受けると血液中に漏れ出すことで上昇します。

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代謝系検査(脂質、糖)

脂質代謝検査には総コレステロール(T-Cho)、HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)、中性脂肪(TG)などがあり、血液中にコレステロールが増えすぎると血管壁にへばりつき、動脈硬化を進めます。HDLは善玉コレステロールと呼ばれ、高い人ほど動脈硬化にかかりにくく、またLDLは悪玉コレステロールと呼ばれ、高い人は動脈硬化にかかりやすい傾向があります。次に糖代謝系検査には血糖(Glu)、グリコアルブミン(GA)などがあります。血糖は糖尿病の基本的な検査で食事をすることで上昇します。Gluはその時点の血糖値を反映しますが、GAは過去1~2週間の平均的な血糖値を反映し、検査の直前の食事の影響を受けないメリットがあります。

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緊急検査項目

生化学検査の中には緊急性が高い検査項目がいくつかあり、緊急検査として24時間測定可能な体制をとっています。例えば血液ガス検査は血液の酸素化状態のチェック、代謝性もしくは呼吸性の障害があるかなど治療に直結する検査項目であります。また、CK-MBやトロポニンIなどの心筋マーカー検査は早期の心筋梗塞などにも有効でいち早く治療へと導くことができます。

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遺伝子検査項目

遺伝子検査では、手術中にがんリンパ節転移を調べる検査や白血病キメラ遺伝子に関連する検査などを行っています。現在、測定している対象項目は、サイトケラチン19mRNA定量検査、major BCR-ABL1(IS)定量検査です。

       

サイトケラチン19mRNA定量検査・・・乳癌患者さんに対して、手術中に癌細胞がリンパ節へ転移しているかどうかを遺伝子レベルで検出する検査を行っています。リンパ節転移は、となりのリンパ節へ次々と陣取り合戦のように転移していきます。乳腺から流出したリンパ液が最初に入り込むリンパ節をセンチネルリンパ節といいます。このリンパ節に癌が転移していなければ、それより遠いリンパ節には転移していないことになります。そこでセンチネルリンパ節を特定して切り取って転移があるかどうかを手術中に検査をして、転移がなければ、それ以上リンパ節を切除することなく、患者さんの日常生活に支障をきたす負担を軽減することができます

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major BCR-ABL1(IS)定量検査・・・慢性骨髄性白血病(CNL)では染色体の相互転座により9番染色体と22番染色体の一部が繋がってしまったフィラデルフィア染色体(Ph)染色体が作られます。この染色体はもともと22番染色体にあったBCR遺伝子と9番染色体にあったABL1遺伝子の結合した「BCR-ABL1融合遺伝子」をもっており、本検査では血液中のBCR-ABL1融合遺伝子の数を調べることにより治療効果の判定や病態モニタリングを行います。また当検査室では国際標準値を用いた方法を採用しており、世界的な施設間の治療効果の判定において結果の共通化が図れます。

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