この治療のメリットは、頭にメスを入れずに治療ができ、患者さんの身体的負担が非常に軽い、すなわち低侵襲手術であることです。
しかし、開頭手術に比べると再治療が必要になる頻度が若干多い、血が固まりにくくなる薬を内服しなければならない、といった欠点があります。
大阪大学ではフローダイバーターステントやWEBといった治療法も含めて、より安全でより効果的な治療法を選択しています。
脳動脈瘤の中に詰め物をすることで脳動脈瘤を破裂しないようにする方法で、2000年前後くらいからどんどんと普及してきました。 この治療は鼠径部(足の付け根)や腕の部分からカテーテル(細い管)を血管の中に挿入して行われるものです。 カテーテルの先端は脳動脈瘤の内部まで誘導され、そこからコイル(金属製の詰め物)が脳動脈瘤の中に充填されていきます。 近年はカテーテル器材の進歩がめざましく、こうした操作を補助するようなバルーンカテーテル(風船付きカテーテル)やステント(金属メッシュの筒)も使用しながら治療が行われています。
動脈瘤(矢印)内にコイルが適切に塞栓され術後画像では動脈瘤の描出が消失している。
2015年4月に日本で使用が承認された比較的新しい治療方法です。
一般的に動脈瘤には触らずに、動脈瘤が発生した血管にこのメッシュの細かなフローダイバーターステントを留置することで動脈瘤の消退を生じさせます。
動脈瘤(矢印)が術後半年後の脳血管造影検査では描出が消失している。
2020年12月に日本で保険収載されました。
形状記憶合金が細かい網目の袋状になっており、瘤から抜けづらく、複数本必要なコイル塞栓術との違いとして1個で動脈瘤を治療できます。
動脈瘤(矢印)が術後3ヶ月後の脳血管造影検査では描出が消失している。 中央の写真のように、術前に撮影した画像から作成した模擬血管でWEBが留置できるかをテストし、適切なサイズ選択のもとに治療を行っております。
開頭手術により、脳動脈瘤を直接観察し、クリップで脳動脈瘤をはさみこんで破裂しないようにする方法で、以前から行われている代表的な治療法です。 頭皮にメスを入れ、頭蓋骨の一部を開けた後、手術用顕微鏡を使用して脳の隙間を開き、脳動脈瘤を露出します。 そこで、クリップで脳動脈瘤をはさんで潰してしまうことで、血液が流れ込まないようにして破裂を予防します。 その後、頭蓋骨は元に位置に固定し、皮膚を縫い合わせて終了します。
この治療のメリットとしては、歴史のある確立した治療法で、再治療が必要になることはほとんどないという点が挙げられます。
近年カテーテルにより安全に治療できる動脈瘤の割合が増えております。しかし、カテーテル手術と開頭手術のどちらが適しているかは、脳動脈瘤の場所、大きさ、形などによって異なりますので、わたしたちは精密検査の結果をふまえて提案するようにしています。
カテーテル手術の一つで、内頚動脈の狭窄箇所をバルーンカテーテル(風船付きカテーテル)やステント(金属メッシュの筒)で広げる方法で、最近15年ほどで普及してきました。 この治療は鼠径部(足の付け根)や肘の部分からカテーテル(細い管)を血管の中に挿入して行われるものです。 この治療のメリットは、頚部にメスを入れずに、局所麻酔で治療ができ、患者さんの身体的負担が非常に軽い、すなわち低侵襲手術であることです。
外科手術の一つで、全身麻酔をかけた後に、頚部にメスを入れて頚動脈を露出し、一時的に血液の流れを止めた上で血管を切り開き、狭くなっている血管の内側を剥離して掃除します。切り開いた血管は縫い合わせて修復し、血液の流れを再開させ、皮膚を閉じで終了します。 この治療は歴史のある確立した手術になりますが、狭窄している血管の部位が顎の骨の下に隠れている場合には手術が難しくなることもあります。
カテーテル手術と外科手術のどちらが適しているかは、狭窄血管の場所や動脈硬化の性質などによって異なりますので、わたしたちは精密検査の結果をふまえて提案するようにしています。
動脈と静脈が直接つながるような血管の塊(血管奇形)が脳の中にできたものです。脳の中でも様々な場所にできうるもので、大きいものもあれば小さいものもあります。
脳動静脈奇形は脳出血を年に2〜3%の頻度で起こしたり、またてんかん発作の原因になったりもします。
脳動静脈奇形の治療は、脳動静脈奇形の場所や大きさなどの条件に応じて、外科手術、血管内手術(カテーテル手術)、放射線治療を組み合わせて行います。
動脈と静脈が直接つながる病変が脳を包んで保護している硬膜にできたものです。横静脈洞S状静脈洞や海綿静脈洞のそばにできることが多いですが、それ以外にも様々な場所にできます。
拍動性耳鳴(ザーザーと言う耳鳴り)や結膜充血(白眼が赤くなる)などの症状を引き起こすこともありますし、脳出血を起こすこともあります。
硬膜動静脈瘻の治療の多くは血管内手術(カテーテル手術)で治療されていますが、外科手術が必要なこともあります。
動脈と静脈が直接つながる病変が脊髄(背骨の中の神経の束)やそれを包んで保護している脊髄硬膜にできたものの総称です。
細かく分類すると、脊髄硬膜動静脈瘻、傍脊髄動静脈瘻、脊髄髄内動静脈奇形などがあります。
脊髄の浮腫や出血を引き起こすことがあり、それによって両足の感覚の異常を引き起こしたり、排便排尿のコントロールがしにくくなったりします。
脊髄動静脈瘻の治療は、血管内手術(カテーテル手術)や外科手術で行われます。
脳を栄養する内頚動脈が徐々に退縮していく病気です。それに伴い、脳の血流を補うために健常では見られない微細な血管が発達してきます。この微細な血管が造影検査で煙がもやもやとたちのぼる様に見えるため、もやもや病と名付けられました。
引き起こされる病気として、1. 脳血流不足による脳梗塞、2. 脆弱なもやもや血管の破綻による脳出血があります。
内頚動脈の退縮の速度やそれに伴う自然に発達する血管吻合の程度には個人差があり、生涯症状を来さない患者さんもおられます。大阪大学では、PET検査による脳血流検査を行いしっかりと評価を行った上で、手術適応を決めております。手術としてはバイパス術を行います。頭皮の血管を脳の血管につなぐ直接バイパスを行い脳血流を増加させるとともに、筋肉や硬膜、骨膜などを脳と接触させることによる脳血流の増加を目的とする間接バイパスも併用しております。また遺伝子評価も行い今後の病気の進行などの評価としております。
他の臓器と同じように、脳や脊髄などの神経組織も血管がたくさんある臓器で、さまざまな血管の病気があります。
わたしたち脳神経外科では脳動脈瘤や内頚動脈狭窄症や動静脈奇形以外に、次のような血管病変も得意としており、カテーテル手術や外科手術の技術を駆使して診療にあたっています。
脳血管狭窄、脳血管閉塞、クモ膜下出血、脳内出血、脳梗塞など