グリオーマは脳内に分布するグリア細胞から発生する腫瘍であり、脳腫瘍の中で代表的なもののひとつです。 悪性度は良性に相当するGrade1から悪性に相当するGrade4までの4段階があります。 腫瘍が発生した場所の機能障害(局所症状)があらわれたり、痙攣発作などが出現したりします。
グリオーマは脳内に浸潤する腫瘍であり、一部の腫瘍を除いて手術治療だけでは根治は困難ですが、手術による可及的摘出が治療の最も基本となります。 その後病状や分子診断に応じて、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療が行われます。
手術による可及的摘出が治療の最も基本となるため、当科では必要に応じて覚醒下手術を行うことで、可能な限りの最大限の腫瘍組織を摘出する治療を行っております。 また病状や分子診断に応じて、化学療法(テモゾロミド、PAV療法、ベバシズマブ)、放射線治療を組み合わせた集学的治療を行っております。
運動機能や言語機能などの重要な脳の領域に腫瘍が位置している症例では、覚醒下手術を積極的に行っております。
覚醒下手術とは脳の表面を露出した時点で患者さんに覚醒していただき、神経症状が出現しないかどうかを確認しながら可能な限りの最大限の腫瘍組織を摘出する手術方法です。
当施設でも特に低悪性度神経膠腫の摘出術において覚醒下手術を積極的に取り入れております。
膠芽腫はグリオーマの中で最も悪性度の高い腫瘍の一群に分類され、悪性脳腫瘍を代表するものです。 腫瘍が発生した場所の機能障害(局所症状)があらわれたり、腫瘍周囲に浮腫を伴ったり、髄液の流れを妨げて頭蓋内圧亢進症状が出現したりします。
治療は外科的な摘出術を行った後、放射線治療、化学療法(テモゾロミド、ベバシズマブ)、NOVO TTF療法を組み合わせた集学的治療を行っております。
ただこうした治療を行っても予後は不良のことが多く、新規の治療開発が望まれております。
頭蓋内に原発する節外性の悪性リンパ腫であり、大部分が免疫学的にB細胞リンパ腫で、比較的高齢者に多く、全原発脳腫瘍の2~3%を占めます。 特徴的な症状はなく、眼症状が20~50%にあります。症状発現からの経過が早いことが特徴です。
基本的には生検術により診断をつけ、メソトレキセートを基盤とした化学療法(RMPV療法)、放射線療法が治療の主体になります。 また再発難治性の悪性リンパ腫に対してはチラブルチニブ化学療法が適応になります。
当科でもRMPV療法を行い、再発難治性の悪性リンパ腫に対してはチラブルチニブ化学療法を行っております。 放射線治療については長期的には高次機能障害の合併症が出現しやすく、放射線治療について低減する試みも行っております。
脳以外から発生した癌が脳に転移する病態を転移性脳腫瘍と言います。転移性腫瘍の原因のうち最も多いのが肺がんで、ついで乳がんが多いです。 腫瘍が発生した場所の機能障害(局所症状)があらわれたり、腫瘍周囲に浮腫を伴ったり、髄液の流れを妨げて頭蓋内圧亢進症状が出現したりします。
治療は大きさや転移の個数や原疾患のコントロールの状況に応じて、外科的な摘出術、定位放射線治療、全脳照射、薬物療法が行われます。
当施設では原発巣の診療科や放射線治療科と連携し、外科的な摘出術、定位放射線治療(サイバーナイフ) 、全脳照射、薬物療法を組み合わせた最適な治療を提供いたします。
脳・脊髄を包む髄膜(硬膜、くも膜)から発生する良性腫瘍で、結果として脳・脊髄を圧迫して、発生した部位により様々な神経症状をひきおこします。 好発部位がわかっており、稀には悪性のものがあります。
手術による摘出を行い、神経症状を改善するのが一般的です。
ナビゲーションシステムや電気生理学的モニタリングを用いて、脳・脊髄症状を悪化させることなく、 最大限の摘出をめざしています。 出血しやすい腫瘍の手術では術前に腫瘍栄養血管塞栓術を行い、術中の出血を低減したり、摘出率の向上を図っています。 さらに、残存腫瘍や 再発腫瘍に対しては、手術のほか、定位的放射線治療(サイバーナイフ)を積極的に行っています。
聴覚や平衡感覚を脳に伝える働きをする聴神経の鞘から発生する良性腫瘍で、聴力低下や耳鳴りなどの症状をひきおこします。
腫瘍が大きくなった場合、隣接する小脳や脳幹の症状に加え、水頭症の原因にもなり、重篤な症状が出現します。
原則的に、大きな腫瘍は摘出術、3cm以下の小さなものでは手術か定位的放射線治療が行われます。 手術では腫瘍周囲に走行する顔面神経の温存を図りながら摘出します。
年齢や腫瘍の大きさ、形状により手術か定位的放射線治療(サイバーナイフ)を選択します。 顔面神経温存はもとより、電気生理学的モニタリングを行いながら症例により聴力温存を目指した手術も積極的に行っております。
小児がんの中で、脳腫瘍は白血病について第2位の数を占めます。
化学療法の進歩に伴い白血病の大部分は治る病気となってきており、現在は脳腫瘍が死亡率の第1位です。
また、頻度の多い小児脳腫瘍として、星細胞腫、髄芽腫、胚細胞性腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫などが挙げられます。
成人では約9割の脳腫瘍が大脳に発生するのに対し、小児では約6割が小脳や脳幹に発生します。
また脳の正中部付近に発生しやすく、脳脊髄液の循環障害により水頭症になりやすいことが知られています。
また、この水頭症や急激に大きくなる性質などにより、頭痛や嘔吐、意識障害などの頭蓋内圧亢進症状が起こりやすく、緊急で治療を要する場合があります。
また、小児脳腫瘍は組織型が非常に多彩で、正確な病理診断が難しい場合があります。
経験が豊富な病理医による診断および小児脳腫瘍に詳しい脳神経外科医による判断が重要となります。
治療は、外科的治療、放射線治療、化学療法に大別されます。
良性腫瘍は手術摘出により治癒するものもあります。画像誘導手術や顕微鏡、内視鏡などの技術を用いて、摘出率を向上させ合併症の少ない治療を行っています。
悪性脳腫瘍の場合は、外科的治療だけでは治癒出来ず、外科的治療、放射線治療、化学療法の3つを組み合わせる治療が必要です。
悪性神経膠腫、髄芽腫、胚細胞性腫瘍などの腫瘍の場合は、診断が確定した段階で、速やかに化学療法や放射線療法を行います。
今まで成績の悪かった悪性度の高い腫瘍や再発性腫瘍に対しても、定位放射線治療や大量化学療法を行うことにより生存が得られるようになってきております。
更に、脳腫瘍も長期生存例が増えるに従い、晩期障害についてのfollow upも必要となってきています。当院では、晩期障害を減らす試みも行っており、治療後も長期間follow upしております。
脳神経外科手術は手術用顕微鏡が導入されたことで飛躍的な進歩を遂げ、微細な手術を行うことが可能となりました。
一方、手術用顕微鏡は
といった問題点があり、こうした背景から、近年外視鏡(Exoscope)が臨床現場への導入が始まっております。
当科では4K3D外視鏡ORBEYEを早期に導入し、脳腫瘍手術においても有用性を報告しており、術者の負担を軽減しつつ、安全で正確な手術を行っております。
4K3D外視鏡 ORBEYE