寄附講座

幹細胞応用医学

幹細胞技術の深化と再生医療への応用
  • 多能性幹細胞を用いたヒト組織の発生機構の解明
  • 再生医療の実用化に向けた分化誘導制御技術・細胞単離技術の開発
  • 幹細胞を用いた創薬技術の開発

幹細胞技術を用いた眼組織発生機構の解明と再生医療への応用

1.多能性幹細胞

私たちは幹細胞技術(培養方法・分化誘導法・細胞単離法・評価技術)の開発と、その応用による再生治療法の開発を目指しています。ヒトiPS細胞に対して、細胞自律的な分化を促すことで、2次元の培養系にて、眼の後眼部から前眼部にわたって、広い範囲の発生を再現する新たな方法を開発しました。この方法では、ヒトiPS細胞から4つの帯状構造からなる外胚葉性の2次元組織体(self-formed ectodermal autonomous multi-zone: SEAM)が誘導され、各領域には、発生期の眼を構成する主要な細胞系譜(角膜、網膜、水晶体など)が、眼発生を高度に模倣する形で誘導されました[1]。

さらにこの中から、角膜上皮細胞のみを単離する技術を新たに確立し、再生医療に利用可能な高純度かと機能的な角膜上皮組織を作製することに成功しています。眼科学教室と共同で、このSEAM法を用いた新規角膜再生治療法の実用化を目指しています。また、さらなる再生医療技術の発展のため、より安定的かつ短期間で角膜上皮組織を作製する分化誘導技術の開発やSEAM法を用いた様々な眼組織への分化誘導制御技術の開発にも注力しています。

2.間葉系幹細胞

私たちは間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cells, MSCs)を用いた新規治療法の開発にも取り組んでいます。これまでMSCs由来の培養上清による、角膜上皮細胞への抗EMT(Epithelial -Mesenchymal Transition)効果や、MSCs培養上清に含まれるExosomeに、角膜上皮前駆細胞のコロニー形成促進作用と分化の抑制作用を見出しています。そのため、MSCsの培養上清が新規の疾患治療剤として有望であることが示唆されました。これからも、MSCsやその培養上清による幅広い疾患治療の可能性を模索していきます。

【文献】

1.R. Hayashi et al. Nature 531:376–380, 2016.