特別協力講座

感染制御学

次の新興感染症のアウトブレイクを見据えた研究と次世代リーダーの育成
  • COVID-19の診断・治療・予防の確立を目指して
  • 次の新興感染症のアウトブレイクを見据えた研究を
  • 次世代の感染症のリーダーを担う人材の育成
  • 臨床から研究へ、physician scientistとして世界へ発信
教授 忽那 賢志
感染制御学
感染制御学は2003年に病院の中央診療施設感染制御部として設置され、同時に大学院医学系研究科の特別協力講座となりました。初代教授の白倉良太教授、2008年からの朝野和典教授、そして3代目として2021年より忽那教授に引き継がれ、現在に至っております。

COVID-19、そして次の新興感染症に備えた研究の確立と、次世代の感染症診療のリーダーを担う人材の育成

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COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は1918年のスペインかぜ以来の100年に一度の感染症の流行と表現されることがあります。実際にこの感染症によって世界は根本から揺さぶられ、現在もまだ大きな影響を被っています。このCOVID-19の流行によって、感染症の診断・治療・予防の技術は大きく革新されました。PCR検査を始めとした検査体制は強化され、またmRNAワクチンなどの新しいプラットフォームを用いたワクチンは予想以上のスピードで開発されました。

私はこれまでにCOVID-19回復者の免疫獲得に関する研究や、患者情報を集積するレジストリ研究、そして回復者血漿療法という治療薬の開発に関わってきました。この経験を生かし、大阪大学大学院医学系研究科・医学部 感染制御学講座でも発展させていきたいと考えています。

また、このCOVID-19のような規模の感染症が次に流行するのは本当に100年後なのかは誰にも分かりません。それは50年後かもしれませんし、ひょっとしたら5年後かもしれません。今回のCOVID-19で得られた研究成果をレガシーとして、次また新たな新興感染症が流行した場合に備えた研究体制の構築が望まれます。

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COVID-19の流行で明らかになった課題として、感染症専門家の不足が挙げられます。日本感染症学会の専門医は2021年7月現在約1600名であり、他の領域の専門医と比較して十分な数とは言えません。感染症領域では近年、薬剤耐性菌の増加により抗菌薬適正使用の重要性が増しており、感染症専門医の需要は高まっています。また、COVID-19の流行下では、病院内の診療のリーダーとなるべき感染症専門医が不在であった医療機関も数多くあります。このような中、感染症専門医の育成は喫緊の課題と言えます。また感染症専門医だけでなく、感染管理看護師、細菌検査技師、薬剤師など感染症診療・感染対策に従事する医療従事者がこれまでになく求められている時代となっています。

大阪大学では、将来起こりうる新興感染症の脅威に対する備えとしての研究・教育のための拠点として2021年にCiDER 大阪大学感染症総合教育研究拠点が設置されました。私たち感染制御学講座はCiDERと連携し、次世代の感染症診療・感染対策のリーダーとなる人材、特にエビデンスにのっとった感染症診療・感染対策を実践できるだけでなく臨床の現場からエビデンスを発信する「Physician Scientist」の育成を行い、地域、日本、そして世界の感染症対策に貢献してまいります。