肘加温でアンジオポエチン1の変動と毛細血管の形態変化を追跡(AGNI試験)
レイノー現象のある全身性硬化症(強皮症)への部位別試験の結果、腕を温めていると毛細血管をまっすぐに伸ばす因子アンジオポエチン1が増加したと書きましたが、では温め続けると本当にまっすぐになるのでしょうか?
そこで、肘の上(肘の肩側)を使い捨てカイロで毎日毎日合計8週間加温すると「全身性硬化症におけるキャピラロスコピーを用いた温熱による血管新生と新規誘導血管の前向き観察研究」Prospective capillaroscopic observation of Angiogenesis and New induction vessels by warming in systemic sclerosis [AGNI study]を開始しました。
レイノー現象のある強皮症患者を対象に、肘にカイロを装着いただき、8週間の加温を行いました。その前後を4週間毎に6ヶ月にわたってキャピラロスコープという毛細血管を観察できる装置を用いて血管の形を追跡しました。
加温開始後、指先でのアンジオポエチン1濃度は部位別加温試験の時の検討と同様に増加しました。
その増加効果は加温を終了しても直ぐには下がらないこともわかりました。
また、アンジオポエチン1の増加によって、実際に毛細血管の形態も改善することが分かりました。
正常なヘアピン状の毛細血管の割合は加温後増加し、この増加率はアンジオポエチン1の増加量と密接な関連が観られました。
全身性硬化症(強皮症)ではアンジオポエチン1が減少し、毛細血管の蛇行が始まることが知られています。皮膚付近の上肢を温めていると、アンジオポエチン1が増加し、実際に毛細血管の形態も改善すると期待されます。
この試験結果はMicrovascular Research誌に掲載されました。
(詳しくは、https://doi.org/10.1016/j.mvr.2024.104761 英文ですが、全文freeで読めます。)