共同研究講座

先端分子治療学

特異的スプライシングバリアントを標的とした治療法を開発します 

  • ペリオスチンの病的バリアントと生理的スプライシングバリアントの機能の比較
  • 慢性炎症性疾患の病状と血中病的ペリオスチンとの解析
  • 病的ペリオスチンバリアントの共役蛋白質の網羅的解析
  • エクソソームを介したペリオスチンバリアントの輸送作用
  • エクソンスキッピングを用いた病的ペリオスチンバリアント抑制作用

スプライシングバリアントを介した慢性炎症性疾患のメカニズムの解析

ひとつの遺伝子からVariant Switchによって複数の産物を生み出す機構“Alternative splicing variant (ASV)”は多細胞生物の複雑な形態や細胞機能獲得を可能にするだけでなく、いくつかの病態形成に深く関わっています。

この研究では、癌、心不全、動脈硬化、腎不全、糖尿病性網膜症等の慢性疾患において、生理的なASVを阻害することなく、選択的に病態形成に関与するASVのみ阻害することを目的としています。この選択的ASV阻害により、安全かつ効率の良い治療法を提供できるものと考えています。 

具体的には、急性心筋梗塞、糖尿病性網膜症、炎症性腸疾患、動脈硬化、動脈瘤、喘息、癌、腎不全などのさまざまな病態において遺伝子がスプラシングバリアントを発現し特異的なスプライシングバリアントを抑制することによって病態を改善することを確認しています。まずは化学療法抵抗性のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)を解析する予定です。

トリプルネガティブ乳がんは、エストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性、HER2という増殖因子受容体がいずれも陰性の乳がんであり標的治療ができない癌です。この中に化学療法に抵抗性のものが少なからず存在し、治療法がないためAYA世代の女性の重大な死因にもなっており世界的にアンメットニーズの高い疾患であります。

この特異的バリアントを抑制することによって、動物実験においてTNBCの化学療法抵抗性を治療することに成功しており、今後、ヒト型中和抗体を作成して臨床応用することを予定しており、成功すれば世界中のTNBCで苦しむ多くの女性達を救えると期待しています。

当教室では、病的べりオチンの病態形成のメカニズムやエクソソームを介してペリオスチンバリアントの運搬など生体での機能を詳細に解析していく予定です。