産科学婦人科学
- 婦人科がんの病理病態・薬理・免疫に関連する分子生物学的研究・臨床研究
- 女性内分泌疾患・卵巣機能不全の病理病態の解明
- 胎児診断・胎児治療に関する分子生物学的研究・臨床研究
- 着床、妊娠高血圧症候群、早産に至る子宮と胚・胎盤が関連する病態の基礎的・臨床的研究
- 大規模データベースを用いた疫学的研究や社会啓発活動

胎児診断・治療に始まり老年期に至るまで、多角的なアプローチによって女性の健康に貢献
産婦人科は、周産期医療、生殖・内分泌、婦人科腫瘍、女性ヘルスケアの4つの主要な診療分野で構成されており、胎児期から老年期に至るまで、女性の生涯にわたる生理的変化や疾患に幅広く対応しています。各分野は相互に密接に関連しており、たとえば生殖治療後のハイリスク妊娠の管理や、妊娠・出産を契機とした骨盤底機能障害、婦人科腫瘍治療後に生じる卵巣機能不全や骨粗鬆症など、領域横断的な知識と診療が求められます。
婦人科腫瘍学においては、この数年免疫チェックポイント阻害剤や抗体複合薬といった新しい薬物療法が導入され大きく治療が変化しましたが、未だ治療抵抗性腫瘍、再発治療の根治は叶いません。婦人科悪性腫瘍を対象に、治療効果を予測できるバイオマーカーの探索、治療抵抗性に関わる機序解明や、新たな治療標的の開発に向けた研究を継続しています。これまでに卵巣癌に対する新規治療標的の報告、患者由来のエクソソームを用いた新規核酸薬の可能性について、子宮頸癌細胞の3D培養系を用いた新規治療標的の探索や治療抵抗性に関与する分子について報告してきました。
生殖医療分野においては、合併症を有する症例、治療に難渋する症例、治療抵抗性である症例を多数診療していることから、既存の治療を塗り替えられるような新規治療方法の確立を目指して、次世代シーケンサーによる胚検査、流産組織検査等を行っております。また着床障害を改善しうる新規治療を開発するために、基礎系講座と共同研究を積極的に行い、解明に努めています。
周産期医療分野においては、胎児診断、胎児治療を先進的に実施すると共に、胎盤異常から生じる妊娠高血圧症候群や癒着胎盤といった病態の組織学的・遺伝学的機序を明らかにするために、トランスクリプトーム解析による解明を進めています。
ヘルスケア分野においては、化学療法による卵巣機能不全の病態解明や、子宮内膜症における好中球の役割といった基礎研究から、骨盤底機能障害を可視化する試み、内視鏡手術の安全な実施に有用な新規医療機器開発等に幅広く取り組んでいます。
一方で子宮頸癌撲滅を可能とするHPVワクチンの接種率増加を目指すために、大規模データベースを用いた疫学的研究、社会への啓発活動を行っています。
私たちの講座では、これらの研究・診療活動を通じて、女性の生涯にわたる健康とQOLの向上に貢献することを目指しています。