器官制御外科学

産科学婦人科学

生命誕生から女性の一生(がん・老化まで)の謎に挑む
  • 婦人科がん・良性疾患の病理病態・薬理・免疫に関連する分子生物学的研究・臨床研究
  • 子宮頸がんの検診・予防、妊娠に関わるさまざまな事象に対する疫学的研究
  • 胎児診断・胎児治療に関する分子生物学的研究・臨床研究
  • 着床、妊娠高血圧症候群、早産に至る子宮と胚・胎盤が関連する病態の基礎的・臨床的研究
  • 産婦人科領域の診断・手術治療に資する医療機器、医療材料の開発
器官制御外科学講座 産科学婦人科学
当研究室は内分泌・病理・周産期・免疫の4つのグループに分かれており、それぞれのグループ内で自由にテーマを選び研究を進めています。どのグループも分子生物学、細胞生物学、動物実験に関する基礎的手技に精通しています。さらに基礎系講座や他学部、企業との共同研究を通じて新たな産婦人科診療の展開につながる研究を進めます。

受精卵から妊娠・胎児・出産、その後の女性の一生の苦しみを解明する

最近の教室から出た論文のトピックスを紹介します。

  • 卵巣がん細胞が分泌するエクソソームに含まれるCCD44が腹膜への播種を促進する(図1) [1]

図1

  • 卵巣の高悪性度漿液性腺癌と子宮内膜由来の漿液性腺癌は、同様の網羅的タンパク質発現パターンを呈する[2]
  • 妊娠高血圧症候群のkey substance(主要物質)であるsFlt-1(可用性fms様チロシンキナーゼ1)が生理的濃度で細胞傷害性を有し、がん細胞に対する殺細胞能を示す[3]
  • 妊娠初期マウス胎盤に異型マウス由来細胞を注入することにより、生後まで免疫寛容を導入することが可能となり、将来の胎児細胞治療の基盤となる知見を得られた[4]
  • NFκBの制御因子であるIκB特異的阻害剤は、炎症によって惹起された早産を予防する効果を有する[5]
  • 子宮頸がんにおける腫瘍随伴白血球増多症は、放射線治療抵抗性を示す新たな臨床疾患群である[6]
  • 子宮頸がん予防ワクチンの接種率が低下したままなら、将来の日本人女性は生まれ年によって大きなHPV(ヒトパピローマウイルス)感染率の差が生じる(図2)[7]

図2

  • 腹腔鏡下手術用の新規カメラポート清拭用機材の開発[8]

分子生物学的手法を駆使した基礎研究、大規模診療を解析する臨床研究、自治体データーを活用した疫学研究、さらには診断・治療・手術に必要な器具の開発、改良などさまざまな観点からの研究を繰り広げています。産科・周産期、婦人科・婦人科腫瘍、生殖内分泌学などすべての領域をカバーする研究から自分のテーマを決めて、豊富な経験を有する指導者層と常に議論しながら国際レベルの研究を進めていきます。

【文献】

1. Nakamura K., et al. Mol Cancer Res 2017
2. Hiramatsu K. et al. Br J Cancer 2016
3. Miyake T. et al. Sci Rep 2016
4. Takahashi K. et al. PLoS One 2015
5. Toda A. et al. Am J Pathol 2016
6. Mabuchi S. et al. J Nati Cancer Inst 2014
7. Tanaka Y. et al. Lancet Oncol 2016
8. Kobayashi E. et al. Surg Endosc 2016