器官制御外科学

泌尿器科学

世界を牽引する泌尿器科学教室~臨床実績に支えられた幅広い実用化研究をめざして~
  • 幅広い分野(泌尿器科腫瘍、腎移植、男性不妊、排尿機能)における臨床実績
  • 泌尿器腫瘍における新規バイオマーカー探索を目指した研究
  • 腎移植2000例の経験に基づく、個別化オーダーメイド治療の確立
  • 新規精子形成遺伝子単離・解析とその臨床応用
  • ノックアウトマウスを用いた排尿機能の分子生理学的解析
教授 野々村祝夫
器官制御医学講座 泌尿器科学
大阪大学泌尿器科学講座は1941年に、佐谷有吉先生を初代教授として皮膚泌尿器科学講座から独立しました。2010年に私が6代目教授に着任しましたが、開講以来76年の歴史を有しています。泌尿器科は、腎、尿路、副腎、後腹膜、男性生殖器を対象とする外科学の一領域です。

世界をリードする泌尿器腫瘍のバイオマーカー探索研究など幅広いトランスレーショナル・リサーチ(translational research)を展開

泌尿器科学とは腎 尿路 副腎 後腹膜 男性生殖器を対象とする外科学の一領域であり、欧米ではDepartment of Surgery / Division of Urologyとして名実ともに外科学の一部門として位置付けられています。泌尿器科学は幅広い領域、具体的には腫瘍学、前立腺学、結石学、排尿機能、内視鏡学、手術学など欧米と共通する分野の他に腎移植学、男性学(アンドロロジー 婦人科学に対応する)、小児や女性泌尿器科学、性機能学、感染症、画像診断学などに対応しています。当科も幅広い分野に対応するべく、泌尿器科腫瘍、腎移植、アンドロロジー及び排尿機能を専門とした研究グループが臨床及び基礎研究に従事しています。

泌尿器腫瘍領域では近年注目されている血液や尿などの体液から診断を行うリキッドバイオプシーの技術を応用し、泌尿器腫瘍の新規バイオマーカー開発を目指した研究を行っています。具体的には、手術などで摘出した腫瘍組織だけでなく、患者さんの血液および尿といった体液からDNAやRNAといった核酸やタンパク質を抽出し、これらの網羅的解析により診断や治療に応用できる新たなバイオマーカー同定することを試みております。これまでに腎癌組織に発現し、再発の予測因子となるマイクロRNAや、膀胱がん患者の尿中エクソソームに発現し、診断に有用なマイクロRNAなどを同定してきました。

当科における腎移植の歴史は古く、1965年に開始され現在まで関連施設を含め2000例に及びます。この経験をもとに、患者さん個々に最適な個別化オーダーメイド治療を提供しています。また移植した腎臓に対する拒絶反応を克服すべく、遺伝子治療等の研究、臨床応用に取り組んでいます。さらに大阪大学産業科学研究所との共同研究により、水素を用いた新規治療法の確立を目指しています。これは慢性腎臓病を含めた各種疾患の原因である活性酸素を持続的に抑制できる可能性がある画期的手法であり、各方面から注目されています。

アンドロロジー領域では男性不妊症の原因遺伝子を解明するために、マウス精巣からクローニングした新規遺伝子について、ノックアウトマウスによる解析ならびにヒト男性不妊症患者におけるゲノム解析を行っています。

排尿機能領域では、従来膀胱機能評価が技術的に難しいとされてきたマウスを用いて排尿機能評価が可能な実験系を開発し、ノックアウトマウスを用い膀胱機能に関与する遺伝子群の機能解析を進めています。