共同研究講座

中性脂肪学

中性脂肪蓄積心筋血管症 (TGCV)を1日でも早く克服する
  • TGCVの発症機構解明
  • TGCVの診断法、スクリーニング法の開発
  • TGCV治療薬 CNT-01の作用機序の解明
  • 非脂肪細胞における中性脂肪 (TG)代謝の分子機構解明
  • TG蓄積型動脈硬化の発症、進展機構の解明

わが国で発見された新規心血管難病 TGCV (Hirano K, et al. N Engl J Med. 2008)の1日でも早い克服を目指しています

令和3年2月1日付けで大阪大学大学院医学系研究科中性脂肪学共同研究講座 特任教授(常勤)を拝命致しました。私は、昭和60年に名古屋大学医学部を卒業し、直ちに本学第2内科学教室(垂井清一郎教授主宰)に入局させて頂きました。阪大病院と市立豊中病院内科で研修、帰局して循環器脂質研究室に所属し松澤佑次教授からご指導を頂きました。医師になって最初の受け持ち患者さんが糖尿病を伴う心筋梗塞であったことから「循環器」と「脂質」を鍵ワードに臨床医学研究者として研究して参りました。

2000年頃から行われた診療科再編に伴い循環器内科学所属となり堀 正二教授から阪大病院循環器内科病棟医長を拝命することとなりました。我が国では心臓移植ドナーが絶対的に不足していることを知り「内科医として原因不明の心臓病の原因を解明、治療法を開発して目の前にいる患者さんにその研究成果を還元する」と決意を致しました。第2内科学と循環器内科学で学んだことが全て活き、2008年に中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)を発見、報告することができました。TGCVは、肥満度や血清中性脂肪値とは無関係に、冠動脈にコレステロールではなく中性脂肪が蓄積する動脈硬化を呈する等、これまで想定されなかった中性脂肪の生体における新たな機能や病態との関連性を示すモデル疾患です。2009年から国の難病プロジェクト予算を得て、現理化学研究所大阪キャンパス内に平野研究室(CNT研究室)を立ち上げ、国内外の共同研究者とともに疾患概念の確立、診断基準策定、治療法開発を行いました。2019年、TGCVは国際登録され(ORPHA code: 565612)、開発した治療薬CNT-01は、アカデミアで初めて厚生労働省より「先駆け医薬品」に指定されました。本共同研究講座では、TGCVの指定難病化、1日でも早いCNT-01の薬事承認を目指す臨床研究を推進するとともに、TGCVの発症の分子機構、CNT-01の作用機序の詳細解明など基礎研究も展開して参ります。

中性脂肪、この身近だが、まだまだ不明な点が多い脂質を学び、大阪大学から中性脂肪学(Triglyceride Science)に関するメッセージを発信し、国際的な健康問題の解決に貢献していきたいと考えております。