ゲノム生物学

遺伝統計学

ヒトゲノムデータから疾患病態解明や創薬を目指す
  • 遺伝情報を形質情報の結びつきを統計学の観点から評価する、遺伝統計学が専門
  • 大規模コンピューターを用いて最新のゲノムデータを解析
  • 疾患病態の解明や新規ゲノム創薬を目指す
  • 新たな遺伝統計解析手法の開発で、ゲノムデータ解析の可能性を広げる
  • 遺伝統計学を担う若手人材育成を推進
教授 岡田随象
ゲノム生物学講座 遺伝統計学
遺伝統計学教室は、大学院医学系研究科臨床遺伝学教室(先代:戸田達史教授)の後継教室として平成28年4月に発足しました。遺伝統計学は、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から評価する学問であり、当研究室は大規模コンピューターを用いたゲノムデータ解析を専門とする、ドライの研究室として活動を行っています。

遺伝統計学と最新のヒトゲノムデータを駆使して、疾患病態の解明や新規ゲノム創薬を実現する先駆的な研究を展開

当研究室は、遺伝情報と形質情報の結びつきを統計学の観点より評価する学問である、「遺伝統計学」を専門としています。 次世代シークエンサーに代表されるゲノム解読技術の発展により、大容量のゲノムデータが得られる時代が到来しています。得られたデータを適切に解釈し、社会還元していく過程において、遺伝統計学は重要な役割を果たしています。

当研究室では、ヒトの遺伝情報の解析や新たな遺伝統計解析手法の開発を通じた、疾患病態の解明、ゲノム創薬、個別化医療の確立を目指しています。これまでに、国際共同研究を通じて大規模ゲノム解析を主導し、多彩なヒト疾患における新規感受性遺伝子を同定してきました[1,2,3]。遺伝統計解析により大規模ゲノム解析の成果と多彩な生物学・創薬データベースを横断的に統合することにより、ドラッグ・リポジショニングを活用した新規ゲノム創薬[4]、核酸ゲノム創薬[5]、HLA遺伝子バイオマーカーの同定[6, 7]など、ゲノムデータ解析の可能性を広げる研究に取り組んでいます。

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一方で、遺伝学、統計学、臨床医学、情報学といった複数の学問領域に渡る専門性が求められることもあり、我が国では遺伝統計学の専門家が少ない状況にあります。遺伝統計学を標榜する数少ない教室の一つとして、夏の学校やセミナーの開催など、若手研究者や学生を対象とした人材育成にも取り組んでいきたいと考えております。

【文献】

1. Y Okada, X Sim, MJ Go, et al. Nature Genetics 44 (8), 904-909, 2012.
2. Y Okada, C Terao, K Ikari, et al. Nature Genetics 44 (5), 511-516, 2012.
3. Y Okada, M Kubo, H Ohmiya, et al. Nature genetics 44 (3), 302-306, 2012.
4. Y Okada, D Wu, G Trynka, et al. Nature 506 (7488), 376-381, 2014.
5. Y Okada, T Muramatsu, N Suita, et al. Scientific Reports 6, 22223, 2016.
6. Y Okada, Y Momozawa, K Ashikawa, et al. Nature genetics 47 (7), 798-802, 2015.
7. Y Okada, A Suzuki, K Ikari, et al. American Journal of Human Genetics 99 (2), 366-374, 2016.