感染症・免疫学

ウイルス学

「パンデミックウイルスの増殖戦略を明らかとし、ネクストパンデミックに備える」
  • 新型コロナウイルスの複製機構を解明する
  • パンデミックウイルスに対する免疫応答を明らかとする
  • HIV-1感染症の根治を目指した研究を行う
  • B型肝炎ウイルスの治療薬開発を目指して
  • インフルエンザウイルス脳症発症メカニズムの解明
教授 宮内浩典
感染症・免疫学講座 ウイルス学
大阪大学医学系研究科のウイルス学教室は山西弘一教授の流れをくみ上田啓次教授へと引き継がれてきた伝統ある教室です。現在でもヘルペスウイルスやB型肝炎ウイルスを継続して研究するとともに、HIV-1やインフルエンザウイルス、新型コロナウイルスについても精力的に研究を行っています。

新型コロナウイルスの複製機構を解明する
パンデミックウイルスに対する免疫応答を明らかとする

人類はこれまで度重なるウイルスによるパンデミックの脅威にさらされてきました。近年でも2009年の新型インフルエンザウイルスパンデミックや2020年の新型コロナウイルスによるパンデミックなど約10年ごとにヒトに感染する新しいウイルスが出現しています。これらのパンデミックウイルスに対してヒトは免疫をほとんど持たないため、新規に開発するワクチンによる中和抗体の獲得がパンデミックの収束には重要です。また、性別、年齢、人種などによりこれらのパンデミックウイルスに対する感受性は大きく異なりますが、それはウイルス複製に関与する宿主因子タンパク質の動態の違いに起因することが知られています。当教室ではウイルスがどのようにして生体内で増殖し、病気を引き起こすのか、そのメカニズムを研究するとともに、これらのウイルスに対する免疫応答の誘導機構について研究をおこなっています。

新型コロナウイルスの複製機構を解明する

新型コロナウイルスは受容体であるACE2に結合したのち、TMPRSS2と呼ばれる宿主細胞の酵素によってウイルススパイクタンパク質の一部が消化されることにより、宿主細胞への侵入を行います。このTMPRSS2はインフルエンザウイルスの感染粒子形成にも必要であることが知られています。私達はこのTMPRSS2が新型コロナウイルスの感染粒子形成にとっては抑制的に働くことを発見しました。さらに、このTMPRSS2の抑制効果は新型コロナウイルスのエンベロープタンパク質によって打ち消されることを示しました。つまり、新型コロナウイルスは細胞への侵入時にはTMPRSS2の酵素活性を利用し、ウイルス粒子形成時には邪魔になるTMPRSS2活性を抑制することで、効率の良いウイルス増殖を行っていることが明らかとなりました。文献1

パンデミックウイルスに対する免疫応答を明らかとする

ウイルス感染から身を守るためには中和抗体と呼ばれるウイルス侵入を阻害する抗体が重要です。このウイルス中和抗体はウイルス抗原を認識するウイルス特異的B細胞によって作られますが、それにはヘルパーT細胞のサポートが必要です。私達は新型インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスに対する中和抗体産生をサポートするヘルパーT細胞の研究を行っています。文献2-4
ウイルスに感染させたトランスジェニックマウスからウイルス特異的な免疫細胞を分離するシステムを構築し、どのようなT細胞やB細胞がウイルス中和抗体の産生に必要なのかを詳しく調べることで、より感染防御効果の高いワクチン開発につなげることを目指しています。

文献

1. Seki S et al EMBO Reports, 3424-3453. 2026
2. Khalil J et al International Immunology, dxaf051. 2025
3. Miyauchi K et al Nature Communications 18 June 2021
4. Miyauchi K et al Nature Immunology. 12: 1447-1458, 2016