診療

診療内容のご紹介(医療従事者向け)

退院支援について

我が国の1990年の高齢化率12.1%であったが、2019年には28.4%となり、高齢化が加速している。今後もその傾向が続くとみられ2040年には35.3%になると見込まれており、2040年に高齢者となった男性の4割が90歳まで、女性の2割が100歳まで生存するとみられる。*1

これらの高齢者が急性疾患で入院した場合、病前と同様に戻れない場合も多くみられることが予想され、退院支援がこれからさらに重要となってくると思われる。急性疾患の治療がすんでいるが、慢性疾患や悪性腫瘍などにより、治療の継続が必要な場合や退院後も医療管理や医療処置が必要な場合、退院後も安全に療養が継続できるよう、患者・家族の自己決定を支えていくのが退院支援である。実際には退院先の選定や地域医療機関への患者紹介、社会制度によるサービスの提供を主に行っており、医療上の課題、看護上の課題、生活・介護支援上の課題に対して、医師・看護師・ソーシャルワーカー・臨床心理士といった多職種で関わり、それぞれの視点で最適な療養環境を模索していく必要がある。

老年内科に入院した65歳以上の患者に対して高齢者機能評価(CGA)を行うが、それが退院支援にも役立つ。CGAは、日常生活を送るために必要な身体的・精神的・社会的問題点をスクリーニングすることができる。CGAで挙げられた問題点を基に、退院後の生活を想定して、より快適な療養環境を提供できるよう環境調整を行う。

退院へむけての課題は、医療上の課題、看護上の課題、生活・介護支援など多方面にわたるため、医師・看護師・ソーシャルワーカー・臨床心理士といった多職種で、支援していく必要がある。医療的な知識、社会保険制度・福祉の知識や、地域におけるリソースも理解しながら、多職種・多機関で協働していく事が重要である。

*1、図表1-1-1、1-2-2 令和2年度厚労白書
*2 近畿厚労省02.別添 地域包括ケア普及啓発ミニパンフレット【全体】 (mhlw.go.jp)
*3 改訂版 健康長寿診療ハンドブック-実地医家のための老年医学のエッセンス-

(文責:大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学 横山世理奈)

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