診療

診療内容のご紹介(医療従事者向け)

睡眠呼吸障害(SDB)

(※以下は医療関係者様向けの説明となります。患者様には こちらにより分かりやすい説明を記載していますので、是非ご覧ください。)

1.睡眠呼吸障害とは

一般に睡眠時無呼吸症候群(SAS)というと睡眠中の上気道の狭窄・閉塞を原因とする閉塞性SAS(OSA)を指す場合が多いですが、最近は中枢性SAS1や睡眠時低換気症候群2といった類縁疾患を含めて睡眠呼吸障害(SDB)と総称することが増えてきました。

睡眠呼吸障害は酸化ストレスや炎症、交感神経の活性化などを介して高血圧・糖尿病・心血管病変・突然死などと相関することから、診断・治療すべき疾患として注目されています。難治性高血圧の80%の方に睡眠呼吸障害を合併しているという報告もあります。また、60歳以上の高齢者の約30%が睡眠障害を訴えており、生活の質を考えるうえで睡眠呼吸障害は重要な疾患です。また、働き盛りの方においても交通事故や労働災害などの観点から注意が必要です。

睡眠呼吸障害に伴う典型的な臨床症状としてはいびきや無呼吸、昼間の過剰な眠気、倦怠感、頻尿、頭痛等が挙げられますが、症状が乏しい、あるいは症状が全く無い場合も少なからずあることに注意が必要です。

睡眠呼吸障害のリスク因子としては男性、肥満、喫煙、飲酒、睡眠導入剤の使用などがあります。また、頚部の脂肪沈着、鼻中隔弯曲や扁桃腫大といった顔面から頚部にかけての構造の特徴によっても睡眠呼吸障害のリスクが高くなります。

なお、若年者ではこのようなリスク因子が背景にあり、また前述の様な症状を伴う場合が多いのですが、高齢者においてはリスク因子のいずれにも当てはまらない、そして症状を伴わない(一見「睡眠呼吸障害の患者さんらしくない」)方の割合が増えることが分かっています。実際に、加齢そのものが睡眠呼吸障害の独立した危険因子であるという報告もあります。

注釈)

  1. 中枢性SAS: 延髄にある呼吸中枢の異常により睡眠時に無呼吸が起こる病態です。心不全等に合併することが多い事が知られています。
  2. 睡眠時低換気症候群: 睡眠中に呼吸数が少なくなることで低酸素血症に陥り、高二酸化炭素血症を引き起こす病態です。肺血管の攣縮を介して右心不全を惹起する場合もあります。

2.睡眠呼吸障害(SDB)に関連し当科で行っている検査

○簡易睡眠モニター

呼吸センサー、SpO2モニターを装着し、一晩自宅で検査を行っていただきます。
入院の必要がなく自宅で簡単に行う事ができる反面、精度には限界があります。

○睡眠ポリグラフ検査(PSG)

簡易睡眠モニターでの項目に加えて脳波、心電図、眼球運動、筋電図、胸腹部の運動等も測定を行い睡眠呼吸障害の詳細な評価を行います。
入院が必要になりますが、正確な診断のためには必須の検査です。

*自由行動下24時間血圧測定(ABPM)

睡眠呼吸障害の患者さんは高血圧を合併していることが多く、また睡眠中の反復する低酸素刺激により交感神経の活性化を介して早朝高血圧が増えることも分かっています。 このような日内の血圧変動も含めて評価を行います。

*ホルター心電図

睡眠呼吸障害では心房細動をはじめとする不整脈の合併が多いことも分かっており、自覚症状等から疑われた場合には24時間持続心電図検査(ホルター心電図)を行うことがあります。

*採血・採尿検査
*心エコー・頸動脈エコー・腎エコー・眼底検査・ABI/PWV検査

動脈硬化の進展に伴う種々の臓器合併症の評価のために、これらの検査を行う場合があります。

*印の検査は原因精査や合併症精査のために必要な方に施行します。

3.睡眠呼吸障害の治療

睡眠呼吸障害の治療は生活習慣指導と介入諜報とに大別されます。

生活習慣の改善としては、特に肥満のある方の場合には減量が最も効果的であることが分かっています。他には禁煙、節酒などの指導を行います。
介入療法では、適応のある方に対しては持続陽圧呼吸(CPAP)という治療が非常に効果的な場合があります。CPAPとは機械を用いて鼻腔から一定の圧を加えることによって上気道の閉塞を防止する治療のことであり、無呼吸の回数を減らし自覚症状を改善する効果があります。機械は小さく、簡単に持ち運び可能で、継続治療において健康保険も適応されます。なお、CPAPを用いて治療をされている患者さんは1-3か月毎に通院していただく必要があります。当科の睡眠時無呼吸外来では患者さんに持参いただいたSDカードのデータを元にCPAPの使用状況を確認し、より快適にかつ効果的にCPAPを使用することができるように、必要に応じて設定の調整や指導を行います。

4.最後に

当科では高血圧や糖尿病などの生活習慣病や高齢者を中心に診療しているということもあり、疾患の進展防止の目的で睡眠呼吸障害の診断・加療に力を入れています。

自覚症状やご家族のお話等から睡眠呼吸障害が疑われる患者さんがおられましたら、当科睡眠時無呼吸外来までご紹介下さい。

睡眠呼吸障害は診断後に適切な治療を継続することが重要ですので、ご紹介施設との緊密な連携を心がけて参ります。

(文責:大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学 本行一博)

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