生化学・分子生物学

分子病態生化学

臓器・組織の形成・維持と破綻におけるシグナルネットワーク制御の分子基盤の確立
  • 上皮組織形態形成機構と組織幹細胞性状解析
  • シグナルネットワーク異常による発がん機構の解明
  • 新規がん関連タンパク質を標的とした医薬品開発
生化学・分子生物学講座 分子病態生化学
ヒトを構成する細胞の内外で情報のネットワークが適切に働くことにより、生物としての恒常性が保たれます。私たちは、このネットワークによる細胞や組織、臓器の形態と機能の制御の仕組みの解明に取り組んでいます。また、その異常に基づく疾患の原因解明と新規の治療法の開発を目指しています。

分子レベルから細胞、組織、臓器、個体レベルに至るまでの形態形成と機能獲得の生理とその異常による病態病理を統合的に理解する研究

生体内の全ての細胞の間には、多彩なシグナルのネットワークがはりめぐらされており、個体としてのホメオスターシス(恒常性)が保たれています。私たちの研究室では、タンパク質や脂質、糖鎖の分子間の相互作用が細胞内外の情報の変換を制御するという視点に立って、シグナルネットワークによる細胞の増殖や分化、運動、極性等の制御機構を明らかにしています。さらに、その研究成果を基盤として、動物の発生や臓器の形成に必須であるWnt(ウイント)シグナル経路を中心に、TGFβやEGF、HGF、FGF等のシグナル経路等がどのように協調して細胞機能を制御し、上皮組織や器官の形態形成と機能獲得に関与するのかを解明しようとしています。また、未知の組織特異的幹細胞を単離してマーカーを単離することも試みています。そのために、独自に確立した器官培養法やノックアウトマウスを用いた多彩な研究手法を駆使して、分子レベルから個体レベルに至る多角的な解析を展開しています。

図1 幹細胞と組織形態形成を制御する新規のシグナルネットワークの同定

一方、上皮組織の破綻が、がんや炎症、代謝異常等の種々の疾患の病態とどのように関わるかを明らかにする研究にも取り組んでいます。例えば、私たちがこれまでに上皮形態形成を制御することを見出した複数の新規分子が、がんの病態と関連することが明らかになってきました。それらの分子の発がんや転移における役割を明らかにすると同時に、その阻害薬(抗体医薬品や核酸医薬品)の開発を通じて次世代の医療に貢献することを目指しています。

図2 形態形成シグナル異常による発がんの分子機構の解明と新規抗がん剤の開発

生命現象の基盤となるメカニズムを理解するための研究を行いながら、より広い視野で物事を考え、常に疾患との関連を念頭に置く研究を展開します。